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希望を捨てるな

【アイルランド留学203日目】

このところ中国人のルームメイトとよく話をするので、彼の考え方や世界の認識の仕方に対して色々思うところがあります。

自由のない中国での生活に嫌気がさして、国を出てオーストラリアに飛び出し、その後、ここアイルランドに飛び出してきて、将来はゲームデザイナーを目指しているとのことです。

自分の中の曲げられない信条やこだわりみたいなのが強く、家族や友達との衝突を繰り返して、最終的にほぼ全ての関係を失ってしまったと言っています。「君は次の就職で悩んでるみたいだけど、帰る国があるだけいいじゃないか」という彼の言葉に対して、私は何も言えませんでした。

まず思ったのは、今の中国の状況についてです。

彼一人の意見なので、あくまで主観的な認識にはなると思いますが、近年の中国は、経済は急成長してきたものの、それ以上に、どんどん息苦しさが増しているとのことです。

基本的に、facebookやTwitter、GoogleなどのWebサービスは使えず、ネットは監視され、政府に反する思想を呟こうものなら摘発されて罰を受けるとのことです。どのくらい深刻なものなのかは分かりませんが、表現の自由が制限されているのは間違いだろうと思います。

また、中国では、家族の繋がりも強く、それも大きなストレスになりうるようです。それこそ、彼は一人っ子政策施行中に生まれたため、両親からの期待とプレッシャーが大きく、自分で自分の人生を選択できるイメージが全くなかったと言っています。最終的に、ほとんど親子の縁を切るような形で国を飛び出したようです。

政治についても、一党独裁で、日本のように国民主権はありません。「自由なんてどこにもない」と彼が口にする言葉は、日本人が言うそれとは比べものにならない重さがあります。

そんな環境の中で彼は、他人に失望したり、自分の思いを傷つけられるような経験を繰り返し、今に至ると言います。

「世界の誰も自分を受け入れてはくれない。周りに対する不満と、現実に対する絶望だけが募っていく。ゲームデザイナーという未来への漠然とした希望だけがなんとか生きる支えになっている。ただ、理想に向かうための努力ができていないことがまた自分を苦しめる」

彼の言葉に対して、何かを述べるには、私はあまりにも経験が浅く、知識もなく、世界に対する認識が足りませんでした。テーマを変えて、彼の好きなゲームの話などと聞いて、少し気分をあげてもらうのが限界でした。

何か一番の問題なんだろう、どうやったらもっと良い方向に気持ちを傾けることができるんだろうということを考えても、なかなかいいアイディアは思いつきません。

単に優しい言葉をかけたり、話を聞いてあげるだけでは不十分ではないかと思います。どれだけいい言葉をかけたって、やはり、最終的には、自分自身の力で、立ち上がって、前に向かって行かないと結局何も変わらないと思います。

そのために必要なものは、やはり「希望」ではないかと思います。

「希望」とは、言い換えると、「頑張ればなんとかなりそうじゃん!」という手応えと見通しのことだと思います。

その見通しがあるだけで、人は苦しい状況でも諦めずに前に進むことができます。私でもできそうだ、辿り着けそうだ、と思えた時、初めて具体的な一歩が踏み出せるのではないでしょうか。その意味では、希望の対義語は「無力感」です。

そして、前に踏み出そうとする力こそが、自分では解決不能な障害や過去のしがらみ、傷の痛みを軽減してくれるのではないかと思います。中国の彼の例でいっても、国の状況や家族の関係性なんかと全て改善するのはほぼ不可能かもしれませんが、強い目標、希望があれば、それらを乗り越えて、未来に向かっていけるのではないでしょうか。

私も、今後どれだけしんどい状況に直面しても、希望だけは捨てずに生きていきたいです。

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