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同人誌即売会に4回本気で挑んでようやく収支がトントンになった

コミティア、デザフェス、コミケ。こういう「自分でなにか作って売るイベント」で黒字を出すのって、むずかしすぎる。

自分で絵を描いて本を作ったりしてみても「これは何部刷ればいいのか」「いったい何円で売ればいいのか」ってほんとうにわからない。

とはいえ作り手側は「本を作って、イベントで売る」ということの準備の段階でかなりの出費をしているから、1冊も売れなかったり大量の在庫を残してしまうと大赤字になる。

いや、それが悪いってわけでもない。身銭を切ってでも、その瞬間イラストレーターごっこだったり、本屋さんごっこができるのはすごく楽しいから。

でもやっぱり、本来楽しいものである「イベント参加」や「作品制作」が金銭面で生活を圧迫するようになると、きっと長くは続けられなくなってしまう。

だから私はイベントに参加するときいつも「黒字を出すぞ!」という気持ちは持っている。

もちろん最初は、べつにXのフォロワーが多いわけでも、なにかの実績があるわけでもないし全然うまくいかなかった。でも、試行錯誤しながらイベントに挑んで、やっと収支がトントンになりつつある。

①初めてのコミティア:7000円の赤字

初めての設営

2023年の11月。オリジナル作品のみの同人誌即売会である「コミティア」にはじめて参加した。

これはもう「赤字でいい」と思って臨んだ。そんなことより初めてイベントで自分の作ったイラスト本を売るわけで「1冊でも手に取ってもらえるのか」と怖くて怖くて、仕方ない。

とりあえず勘で、1部500円で20冊を販売することにした。

原価は忘れたけど、完売してもほぼ利益はない。はじめて作った本だったから、友人とかにタダで配るためにもともとは30部注文していたというのもあるけど。

ポスターは準備しなかった。案外お金がかかるし、ポスターまで用意して1冊も売れなかったら悲しいから。「まあポスターも用意してなかったからね」と言い訳をする余地を自分に残してあげた。

ポストカードや名刺はいちおう用意してみたのと、設営のための備品は近所のCAN☆DOで500円ぶんくらい買った。あとコミティアへの参加費は6900円。

ふつうに大赤字だったけど、本気で「参加してよかったな」とは思えた。本を作るという作業自体もかなり楽しいし、自分の絵が「作品」なっていく過程は感慨深い。

なにより「この絵を好きだ」と感じてお金を払ってくれる人間が少しでもいることを、身を持って感じられることが心底しあわせだった。

開場から4時間ほどで用意していた20部が売り切れて、ホクホクした気持ちで帰宅した。

②二度目のコミティア:9000円の赤字

必死の思いで新刊2冊


2024年2月。前回のコミティアが終わってから急ピッチで新刊を2冊も作った。前と同じようなイラスト本と、ずっと作ってみたかったグルメエッセイ本。

結果、大量に刷って大量に売れ残った。

前回のイベントで「20冊は売れる」という経験を得たのと、Xのフォロワーが少しだけ増えて(500人→600人くらい)反応をもらえる数も増えてきた気がして、調子に乗っていた。

あと「事後通販もやろう」とか思っていたから、売れ残りが出たら通販に出せばいいという甘い目論見もあった。まあ通販も片手で数えられるくらいしか売れなかったわけですけど。

ポスターも初めて作ったし、ポスタースタンドも買ったから出費もまあまあ。

イラスト本1000円という強気の価格設定をしていたおかげで大赤字はまぬがれたけど「ミスったな」と強く感じた。

いや、金銭面はどうでもいい。とにかく閉会後に売れ残りが詰まったスーツケースを引きずって帰るのがとにかくつらすぎる。あんなに重い荷物、あとにも先にもないと思う。

③デザフェスへの挑戦:10000円の黒字

ポップみたいなものも作った

2024年5月。「デザインフェスタ」というイベントにも参加してみることに。コミティアとはまた雰囲気が違うし、規模も大きいみたいだしいいんじゃないか、って。

社会人になってから出す初めてのイベントで、ヒイヒイ言いながら本を完成させた。

デザフェスは大きなイベントであるがゆえに参加費がコミティアの倍以上かかる。「こりゃ黒字出すのはむずかしいぞ」と頭を悩ませながら、発注部数と値段を考えた。

それでも、ここで初めて黒字が出た。というか、前回のコミティアで売れ残った既刊がここでも多少売れてくれたのが大きい。

新刊も、友人に配るぶん以外はぜんぶ捌けた。

当日ブースの前を通りかかる人にずっと「立ち読みだけでもどうぞ」と声をかけ続けたのもよかったのかもしれない。

こういうイベントって意外と気軽に立ち読みしづらいからね。これからもガッツでは負けないぜ。

④コミケで初めての二次創作:6000円の黒字


初音ミクを全面に押し出した

2024年8月。同人誌即売会の代表格であるコミケに参加してみた。夏コミだ。そしてせっかくコミケに出すなら二次創作に挑戦してみよう、と決意してVOCALOIDのジャンルでイラスト本を作ることに。

中学の頃はよく初音ミクをはじめとしてボカロキャラのイラストを描いていたから、それにあやかって本のテーマは「10年前の絵をリメイクする」というものにした。

しかし最近になってから二次創作のイラストを描いたことはほとんどない。もちろん本を作るのも初めてで、Xのフォロワーさんもだいたい私のオリジナル絵を見てフォローしてくれた人たちだから、また「1冊も売れないんじゃないか」という恐怖があった。

結局発注した数も25部だけ。設定した販売価格は800円。「ギリギリ売り切れるのでは」と思える数だけ、「高すぎる」と思われない値段で用意した。

結果的にきちんと売り切れて、ほんとうによかった。帰りのスーツケースが軽いととっても気分がいい。売れ残っても、もう二次創作本って売れる場所あんまりないからね。

トータルでの売上の数字は大きくなかったけど、出費もできるだけコンパクトに抑えたことによって、少しだけ黒字が出た。2月のコミティアで多く刷りすぎた既刊はまだ余っていたから、それも持っていったら少しだけ売上に貢献してくれた。

「儲かる」「儲からない」とかじゃない

こうして4回のイベントを経て、やっと少しずつ黒字が出せるようになり、やっとトータルでの収支がトントンになった。

そう考えると同人誌即売会ってのは、何十時間もかけて準備して、自分で何万円も払って、それとちょうど同じくらいだけの売上を回収して帰るという変な遊びだ。

やっと少しずつバランス感がわかってきたような気がするけど、残念ながらこれからも「儲かる」ということは起こらないと思う。ちょっと売上が増えるなら、そのぶんちょっといい紙とか使って印刷してみたりしたいし。

それでも、これからもイベントに参加し続けたいとは思う。売上はあったら嬉しいけど、もはや関係ないということがこれまでの4回のイベントを通してよくわかった。

「自分が作ったものを、直接人の手に届けられる」という機会は、こうしたイベントに参加しないと発生しない。そうして喜んでもらえたり、感想をもらえたりしたときの幸福感は大金を積んでも手に入らない。

だから、興味はあるけど売れるかわからないし、、と参加を迷ってる人がいたらぜひ参加を後押ししたい。自分の作品を買ってくれるモノ好きな人はちゃんといるし、作品を形にするのは楽しいよ。別に儲かるわけじゃないけどね。

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