運動の鍵はここ!【骨格系】でわかる体の仕組みと動きのしくみ
骨格系:私たちの体を支える重要な役割
骨格系は、約206個の骨、関節、靭帯、軟骨から構成され、身体の支柱、運動、保護、ミネラル貯蔵、造血などの重要な役割を担っています。
作用
身体の支持: 内臓を支え、筋肉の付着点となることで、姿勢維持に貢献
臓器の保護: 頭蓋骨は脳を、脊柱は脊髄を、胸郭は肺や心臓などを保護
運動: 骨格筋の収縮によって、体を動かしたり、姿勢を変えたりする
ミネラル貯蔵: カルシウムやリンなどのミネラルを貯蔵し、必要に応じて放出
造血: 骨髄は赤血球、白血球、血小板を産生
骨の成分
私たちの骨は、約20~24%の水分と、残りの76~80%を占める有機成分と無機成分の2つの要素から構成されています。
有機成分(約30%)
コラーゲン(90~96%):骨に強度と弾力性を与え、引張力に耐える
その他のタンパク質、エラスチン:骨の柔軟性や伸縮性を高める
無機成分(約70%)
リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)(約85%):骨に硬度を与え、圧縮力に耐える
炭酸カルシウム(約10%):骨の硬度をさらに高める
リン酸マグネシウム(約1.5%):骨の強度と柔軟性を高める
骨の構造
骨は、骨膜、緻密質、海綿質という3つの骨質から構成されています。長骨では、さらに骨髄と軟骨質も加わります。
骨の再構築
骨は、常に新しい骨が生成され、古い骨が分解・吸収される「骨の再構築」という過程を繰り返しています。このサイクルにより、骨は強度と機能を維持し、成長することができます。
骨形成
骨芽細胞が新しい骨基質を分泌し、骨を形成
運動による衝撃や圧縮力が骨形成を促進
男性は思春期、女性は15~16歳頃に骨量がピークに達する
骨吸収
破骨細胞が古い骨基質を分解・吸収
加齢や運動不足により骨吸収が促進
女性は閉経後に骨量が急激に減少
カルシウム・パラドックス
カルシウム摂取不足は骨粗鬆症の原因
過剰なカルシウム摂取は動脈硬化などのリスクを高める
骨の障害
骨の障害は大きく分けて「骨折」と「骨粗鬆症」の2つがあります。
骨折
骨が壊れること
原因:外力、骨粗鬆症など
症状:痛み、腫れ、変形
治療:固定、手術など
種類:完全骨折、開放骨折、皮下骨折、粉砕骨折、剥離骨折、不全骨折など
骨粗鬆症
骨密度が低下し、骨折しやすくなる
原因:加齢、女性ホルモンの低下、運動不足、食生活など
症状:骨折、腰痛、背中の痛み
治療:薬物療法、運動療法、食事療法など
危険因子:年齢、性、低骨密度、骨折既往、喫煙、飲酒、ステロイド使用、骨折家族歴、運動不足、転倒に関連する因子、体重過少、カルシウム摂取過少、ビタミンK摂取過少、ビタミンD摂取過少
骨の分類
骨は形状、位置、発生によって分類
形状:長骨、短骨、平骨、不規則骨
位置:中軸骨格、付属肢骨格
発生:膜性骨、軟骨性骨
骨の数は
従来:206本(グレイの解剖学)
近年:58種類の206骨(結合により変動)
正確な数は不明(機械スキャンで計測が必要)
骨の結合
胎生期から始まり、出生後も続く
思春期までに多くが結合
一部(尾骨など)は高齢でも結合
結合時期は個人差、生活習慣、遺伝、運動、コンディションなどによって異なる
骨は部位によって分類
頭部:脳頭蓋、顔面頭蓋
小骨:耳小骨
舌骨
上肢:上肢帯、上腕、前腕、手
下肢:下肢帯、大腿、下腿、足
胸部:胸骨、肋骨
脊椎:頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨
骨格系は、中軸骨格と付属肢骨格に分類
中軸骨格:体の軸となる骨格
頭蓋骨:脳や顔面を保護
胸郭:肺や心臓を保護
脊柱:体を支え、神経の通り道
付属肢骨格:四肢の骨格
上肢:腕、肩
下肢:足、股
骨は発生方法によって2種類に分類
軟骨性骨化・置換骨:軟骨が骨に置き換わる
体幹のほとんどの骨、頭蓋底、四肢骨など
膜性骨化・付加骨:結合組織に骨芽細胞が現れて骨になる
鎖骨、前頭骨、頭頂骨、側頭骨の一部、上顎骨、下顎骨、肩甲骨中心部など
骨は形状によって5種類に分類
長骨:管状で、身体を支え、動かす
例:上腕骨、大腿骨
短骨:立方状で、手足の関節を安定させる
例:手根骨、足根骨
扁平骨:板状で、内臓を保護する
例:肋骨、胸骨
不規則骨:複雑な形状で、様々な機能を持つ
例:椎骨、頭蓋骨
種子骨:腱を保護する小さな骨
例:膝蓋骨
骨指標とは
骨表面の形状や部位を示す指標
筋肉や腱の付着位置を理解するのに役立つ
解剖学の基礎となる重要な知識
骨指標の種類
関節は骨を繋ぎ、体の動きを可能にする
全身で約350個存在
骨の端は凸面(関節頭)と凹面(関節窩)で構成
関節面は関節軟骨で覆われ、滑らかに動く
関節の構造理解は、動きの本質や正しい指導に繋がる
補足
関節の種類:球関節、蝶番関節、軸関節、鞍関節など
関節の機能:運動、衝撃吸収、荷重伝達など
関節の病気:変形性関節症、関節炎、リウマチなど
関節は、骨の数と可動性で分類できます。
1. 関節を形成する骨の数による分類
単関節:2つの骨で構成 (例:肩関節、股関節)
複関節:3つ以上の骨で構成 (例:膝関節、肘関節)
関節は、可動性と運動軸数、関節面の形状によって分類
1. 可動性による分類
不動性結合:可動性がない (例:頭蓋骨の縫合)
半関節:わずかな可動性 (例:恥骨結合)
可動性結合:自由に動く (例:肩関節、股関節)
2. 運動軸数による分類
一軸性関節:1つの軸で動く (例:肘関節、膝関節)
二軸性関節:2つの軸で動く (例:手首関節、足首関節)
多軸性関節:3つ以上の軸で動く (例:肩関節、股関節)
3. 関節面の形状による分類
球関節:球形と球状窩 (例:肩関節、股関節)
蝶番関節:円柱形と溝 (例:肘関節、膝関節)
車軸関節:突起と穴 (例:頭部回転関節)
鞍関節:鞍形 (例:拇指中手関節)
楕円関節:楕円形 (例:手首関節)
平面関節:平面 (例:肩鎖関節)
肢位
肢位とは、体の各部位の配置や角度を表す言葉です。
解剖学的に動きを考察する際、主に以下の3つの肢位が用いられます。
基本肢位:自然な立位姿勢
解剖学的肢位:解剖学的に基準となる姿勢
良肢位:関節が動かなくなった場合に日常生活に支障が少ない姿勢
動きの面と軸
動きの面と軸を理解することで、効果的な運動や施術をプログラムできます。
基本面:関節が動く方向 (水平面、矢状面、前額面など)
基本軸:関節が回転する軸 (垂直軸、水平軸、前後軸など)
これらの要素を理解することで、関節の機能を最大限に引き出し、個々の体質に合った運動や施術を提供することができます。
動きの基本面は、体の動きを表現する3つの平面です。
矢状面:左右を分ける面 (正中面、前正中線、後正中線を含む)
前額面:前と後ろを分ける面 (中央冠状面を含む)
水平面:上下を分ける面
動きの基本軸は、体の動きを表現する3つの軸です。
前額軸:前額面上の軸 (屈伸運動)
矢状軸:矢状面上の軸 (側屈、外転・内転運動)
垂直軸:垂直な軸 (回旋、内旋・外旋、水平内転・水平外転、回外・回内運動)
基本面と基本軸は、体の動きを表現するために用いられる重要な概念です。
基本面 は、体の動きを3つの平面に分類します。
矢状面: 左右を分ける面 (正中面を含む)
前額面: 前後を分ける面 (中央冠状面を含む)
水平面: 上下を分ける面
基本軸 は、各関節における回転方向を3つの軸に分類します。
前額軸: 前額面上の軸 (屈伸運動)
矢状軸: 矢状面上の軸 (側屈、外転・内転運動)
垂直軸: 垂直な軸 (回旋、内旋・外旋、水平内転・水平外転、回外・回内運動)
基本面と基本軸は、1対1の関係であり、以下の表のように対応しています。
関節運動の種類
可動関節の動きには、基本肢位からの各関節において、それぞれ名称が定められています。
位置と方向
タイ古式マッサージをはじめ、様々な分野で役立つ、身体の位置と方向を表す用語をまとめました。
関節可動域
関節可動域とは、関節が動く範囲を角度で表したものです。
種類:
自動可動域(AROM):自力で動かせる範囲
抵抗可動域(RROM):抵抗を加えて動かせる範囲
他動可動域(PROM):外部からの力で動かせる範囲
大きさ:自動可動域 < 抵抗可動域 < 他動可動域
他動可動域が大きい場合:筋力低下、筋緊張、軟部組織の弛緩などが考えられます。
・測定
関節可動域の測定は、ゴニオメーターと呼ばれる角度計を用いて、基本軸に対してどの程度移動軸が移動したかを測定します。
・評価
関節不安定性は、柔軟性と混合されたり、十分な評価がなされていなかったりといった傾向があります。正しい評価と対処法が重要です。
評価方法
・全身の7つの関節をそれぞれ評価する。
・左右一側ずつ評価するものに関しては、片側のみに陽性ならば0.5点とする
・7点(項目)中3.5点(項目)以上可能(陽性)のものを全身的関節弛緩性ありと判定する。
陽性の基準
・各検査項目で規定されている基準を満たす場合。
解釈
・陽性項目が多い場合、関節不安定性が高いと考えられる。
・個々の関節の評価としても利用できる。
靭帯
靭帯は、骨と骨をつなぎ、関節の動きを支える強靭な組織です。
役割
・関節の安定性:骨同士が離れないように固定し、関節が正しい方向に動くように導く
・可動域制限:関節の動きすぎを防ぎ、適切な範囲での動きを維持する
・衝撃吸収:関節にかかる衝撃を吸収し、骨や軟骨を守る
構造
・主成分:コラーゲン繊維、弾性繊維、靭帯細胞
・種類:関節包靭帯、関節包外靭帯
・血行:少ない
捻挫
捻挫は、関節に無理な力が加わって起こる靭帯の損傷です。
原因
・転倒
・足首をひねる
・ジャンプの着地
症状
・痛み
・腫れ
・内出血
・動かしにくさ
重症度
・I度:軽度な靭帯の伸び
・II度:部分断裂
・III度:完全断裂
筋骨格系外傷の応急処置は、受傷直後の適切な対応が重要です。適切な処置を行うことで、出血や腫れを抑え、治癒を促進することができます。
一般的な応急処置は以下の通りです。
安静(Rest):患部を安静にすることで、損傷部位を保護し、さらなる炎症の拡大を防ぎます。
冷却(Icing):患部を冷やすことで、腫れや痛みを抑えます。ただし、アイシングは長時間の連続は避け、20分程度を目安に行います。
圧迫(Compression):患部を圧迫することで、出血や腫れを抑えます。弾性包帯などで患部を軽く圧迫します。
挙上(Elevation):患部を心臓よりも高い位置に挙上することで、腫れを抑えます。
近年では、RICEに加えて、Protection(保護)、Education(教育)、Avoid anti-inflammatory modalities(抗炎症剤の使用を避ける)、Loading(負荷)、Optimism(楽観視)、Vascularisation(血流増加)、Exercise(運動)のPEACE & LOVEという考え方もあります。
PEACE & LOVEでは、アイシングを避け、怪我をした時に影響する心理学的重要性を強調し、さらにハイパーメディカライゼーション(過剰な薬物療法)でのノセボ効果を配慮した上で、最終的に最新の対処法を適用順に提示することです。
いずれにしても、応急処置はあくまでも応急的な対応であり、適切な診断と治療を受けるために医療機関を受診することが重要です。
栄養
コラーゲンは、肌や関節の健康維持に役立つ栄養素です。食品では、肉類や魚類の皮や軟骨などに多く含まれますが、サプリメントで効率的に摂取することもできます。
グルコサミンは、軟骨の再生や関節の可動性を向上させる効果があります。
コンドロイチンは、軟骨の弾力性を維持し、消炎作用も期待できます。
ヒアルロン酸は、関節の潤滑作用や、軟骨の増強、細胞の結合力向上に役立ちます。
ケイ素は、骨や歯の形成を促進し、肌のハリを保つ効果があります。
これらの栄養素は、バランス良く摂取することで、健康的な体づくりをサポートします。
サプリメントで摂取する場合は、信頼できるメーカーのものを選び、用法用量を守って服用することが大切です。
まとめ
骨格系は、体の支え、運動、保護、造血、カルシウム貯蔵などの重要な役割を担っています。骨、関節、靭帯が協調して働くことで、滑らかな動きと安定性を維持することができます。骨格系の健康を維持するためには、バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠などが重要です。
骨格系は己の体幹。バランスを崩さぬよう、常に意識せよ!
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