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【観た映画】パラダイスの夕暮れ/アキ・カウリスマキ

カウリスマキの『パラダイスの夕暮れ』を観た。

以下、感想メモ

※ネタバレ云々の話じゃない気はしますが、ストーリーの流れの大部分を話してしまっているので、気にする方は見ないでください。

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内容としては、貧しい労働者の生活と恋愛を描いたラブストーリーだ。
カウリスマキの労働三部作(『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』)の1作目らしい。
展開は『枯れ葉』に似ていた。
ただ、主人公の男女が枯れ葉の二人よりも癖が強い。

スーパーのレジ係のイロナ
ゴミ収集車の運転手のニカンデル

ニカンデルは、初デートでビンゴをひたすらやっている謎の施設に行って、ドン引きされて帰られる。
(日本でいうと、初デートでパチンコ屋に連れてかれた感じだろうか?)

ちなみに、調べたら、アメリカやヨーロッパでは、
ビンゴは宴会用の景品付きゲームではなく、
娯楽もしくはギャンブルとして日常的に楽しまれており、
「ビンゴホール」と呼ばれるビンゴ専門の施設もあるらしい。

他にも、東進ハイスクールのような感じで、
ブースでテープを聞くタイプの英会話スクールっぽいものも登場していて、それも良かった。
ニカンデルが通っていた。

あと、仕事中にレコードを拾ったニカンデルがなぜかそれを機にAV機器をそろえるのにハマるのだが、それが全部SONY製というのに時代を感じた。

主要な登場人物として、ニカンデルとイロナの他に、ニカンデルの同僚の大柄の男がいる。
元々は、ニカンデルが飲食店の店員を殴って捕まった際に留置所で出会った男。無職だと言うので、ちょうど同僚が死んで空きが出ていたゴミ収集の仕事にニカンデルが誘った。
はじめは急に家に来たり、嫌なやつかと思ったら、
イロナとのデートのためにお金と着替えを貸してくれたり、
仕事を抜け出すのを了承してくれたりと、
結果的にいい奴だった。

他に、前半出てきたもう一人のニカンデルの同僚もいた。
彼は自分の事業をしようと独立の準備していたところ、
仕事中に急に脳卒中みたいな感じで倒れて死ぬ。
ニカンデルは、その男に独立したら一緒にうちの会社で働こうと誘われていた。
労働者の一生の儚さもさらっと描く。
ドラマチックでなく、あっさり死んでいく。

イロナ側の話も少し書いておこう。
イロナは1年に3回も仕事をクビになったらしい。
彼女が悪いのか、時代が悪いのか。
彼女が業務態度が悪いという描写は特になかったように思う。

そもそも、フィンランドって退職後4年間は退職前の給料の9割を
失業手当としてもらえるんじゃなかったのか。
例えば、非正規労働者だから受給の基準を満たしていない、とかなのか?

スーパーをクビになったイロナは
ガソリンスタンドでニカンデルを待ち伏せして
どこかへ行こうとデートに誘う。
ニカンデルは、同僚から金と服を借りて、
ホテルを取り、レストランで食事をした。
ホテルはなぜか2室。
二人は別々の部屋で眠った。

レストランでの会話の中の
ニカンデルのセリフが好きだったので引用しておく

俺に理由なんてない
あるのは名前とゴミ車の制服と
虫歯と病んだ肝臓 慢性胃炎
いちいち理屈をこねる
贅沢など俺にはない

『パラダイスの夕暮れ』より

イロナは、スーパーをクビになった時に腹いせとして近くにあった手提げ金庫を盗んでいた。
結局、ニカンデルに諭されて、ニカンデルがスーパーに忍び込み返却する。
警察に捕まるが取り調べ中にニカンデルが返却した金庫が見つかって釈放される。

釈放後、ホテルに泊まろうとするが満室で泊まれず
ニカンデルの部屋に転がり込む。

彼女は洋服屋の店員として働きはじめる。
ニカンデルともいい感じになるが、
店に来たニカンデルを見た洋服屋の店長に2度と店に入れるなと言われてしまい、その後、彼女はニカンデルを避けるような感じになる。
世間体を気にしたのかもしれない。
ただ、彼女の本心はニカンデルに惹かれているようだった。

話は飛んで、ラスト。
ニカンデルとイロナが二人とも仕事をやめて、
船でタリン(隣国エストニアの首都)へ旅立つ
二人ならどこでも生きていけるさ、みたいな楽観的なことを
ニカンデルが言うので
物語はハッピーエンドのようなかたちで終わる。

表情の変化が少なく、会話も淡々としている。
シビアな現実も描いているが、
なぜか笑ってしまうようなコミカルさがある、
カウリスマキ独特の世界感。

この作品は
うまく噛み砕けていない部分もある気がするので
またそのうち観たいと思った。

ちなみに、ネタバレをしたのは、話の筋が肝の作品ではないと思ったから。
落語のように、筋がわかっていて見る方が、味が出る気もする。
(とはいえ、ネタバレの警告をしたので、それを承知した人しか見ないとは思うが)

結構、ストーリーに触れてしまったが
ストーリー上の大事な部分が抜けていたりする歯抜けの感想だ。
読んだ上で観たとしても
充分楽しめると思う。

こういった映画を観てよく思うのは、
観ている人のほとんどがブルジョワなんじゃないの?
ということだ。

ブルジョワじゃないにしても、
ある程度裕福な人たちがカウリスマキを好きな気がする。

映画で描かれているような当の貧しい労働者は
こういった作品をほとんど観ていないのではないか。

貧乏で映画に金を払う人は少ない。
TSUTAYAさんとかで借りて観れているだろうか。
大半の人は、マーベル映画とかハリウッド大作を借りてしまう気がする。

そういう意味では
アマプラで観られるようになっていて良いと思うが、
同様にマーベルとかそっちを観ちゃうんだろうな。

でも、ふらっと出会ってしまってほしい。
間違えて
迷い込む

映画にはそういうものであってほしい。



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