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【回文〆日記】 #28 回文修業の1年間

年始に目標を立てることが
苦手だ。

長い期間
必ず続けると決めた途端
やる気がしぼみ
気がめいるタイプなのだ。

そんなわけで
よっぽどの必要性に
駆られない限り
長期的な目標設定は
しないようにしてきた。

しかし
2019年の正月に
ふと

「1年間、1日1回文を作る」
という
目標が浮かんだ。

なにか目的があったわけでも
誰かと約束したわけでもなく

ほんとうに
なんとなくだ。

続かなかったときに
罪悪感を抱かないで
済むよう

いつやめてもいい
という前提で
やってみることにした。

飽きっぽい
自分のことだから
続かなくて当然と
思ったが

意外と
嫌になることはなく
季節がひとめぐりする間
毎日
回文を作り続けた。

あの年は
回文の軸になる言葉を探して
いつも
きょろきょろしていた。

電柱の広告
街の看板
職場の掲示物
視聴するメディア
スマホに届くメッセージ
身近な人の発言…


その期間
言葉というものの
無尽蔵さを
あらためて
思い知った。

もちろん
有限だと
わかってはいたが

世界に存在する
言葉群は

情報処理能力も
記憶力も
いまひとつの私には

とてつもない宇宙に
感じられた。


ついにやってきた大晦日
スプレッドシートのセルに
365個目の回文を入力し

とうとう
目標は達成された。



バスの中で
回文づくりに没入し
うっかり乗り過ごしたことなど
思い起こしつつ

目標達成のよろこびを
静かにかみしめた
年末だった。



そのころ作った回文を

読み返すと

なにがなんでも1日1回文!
という
へんな意気込みが伝わってきて

あの熱量はいったい?

すこし
他人ごとのように思う。


好きなことは
力まなくても
ひとりでに継続していく

ということが

中年になってからでも
わかって
よかった。



継続ぞ!行け!

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