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京都のギャルとマレーシアのオランウータン、マイちゃん#74

マレーシアに行った。

当時、卒業旅行をしようと計画した私たちギャルズは、H&Sの「どこにいくかわからないけどポッキリツアー!」みたいなのに申し込んだ。

安かったのだ。私の友人のギャルも、海外ならどこでもよかったらしい。

セブ島、インドネシアバリ、タイのプーケット……名だたる観光地が候補にある中、私たちの行き先が決まった。

マレーシアだ。

「どこそれー?」

というギャルの友人と共に、前日まできっちり入れたバイトで疲れ切った私たちはガラガラの飛行機の中、離陸後は3列シートに横になってガチ寝をした。

時々起きて、出てきたサーティワンアイスクリームを食べながらワインをのんでいたら、クアラルンプールについた。

むし熱いところ、物価はそこまで高くないところ、屋台飯が激安なところが気に入った。

海外のちょっといいブランドのヒールを爆買いして、帰りは足がもげるかと思うほど無限に歩いて帰ったのがいい思い出。

ツレが「すっぴんやのに、ナンパされた!!!」と満面の笑みで言っていた。

特に目的もなかったし、買い物もたくさんして結構満足していたが、マレーシアらしいことを全くしていなかったので、とりあえず有名なオランウータンのいる島に行ってオランウータンを見ることにした。

船にのって島に行くちょっとのクルージングも、少しセレブ気分が味わえてよかった。

島には、見たことのないオランウータンがいた。

マイちゃんだ。マイちゃんは、オスだった。モテまくるオスのボスは、顔が横に異様に腫れたように広がっている。

なんやあいつ。

「マイちゃん、モテるねんな……」

ツレがつぶやきながら、赤ちゃんオランウータンの写真を撮っていた。

今日も、すっぴんだった。

彼女は、出かける時にすっぴんになることはほぼ、ない。

マレーシアにきたとき、彼女は滞在の半分ほどをすっぴんで過ごしたと思う。

恵まれた友人関係、気の合うバイト仲間、気の知れた部活の先輩後輩、いいよってくる無数のとこたち。ギャルの彼女の周りにはいつも人がいた。

人気者だった。人気者の彼女はいつもバチバチのメイクで、楽しそうに笑っている。

でも、マレーシアにいた彼女は肌つやもよく、解放感で目が凛々としていた。

周りに人がいる幸せ。周りに知ってる人がいない幸せ。

両方、ある。

ちゃんとする彼女だからこそ、周りに人がいて、好かれて、居場所がある。

でも、時々、それがしんどくなることもある。

マイちゃんも、めっちゃモテてるとおもうけど、めっちゃハーレムで大変だろうし、顔はパンパンで、世代交代したら負け犬となって寂しい人生が舞っている。

私は、彼女のすっぴんを忘れない。マイちゃんの顔の腫れを忘れない。

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