トンレ・サップ湖とワニ#73
アンコールワットが見たい!
そう力説する友人の熱量にのり、お盆休みにカンボジアに飛び立った。
アンコールワットは写真ではとても壮大で神秘的だったが、あの光景を目にするには、早朝5時くらいから現地に向かわねばならない。
幸い中心街から遠くはないが、早朝テゥクテゥクをチャーターしたり、早起きしたりと正直、面倒くさかったし、眠かった。
アンコールワットの前には小さな水たまりがあり、そこを踏まえて移すと、水面のリフレクションの効果でとても豪華な映え写真が撮れる。
カンボジアのPRで散々見てきたきれいな写真を、絶対にプロに負けるクオリティで早起きをして撮影に来る。これが、観光。
そのシュールさをかみしめた。
しかし、早起きは悪いことばかりではない。早朝の幻想的な写真に入りきらない背景や、観光客の熱、実際はしょぼい水たまりの絵ずらなど、現地に行かなければわからなかったことも多々ある。
そして、早起きをするとたくさん時間が使える。私たちは、トンレサップコに行ってみることにした。
ここでは、湖のでの地元住民の水上生活を垣間見ることが出来る。
水上生活が垣間見られるツアーにワニ園の見学もセットで組むことにした。
船には船頭と、友人含めた3人で乗り込み、地元民の水上生活をこれまたパー子ばりにぱしゃぱしゃと撮って観光気分を満喫した。
自分たちの日常生活が「売り物」になっている生活とはどういうものなんだろう。
私たちは貧富の差を感じながらそれをエンタメ化するグロさも含め「観光」の一部として楽しんでいた。
そこの水上生活の中では、学校も湖の上にあった。
ボートが進むと「降りろ」と英語で声をかけられ、その学校で降りるよう促される。
「あ、これは、お布施のおかわりだな」
と思った。「かわいそう産業」の延長。学校のために寄付しろという、さらにお金がかかるパターン。
私は「NO」と言って下りなかった。どこにいくかもわからないお金を、その場の雰囲気で払うほどには私はお金もちじゃないし、場数も踏んでいた。
完全に、相手の陣地で、数人が降りろと、私たちを「かわいそうでしょお金を頂戴」の舞台に呼び込もうとしている。
私は頑なに断った。思い通りにならない展開に、船頭や、集まってきた男たちのピリピリとした憤りを感じる。狂気があふれ出ていた。
最後は向こうが折れて、無愛想に、観光ルートを回ってサンセットをみてツアーは終わった。
サンセットは、美しく、心にまだ少し残るピリピリとした空気感の中、友人と映え写真を撮っていた。
岸に戻った。「ここが、アジアでよかった」と思いながら私は船を降りる。アメリカやメキシコだったら、死んでたかもしれない(向こうではこんな危険なことはできない)。
どろのうごめく田舎道を歩きながらワニ園に移動した。うごめくワニが狭いところに所狭しとつめこまれている。
ワニ園ではディナーも楽しめたので、私たちはワニを食べて帰った。
肉の味は、鶏肉ににていた。
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