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サメシマの楽曲解説#7 『パブロハニー』

大学の帰り道、車を走らせていると夕陽で車道が真っ赤に染まって、
最初のフレーズと詩が浮かびました。

急いで車を駐車場に停め(バッティングセンターかリサイクルショップでした)、ボイスメモに録音。

そのときはコードもついてませんが、
言葉にできない重みというか存在感がありました。
NOMAD POP結成前の話です。

(↑音声版はコチラ)

コンセプト

『何者にもなれる時代で、何者にもなれない自分』についての歌です。

タイトルはレディオヘッドの1stアルバム “Pablo Honey” から。
(以下、僕らの楽曲については『パブロハニー』、レディオヘッドのアルバムは “Pablo Honey” とします)

“Pablo Honey” に収録されている ”Creep” は大ヒット曲で、
彼らを一躍スターダムに押し上げました。

しかし “Pablo Honey” が手放しで絶賛できるアルバムかというと賛否両論で、
その後リリースされた作品群の美しさや実験性と比べると
「違うバンド?」と感じてしまったりするのです。

誤解を恐れずにいえば “Pablo Honey” は荒削りな印象があります。

ただ僕個人はこのアルバム、わりと好きで、
以降のレディへの作品と比べると触れる機会はかなり少ないんですが
無性に聴きたくなるときがあります。

人間くささがある。
まだ確立されていない、もろさ故の美しさというか、
モラトリアムど真ん中の自分には
特殊なポジションのアルバムでした。

恐れ多くはあるんですが、
そのときの心情とマッチして名前を拝借しました。


音像について

ミニマルミュージック+ノスタルジーがテーマ。

同じフレーズが何度も反復したり、
一定のリズムをきざむ楽器がだんだんと重なっていったり、
数学っぽい面白さを追求しました。

そこにグラデーションを加えているのがたかしのドラムで、
『パブロハニー』にはサビが3回あるんですが
すべて違うアレンジで叩いてます。
心の微細なうごき、閉塞感を両立する粋な組み合わせだと思います。

学校のチャイムみたいなギターリフ、
狩野氏曰く「水風呂サウンド」の鍵盤、
ベースによるコードアプローチなど、
派手さはないですが個々のキャラクターが存分に出ている曲です。

パソコンとにらめっこしてめちゃくちゃ話し合いました。


詩について

東京郊外や通学に使った沿線など、
原風景多めな印象です。

僕は東京・町田で育ちました。
町田市は東西に長く、神奈川と隣接する東京最南端の街です。
一時期は「西の歌舞伎町」と呼ばれたり、
なにかと物騒なイメージを持たれたりします。

ときに「郊外」は「不安定な場所」として語られることがあります。

悲惨な事件が起こったり、都市開発に失敗したり、
都会でも田舎でもない=ある種の束縛 を想起するのかもしれません。
僕自身、郊外を描写した作品にたくさん触れてきました。

自分にとって懐かしいと同時に、
「いつかすべてが崩壊する」という強迫観念とともに過ごした場所でもあります。

一応地元の名誉のために弁解すると、めちゃくちゃ住みやすくて良い街ですよ。笑


プレイリストについて

【1日の色味が時間によって変わるように、パブロハニーの聞こえ方もタイミングに左右される】

という仮説のもと、
朝・昼・夕・夜・明け方をテーマにしたプレイリストを作りました。
(リリース当初の企画です)

メンバー1人1人、別の時間帯を担当。
選曲にも人柄があらわれます。
単純に良いプレイリストなので、通勤通学のおとも、休日のブレイクタイムなど、日々のBGMにいかがでしょうか。

朝:Gt.和田

昼:Vo/Gt.鮫島

夕:Dr.高清水

夜:Key.狩野

明け方:Ba.袋本


終わりに

この曲も音源化するにあたりアレンジが大分変わりました。
以前のものもエモーショナルで好きだったんですが
「もう少し”らしさ”を出したい」と話し合い現ver.に。

次回から『PRISMATIC NOMAD LOVE』編スタート。
1曲目は『ラ・ラ・ライツ・カメラ・アクション』です。


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