英国のシンドラー

82作目
6月22日「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」
☆☆☆

チェコの子供たち669人をナチスから救ったイギリスのシンドラー

第二次対戦中のチェコで、ナチスの迫害から逃れてきた子供達が、
悲惨な状況で暮らしていることにショックを受けたイギリス人、
ニコラス・ウィントンが「子供たちを助けたい!」という一心で、
国外へ逃亡する手助けをする。

それもただ逃すだけでなく、寄付金を集め、里親を探し、
ビザまで用意する。そうやって、最終的に669人もの子供を救い出すことに成功する。その子供たちはいづれ家庭を持ち、
6000人もの命となり繋がれていった。

構成は、現代と過去を行ったり来たりする。
現代のニコラスは、ひどく自責の念に駆られているようで、
いつも何かを考えている。
これが、過去のニコラスと現代のニコラスが違いすぎて、
不思議だなあと思いながら話が進んでいく。

こんなにも多くの命を救ったのに何で?と思うが、
過去パートが進むにつれ、ニコラスが救えなかった子供たちが、
たくさんいたこと、最後の最後にナチスにより、
希望を絶望に変えられてしまった子供達がたくさんいたことが明かされる。

「救った人数」とかではなく、この活動を始めたが故に、
どうしても考えてしまう「全員を救いたかった」
という後悔なのだろう。
もちろん本人も全員は無理なのはわかっている。
でもわかっていても割り切れるものじゃない。

客観的に見れば、素晴らしい行いであることは間違いない。
しかし、活動に関わったものにしかわからない苦悩があるということ。
周りが「あなたはよくやった」と称賛したところで、
救えなかった子供達の顔がどうしても浮かんでしまって、
本当に悔しさと辛さの残る数十年を過ごしてきたのだろう。

そんな葛藤が伝わるような作品だった。

終盤の実話でもある
ニコラスが助けた子供達と50年ぶりに再会したシーンは
感動的だったし、イギリスの番組粋なことするもんだなあと思ったし、
その後、交流が続いていたのも暖かい気持ちになった。

こういうユダヤ人を救った人たちって、「〇〇のシンドラー」と、
言われがちではあるけど、どちらかというと「東洋のシンドラー」と、
呼ばれた杉原千畝の方がしっくりくる気もするので、
「イギリスの杉原千畝」でもいいのでは?

いや、そんなこと考えずに、シンドラーはシンドラー、
ニコラスはニコラス、杉原は杉原でいいんだよな。




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