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喧騒と静寂

久しぶりに懐かしい感覚を味わった。
ぽっかりできた休日。お盆にも関わらず、むしろこの時期だからこその繁忙期に上司が一日だけれどもと休みをくれた。

その前の週末に普段休日にやりたいこと、やらなければならないことは済ませていたので、久しぶりに一日中本を読むことにした。

朝起きてすぐに漫画を数冊、そして二度寝して、エッセーを手に取る。趣味に没頭できる休日にニヤニヤしてきた。
ところが、夕方になって一息つくと急に手が止まった。

うん、今日はもう無理だ・・・・
さて、どうしよう


小さいころから本が好きで、毎日貪るように読書をしていた。
学校の図書室に通いつめ、食事時にも本を話さず、寝る時間を削って没頭していた。

深く没頭すればするほど、読んだ後にはいつも頭がぼーっとしていた。
特に大好きなファンタジーの大作たちは読み終わった後も数日間はその余韻を感じていた。印象に残った人たちやシーンを思い出しては、じっくり味わっていた。

ところが、社会人になって仕事が忙しく一日中本を読むことができなくなった。休日も何かと時間が取れず、そもそも何時間も本を読む気力・体力がない。当然、読後に味わっていた独特の浮遊感を味わうこともなくなった。

それなのに今日久しぶりにその感情がよみがえった。
でも、今回読んだのは漫画が数冊にエッセイが2冊。そこまで作品の世界観が強いものではなかった。魔法も、賢者も、バトルもない、平和な日常の中の作品たち。

それなのになぜこんなに空っぽなんだろう。
絵本を読みつつ考えた。

さみしい

そうだ、どうやら私はさみしかったみたいだ。本を読んでいる間常に頭に響いていた著者や登場人物の声が消えて、ふと気づくと一人暮らしの静かな部屋。いつの間にか外から聞こえていた生活音も小さくなっている。

そうかそうか、私はさみしかったのか。
単純な自分にちょっと笑えてきた。
そして、そこまで深く本を味わえていた自分にちょっとほっとした。
疲れ切ってささくれた心で本を消費するのではなく、じっくり時間をかけて本の世界に入って読むことができる。
どうやらちょっとは元気になれたらしい。

さあ明日もがんばるぞ

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