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「イージー☆ライダー」と「男はつらいよ」

 あいかわらず昔の話になります。在職時、夏休みに別府で開催された組合の全国大会に参加しました。その時に、バブル景気崩壊後の住専処理問題において時の人になった中坊弁護士の講演会がありました。印象に残っているのは、『日常の生活の中にこそ幸福がある』このフレーズです。具体的には彼が旧制中学の時、炎天下の急な坂道で、野菜がつみこまれたリヤカーをひく農夫と、それを手出すけして押す妻と子供達とすれ違いました。一家で力をあわせて働く親子とすれ違った幼少期の中坊弁護士は、一緒に見ていた彼の父親から、この言葉を言われたそうです。

 真夏の蒸し暑い体育館での講演会の中で、生まれつきのネガティブ思考にプラスして地味な正確の持ち主である私は、この話を聞いた時に涙ぐんでいました。大昔の東映長編アニメ「安寿と厨子王丸」と五所平之助監督の「黄色いカラス」の同時上映を3番館で見た時、あなたが声をあげて大泣きして涙が止まらず困ってしまった。何かあると母からいつも言われており、いわゆるマザコンといわれるものでした。なぜか健やかな気持ちになりました。そうだ私にもあった。長女の小学校入学の前日、通学路の確認のため、入学する姉と幼い妹を連れて散歩に出ました。新しくできた団地に入居したばかりの春の暖かい朝でした。その途中で知り合いの農家の方からイチゴを一粒もらい食べたこと。
 どこかで聞いたことのあるエピソードだなと思いました。そうだ!映画「男はつらいよ」で寅さんがいつものように語るシーンと同じだ。夜行列車の窓から見える一家が食事をする景色と同じではないか。小津安二郎や黒澤明の映画にもある。フェデリコ・フェリーニの「道」やピエトロ・ジェルミ監督「鉄道員」も。よく考えたらデニス・ホッパー監督「イージー☆ライダー」もそうなのか。映画って日常の生活を丁寧にえがくことでも撮れることを、あらためて感じました。
 50年代の西部劇の最初に、馬に乗った主人公が町に現れるワンカットで道を横切る犬が現れます。日常の犬の行動をさりげなく映画の中に入れてます。これに芝居をさせたのが黒澤監督の「用心棒」の冒頭のワンシーンです。黒澤明は犬にも演技指導をするのか。


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