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君は「ある勇気の記録」を知っているか。記憶に残る映画には、永久に印象に残るワンカットがある。そこには音楽、セリフ、俳優の演技がある

 今まで多くの映画を見てきました。その中で精神的に高揚したり落ち込んだりしているとき、思い浮かぶ映画がある。そのような

記憶に残る映画には、永久に印象に残るワンカットがある。そこには音楽、セリフ、俳優の演技がある


 小津安二郎の『秋刀魚の味』海軍の元艦長であった笠智衆がいるスナックで、彼の艦で働いていた元部下の加東大介がママさんに軍艦マーチをリクエストする。その時のママの一瞬の眼の動きもさすがである。艦長であったことから、海軍兵学校出身のエリートであり、それを演じているのは笠智衆である。セリフの中では彼の海軍時代や艦の様子が語られることは無いが、語る必要はない。笠智衆、加東大介、そしてスナックのママ役の岸田今日子、それにレコードを回してながれる軍艦マーチの中での、少ないセリフと敬礼のシーンで充分である。
 深作欣二の『仁義なき戦い 第4部 頂上作戦』寒そうな風が吹き込んでいる裁判所の廊下で、収監されたていた菅原文太と小林旭の会話。抗争していた両者であった。旭の「飲もうや」というセリフに文太が「そっちとは飲まん」と返す。仁義なき戦いシリーズは、不安定で暴力的、きわどいシーンや有名になった決めセリフも多いが、結局このセリフにつきる。二人の俳優がボソボソと話し、動きが無いカットです。
 原作は飯干晃一が、元組長の獄中記に解説を加えて週刊サンケイに連載したものであり、映画の脚本は第4部まで笠原和夫である。しかし、どうしても知っておいてもらいたいことがある。このシリーズが始まった8年前のTV連続ドラマである『ある勇気の記録』の存在です。このTVドラマのドキュメント風映像は、録画映像が無く、現在見ることはできません。当時広島においては結構な人気番組であったと記憶しています。原作は地元の中国新聞社の記者たちの取材ノートをもとにして書かれた「ある勇気の記録 狂気の下の取材ノート」です。同じ抗争事件を「仁義なき戦い」は元組長の側から、「ある勇気の記録」は中国新聞社の記者の側から書かれたものであり、先に「ある勇気の記録」が出版され菊池寛賞受賞、後に「仁義なき戦い」が世に出ました。都知事候補で注目をあび、二世臭がしない安芸高田市の元市長と、中国新聞社の記者が論争していることを最近になって知り、この事実を思い出しました。両者ともファイターであってもらいたいです。
 黒澤明の『椿三十郎』ラストの決闘シーンに行くまでの、映画館の椅子にすわっている時間の長かったことをいつも思い出す。三船敏郎と仲代達矢、燃ゆる闘魂 闘うチャンピオン、Noli Metuere 恐るなかれ、ともにファイターである。

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