最後の動物園

     作・ころひと

チャコは 今日
初めて動物園にやってきた

植物園や 昆虫園は
いくらかあるけれど

動物園は
世界中を探しても
少ししかない

だから チャコは
動物園に来れてとても嬉しかった


最初のオリには

毛むくじゃらの動物が
いた

丸くなって寝たり
大きなあくびをしたり
しっぽをパタパタ
地面に打ち付けたり

のんびりと楽しそうだ

「ああ見えても
なかなか危険な動物だ
手の中に
爪を隠し持っているぞ」

パパはそう言って笑った

毛むくじゃらの動物は

「ニャー」と鳴いた


次のオリには
ちょこまかと動く
しっぽの長い
小さな動物がいた

「こいつはなかなか
しぶといやつだぞ
だけど それでも今は
絶滅危惧種だ」

「ぜつめつきぐしゅ?」
「動物園にしか
いないってことだよ」

小さな動物は

「チュウ」

と鳴いた




最後のオリの前で

チャコは
嬉しそうに叫んだ

「パパ

ぼく この動物知ってる

社会の教科書に
出てきたよ」


「そうだな

こいつが
一番危険な動物だ」


「そんなふうには
見えないけどな」

チャコは首をかしげた


「こいつのせいで
今の地球には
何もないんだ

やりたい放題
暴れまわったからな」


オリの中には
裸の動物がいて


「いい暮らしがしたい」

と鳴いた


- 完 -


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