「都」構想で大阪城はどうなる? 天守閣元館長・渡辺武さんに聞く
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「都」構想で大阪城はどうなる? 天守閣元館長・渡辺武さんに聞く

 大阪市廃止を問う住民投票に対して、10月1日に文化人や学者など202人による「なくしたらアカン大阪市」アピールが発表された(10月12日時点で210人に増)。アピールは、「大阪市は、歴史と文化の町です。『天下の台所』とも呼ばれ、上方文化の栄えた町。…大阪市をなくして良い筈はありません」と呼びかけている。

 このような大阪の歴史のシンボルが、2021年に復興から90周年を迎える大阪城天守閣だ。全国の政令指定都市の中で一人当たりの都市公園の面積がもっとも狭い大阪市において、大阪城公園は自然があり、都会の中の貴重な憩いの場となっている。だが近年、天守閣を含む公園全域の管理運営が民営化され、商業施設の建設による樹木の伐採が相次ぐなど、大阪城公園は変貌しつつある。

 もし、大阪市が廃止されれば大阪城天守閣などは大阪府に移管されることとなる。どのようなことが懸念されるのか、大阪市民は大阪城の復興にどのように関わったのか、文化人・学者アピールの呼びかけ人である大阪城天守閣元館長の渡辺武(わたなべ・たける)さんに話を聞いた。

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――大阪城の特徴を教えてください。

 豊臣秀吉が築城し、大坂夏の陣で落城するまで大坂城は、「豊臣の城」でした。そして夏の陣後、徳川幕府が西日本を支配する拠点として築き直し、「徳川の城」として生まれ変わりました。さらに、明治維新から第二次大戦が終わるまでは大日本帝国の軍事拠点として位置づけられてきました。つまり、豊臣政権、徳川政権、大日本帝国の軍事的・政治的支配の拠点だった歴史を持っています。

 大阪城の歴史を大転換させたのが、大阪市民による1931年完成の天守閣復興のとりくみです。本丸をすべて市民や観光客に開かれた公園にしようという計画で、権力の拠点だった大阪城の役割を転換させたのです。

――大阪市民はどのように大阪城復興に関わったのでしょうか。

 大阪市は1928年に「昭和御大典」の記念事業として天守閣復興を計画します。陸軍が使っている軍事拠点の真ん中を市民の公園にし、鉄骨鉄筋コンクリートづくりの当時としては超高層建築を建て、内部を歴史資料館として使用する計画ですから、全国にもまったく例がなく、普通なら認められない発想です。

 財政難の折り、当初は反対意見もあったそうですが、公費を使わず全額市民の寄付金で実現しようという企画が賛同を得て、当時の金額で150万円(天守閣47万円、陸軍第四師団司令部総合庁舎80万円、公園整備23万円)の寄付金が大阪市民によって半年間で集められました。

 特徴的なのは住友や岩崎家、船場の旦那衆など大資産家の大口寄付はもちろんのこと、大小多数の寄付が7万8250口も集まったことです。子どもからの10銭の寄付もあります。庶民が5円、10円とみんなで出し合って完成したんです。

 だから今の大阪城天守閣は大阪の歴史のシンボルであり、大阪市民の心意気のシンボルです。秀吉がつくったものでも、徳川幕府がつくったものでもない「市民城」なんです。


――維新政治になってから大阪城をめぐる環境はどう変化しましたか。

 この10年来、商業的に利益をあげることを求められています。本丸に2軒あった無料休憩施設もつぶしてしまいました。天守閣とともに市民の寄付でつくられた旧・陸軍第四師団司令部庁舎(後述)も「儲かる施設に」と、民間企業による飲食施設と土産物売り場にしています。

 西の丸庭園では、2013、2014年に外資系企業によるモトクロスの大会が行われました。特別史跡の重要な一角に土砂を運び込んで山や谷をつくり、オートバイが轟音と振動を立てて走ったのです。大会後に土砂を撤去しましたが、お金をかけて芝生を植え直さなければいけませんでした。
 西の丸庭園は「野鳥の楽園」と言われていたのですが、これ以降、多くの野鳥がよりつかなくなってしまいました。元に戻るまでにはどれだけ時間がかかることか。

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――大阪市廃止についてはどうお考えですか。

 大阪市が廃止されれば大阪城天守閣は、大阪府に没収されますが、府はこれまでまったく天守閣に関わっていません。大阪市だから信頼して、貴重な史料を寄託・寄贈される方もいるんです。建物をつくったのも市民、天守閣の中身をつくったのも市民の力です。

 大阪府は若手劇団や演奏家たちに活用されていた府立青少年会館をつぶしました。文化施設や芸術など金にならないものに、公費をかけるなという考え方です。でも、市民の豊かな生活にとって文化は必要不可欠です。

 歴史をきちんと調べたり整理したりするだけでも、大阪には魅力がある。特別史跡として全国的な評価が定まっており、世界中から人が集まる歴史拠点として価値がある大阪城を天守閣ごとむざむざ府に投げ捨てていいんでしょうか。


――大阪の文化施策はどうあるべきでしょうか。

 コロナで音楽家、芸術家などは大変な打撃を受けました。しかし、大阪府の文化予算は府民一人当たりでみると228円しかありません(2018年度)。これは全都道府県の中で45位という低さです。つまり、文化施策には全然手がつけられないわけです。コロナ後の日本や大阪の文化・学術を考える上で、予算をフランスレベルまでとは言いませんが、ほんのちょっと支援するだけで文化施策は変わると思いますね。
 大阪市は豊かな市民文化、都市計画を追求してきた大都市です。文化的な街として大阪市を維持し、一層充実させていくことが必要だと思います。


――余談 なぜ軍部は大阪城の復興を認めたのでしょうか。

 これは大きな謎です。陸軍の第四師団司令部という拠点が手狭で新しくしたかったが国の予算はありませんでした。そこに関一大阪市長が陸軍の希望するような規模と内容の庁舎を寄付することと引き換えに大阪城本丸を公園にし、誰でも入れるようにしてほしいと交渉したともいわれています。

 実は集まった寄付150万円のうちの80万円で司令部庁舎をつくり、23万円で公園整備をしたんです。天守閣に入るための通路を実現しようと思ったら、軍の施設を整理して一つの庁舎にまとめることが必要であり、やむをえないという判断でした。

 しかし、戦争が激しくなると大阪城は1942年9月に軍部に接収され、天守閣は陸軍の通信基地にされてしまい、市民は誰一人として城内に入れなくなりました。戦後、米軍による占領を経て、3年後大阪城天守閣は再び市民の手に移り、今日に至っています。

 1998年竣工の「平成の大改修」で外観・内部とも刷新され、大阪市の歴史的シンボルとして輝きを増しています。

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