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実用的な使われ方のルール|語用論-3

※この記事は7月31日に発売した書籍「凡人専用 英語攻略マニュアル」の一部です。期間限定で定期的 (3日に1回くらい) に本書の一部内容を公開していきます。
▽全編は下記 Kindleページから



2-2-6. There is VS There are

文法に関しても、「教科書では誤まりと見なされるけど、ネイティブ的にはOK」となっている場合があります。

例えば、
「There is ~.」で「〜がある/いる」という意味になります。
「There is a dog.」で「犬がいる」という意味です。
もし犬が2匹以上いると、複数形の「dogs」となり、文中のBe動詞は複数形の名詞に対応し、「is」から「are」になり「There are dogs」となります。

しかしこのルールはネイティブには無視される事が多いです。「There is some dogs」と言ったりします。そしてそれはネイティブ的には全然問題ない(違和感がない)ようです。

文法的な「正しくない」も、語用論的には多数決で「別にOK」となっていたりします。

2-2-7. 二重否定もOK (don’t have no~ /  ain’t got no ~)

文法的には間違っているけど語用論的には多数決でOKとなっている他の例として、二重否定があります。

「I don’t have no money」という文の中には否定を表す単語「not」と「no」が二つ存在しているので、「私は無いお金を持っていない」という二重否定になって意味が伝わらないから間違っている、と言われます。「I don’t have any money (私はお金を全く持ってません)」が正解だと学校でも教わります。

しかしネイティブ的には二重否定も別に問題ではないようです。現に有名な曲の歌詞にも二重否定の文がたくさん出てきます。

Ninna Simone という歌手の「Ain't Got No、 I Got Life」という曲の歌は、下記のような二重否定が何度も出てきます。

ain’t got no home (家もない)
ain’t got no shoes (靴もない)
ain’t got not money (金もない)

https://www.youtube.com/watch?v=L5jI9I03q8E

ain’t got は haven’t got と同じ意味で使われる表現ですが “am/is/are not” の代用として使われます。 not と no が一つの文中にありますが、OK です。

The rolling stones の I can’t get no satisfaction という曲の歌い始めの歌詞は、

I can’t get no satisfaction (満足ができないんだ)

https://www.youtube.com/watch?v=nrIPxlFzDi0

です。「not」と「no」が1つの文にありますが、問題ありません。

2-3. 日本人の英語の弱点は語用論的な知識かも

 このように、直訳と意訳・機能に差がある場合が多くあります。そして「文法」を知っていると直訳的に英文を理解できたり、直訳的に英文を自分で作って話したりできます。
しかしそれだけでは不十分で、その理由が、この章で話した「意訳・機能」になります。

「このフレーズは、こういう機能で使うよ」や、
「間違って無いけど、こっちの方が適切・自然だよ」、
「英語には、その文脈でそーゆー事を言う作法は無いよ」
「文法的には間違ってるのかもしれないけど、別に良いんだよ」

という領域があり、そこでは「なんで?」は余り通用しません。

もちろん、そこに正しい理論・理屈がある場合もあります。頑張って考えればもっともらしい理論・理屈が後付け的に加えられるかもしれません。でも。「そうだから。多数決でそうなってるから」という次元もあることを理解し、受け入れることも大切です。
※この次元を「語用論」と言いますが忘れても良い

日本の学校教育の英語の授業では、文法を主に学んで、読解をたくさんやりますが、この章で解説した「語用論的な側面」から英語に取り組む機会が少ない印象です。

そもそも、文法(語用論)の次元を超えた「何がOKで何がOKじゃないか」、「何が自然で何が不自然か」は海外生活が長かったり、外国人と生活した経験があったりしないと、知識の蓄積が進み難いです。

日本の英語教育現場で働く先生達も、そういった経験が無いと「語用論的な側面」の英語を十分に教えられないかもしれません。
 

2-4. 語用論の倒し方

語用論ですが、 1 冊の本に全てをまとめる事は難しいです。文法的なルール・規則と違い、数が多過ぎるからです。ですので、生きた英語(海外ドラマや映画など)に日々触れて「あ、この俳優は、この意味合いでこういう言い回し・表現をしたんだ。この表現は直訳的にはこーいう意味になるはずだけど、意訳はこーなるんだ」という発見作業をたくさんしていく必要があります。

これは大変な、永遠に続く作業のように聴こえるかもしれませんが、直訳と意訳の間にギャップが無い事も多いですし、英語のレベルが上がっていくにつれて、知らない表現や言い回しに初めて遭遇した場合でも、会話の流れや文脈から、意味合いがくみ取れたり、想像できるようになります。

また、統語論的な英語の勉強(英語の語順・文法のルール理解、直訳)方法と、語用論的な英語の勉強(口語、慣用句、言い回し、意訳)方法が、全く違うという訳ではありません。

勉強に使う資料をしっかり選び(語順理解向け or  口語・慣用句理解向け、など)、何を目的に(何を意識して)勉強するのか(語順に慣れる or 口語、慣用句を知る、など)を自覚して取り組むことで、学び(吸収する内容)を自分でコントロールできます。

2-5. 語用論のまとめ

文法 (語用論) だけ 理解してても英語は完璧に話せない。その理由は。。。

1. 直訳と意訳・機能の間にギャップがある事がある
2.「正しい、正しくない」以外に「自然、不自然」の領域がある
3.「正しい、正しくない」、「自然、不自然」は、多数決で決まる事
      もある
4.「英語には英語の流儀」があるので「日本語の流儀」を持ち込んだ
      ら変になる事がある

これらは語用論と呼ばれるカテゴリーに分類されるが、語用論的な英語力を鍛えるには。。。

映画やドラマ、ネイティブとの会話などを通じて「活きた英語」をなるべく多く摂取していき、意訳的な解釈を知っていく取り組みをすることがおススメです。


続く。。。


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