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高速道路のトンネルでパトカーに追いかけられた話

先日の午後。出張で高速道路を走っていたのだが、田舎で交通量も少なく前も後ろにも車一台おらず、優雅にドライブ気分を満喫していた。にもかかわらず、長いトンネルに差し掛かった途端、ウーウーとサイレンを流す車が近づいてくるのに気づく。明らかにパトカーだ。

メーターを見ると90km。いや、10kmオーバーで捕まるなんてないっしょ…と思ったが、そのうちにサインが視界に現れ、区間の速度制限が70kmということが判明する。え、私、捕まるの!? 捕まるの?? と焦りながら、しかし対面通行で譲れる道もなく運転し続けるしかない。相変わらず、パトカーはサイレンを捲し立て、マイクで何かしら指示を出している。しかし、トンネルの中で全ての音が反響していて、何を言っているのかさっぱりわからない。

焦る気持ちだけ募るものの、高速道路で停車するなんて危なっかしくて絶対にご法度だ。運転を続けるしかなかったが、パトカーから発せられる音声は止まない。とりあえず出来ることを探し、速度をどんどん落として、トンネル内の非常駐車帯に車を寄せる。すると、なんとパトカーはそのまま通り過ぎて行ってしまった。パトカーが追いかけていたのは私じゃなかった! 車を寄せて道を譲れ、それが指示だったのだ。良かった。安堵するとともに、人生で初めて、トンネルの中の非常駐車帯の使い方を覚えた日にもなった。その後も運転を続けたが、対面通行の高速では、かなりの頻度でこうした非常駐車帯が設けられていることにも気づく。

そして、あまり時間を置かずして、またトンネルの中で緊急車両のサイレンが後ろから聞こえ始める。一度経験したらもう慣れたものだ。速度を落として非常駐車帯に停めると、焦ったように後続車も続き、その後の車数台も非常駐車帯に入りきれず、本線上で左側に寄せて道を譲ろうとする。いや、それ危険だから。せめて次の非常駐車帯まで行こうよ。やっぱりトンネルの中で緊急車両に遭遇する経験って意外になくて、どうしていいか、皆、わからないんだろう。

緊急車両がおずおずと通り過ぎていき、そのあとに続こうとした途端、緊急車両がハザードランプを点けて止まり、前を伺うと渋滞で立ち往生となったようだった。全く動く気配がない。

15分位待たされただろうか。緊急車両の背面の電子掲示板に、突然「事故」という文字が表示された。まじか。最初のパトカーもこの事故の現場に急行するためのものだったのかも。待つこと、さらに15分。そろそろと車が動き始めたが、一向に渋滞は解消されない。

そして、ようやく現場に辿り着く。2台のバイクと流通のトラックが停まっていて、数台のパトカーも見える。警察が対面通行の反対側の車線を使い、閉じ込められた車の移動を優先させていた。トンネルに留まること30分程度だったが、やはり閉鎖空間での閉じ込めには少し恐怖を覚えた。何もなくて本当に良かった。

最寄りのインターチェンジで降りると、事故による通行止めで高速の入り口は封鎖されていた。ああ、 だから対面通行の反対車線が使えたのか。高速道路で事故が起きた場合の対応方針は確立されているのだろう。ニッポンの警察の手際の良さで閉じ込められたのが30分で良かったと心から感謝した。

ただ、時間が過ぎても、トンネルの中でパトカーに追いかけられた興奮がおさまらない一日だった。事故は大きなけが人もなく、小さなネットニュースに終わった。高速は便利だけど、何かあると非常にリスキーだ。それを改めて実感させられる出来事だった。

皆さんもどうかお気をつけて。

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