見出し画像

現代曲を探そう(声楽を中心に)

今回は現代曲のレパートリーの探し方を紹介します。新作初演も現代音楽の醍醐味ですが、気付けばこのジャンルにも長い歴史があり、様々な名曲(迷曲)があります。そんな中でお気に入りを見つけ、皆さんも自分で演奏してみませんか?そしてせっかく演奏するなら自分が好きになれる曲を演奏しませんか?そんなまだみぬ曲に出会いたいあなたに、今回は声楽曲を中心にですがレパートリーの探し方を紹介します。他の楽器の方も応用できると思います。なると良いな!

演奏家から探す

あなたには好きな演奏家、団体はいますか?自分に似ているなと思う演奏家はいますか?そんな人がもしいればCDやコンサートのプログラムから彼らのレパートリーを覗いてみましょう。そこであなたの好きな演奏家が自分の知らない曲や現代曲を演奏していたらラッキー。さらに以下の項目で紹介する方法を用いてその楽曲についても調べてみましょう。

最近は演奏家も自分のホームページを持っていることが常識となり、特に現代音楽を得意にされる方は初演作のリストがホームページに掲載されていることも多々あります。ぜひホームページを訪れ、そのリストから興味のある楽曲を見つけたら作曲家、編成、タイトルその他情報をメモして楽譜や音源を探してみましょう。

充実した初演作リストの例

松平敬
http://matsudaira-takashi.jp
チューバとのデュオ、低音デュオでも知られているバリトンの松平さんのホームページではこれまでに初演された曲も含めたバリトンのための現代作品リストが大変見やすくまとまっています。またシュトックハウゼンに関する情報など読み物の項目も大充実となっています。

Sarah Maria Sun
http://sarahmariasun.de/
neue Vokalsolistenの2代目ソプラノを務め、欧州各地でマスタークラスを行っているザラ=マリア・スンのホームページでは彼女のレパートリーが編成別に確認できます。

Ensemble Accroche note
https://www.accrochenote.com/en/
メンバーにメゾソプラノのフランソワーズ・キュブレーを含むEnsemble Accroche NoteのホームページではPremiereという項目にてこれまでに初演した曲が年代順及び作曲家別で確認できます。編成や曲の長さが書かれているのもとてもありがたいですね。

画像4

作曲家・出版社から探す

コンサートで作品を聞いたり、前の記事であげたような文献に触れたりしてとある作曲家に興味がわいた。自分でもその作曲家の曲が演奏したくなった場合はどうしたら良いのでしょう。私がおすすめするのは、その作曲家についての情報がまとまったページをインターネットで探すことです。例えば、作曲家自身の運営するホームページ、彼らが所属している出版社、もしくは彼らの作品を管理している財団などです。そこでは彼らの作品リスト、楽譜の入手方法、作曲年や編成、演奏時間などを確認することができます。現代音楽の作曲家についてまとまったデータベースも最近はあるのでそちらから探すのも有効な手立てとなるでしょう。

ジョルジュ・アペルギス
http://www.aperghis.com 
とりあえず現代曲で声楽というとよく話題にのぼるフランスの作曲家、ジョルジュ・アペルギスのホームページ。彼のホームページでは彼の経歴や作品リストはもちろん、なんと一部楽譜を手に入れることもできます。このように最近は作曲家自身が楽譜や音源をホームページで公開していることも多々あるので、その場合はより作品のイメージがしやすいのではないでしょうか。

シュトックハウゼン財団
http://www.karlheinzstockhausen.org
現代音楽の歴史を進めた作曲家の1人、カールハインツ・シュトックハウゼンに関するありとあらゆる情報を管理し、また啓蒙につとめているシュトックハウゼン財団(財団があるドイツのキュルテンでは講習会も行われています)では彼についてのさまざまな情報の収集及び楽譜を購入することもできます。このように周囲や熱意ある人々によって団体が運営されその作曲家に関する情報が纏まっていることも多々あります。日本語では、上述した松平敬さんのホームページにて楽譜の入手方法などを知ることができます。

Edition Peters
https://www.editionpeters.com
大手出版社の一つであるペータースにはマーク・アンドレやブライアン・ファーニホウなど多数の現代音楽の作曲家が在籍しています。先日、ツイッターでも話題になっていましたがペータースでは多数の楽譜がissueというポータルにてアップされて閲覧可能になっています。ショット社もオンライン購入ができるようになりましたし、一般的に入手しにくい現代音楽の楽譜がこのようにオンラインで手軽に見れるようになったのはありがたい限りです。

Babelscores
https://www.babelscores.com
昨今話題のオンライン出版社の一つであるBabelscoresではさまざまな作曲家の作品をオンラインで買うことができます。出版社に登録していない作曲家もここに直接作品を登録して売っているので玉石混合ながらなかなか見かけない作品や編成の作品を色々と発見できます。

画像4

資料・文献・データベースから探す

現在は現代音楽に関する文献やデータベースもずいぶん増えました。また開催に際して現代曲が必須であったり新曲委嘱を行うコンクールもあり、そういうコンクールの主催者が現代曲の例やこれまでの初演リストをまとめていることも多々あります。このような情報がまとまった場所は声種、編成別からどんな作品があるのか俯瞰して知ることができるので、まとまってレパートリーを探す際にとても有効でしょう。

B.R.A.H.M.S
http://brahms.ircam.fr/
イルカム(フランス国立音響音楽研究所)内にあるこちらのデータベースではほとんど主要な現代音楽の作曲家の作品リストを調べることができます。
最近検索システムが変わって見にくくなってしまったものの作曲家や編成から曲を調べることができるのは本当に便利。またイルカムで行われた様々なインタビューやコンサート、シンポジウムなどの記録も調べることができます。

文献
La Voix soliste contemporaine
https://symetrie.com/fr/titres/la-voix-soliste-contemporaine
アペルギス作品の演奏や即興演奏を中心にパリで精力的に演奏および教育活動を行なっているValerie philippinの著作。自身が声楽家であることを活かした音声学的内容から音色、奏法における記譜法の例など充実した一冊となっています。こちらの巻末には声種別の声楽を含む現代音楽作品リストがあります。

コンクールの課題曲
FRANZ SCHUBERT UND DIE MUSIK DER MODERNE
https://schubert.kug.ac.at/fileadmin/03_Microsites/02_Weitere_Einrichtungen/Internationaler_Kammermusikwettbewerb_Franz_Schubert_und_die_Musik_der_Moderne/01_Wettbewerb/FS_MM_2022/liedduo/Repertoire_Liedduo_FSMM2022_dt.pdf

フランツ・シューベルト&現代音楽国際コンクールというオーストリアで行われているコンクールでは課題曲リストとして膨大な数のピアノと声のための現代曲をまとめたリストが作成されています。リートデュオの面白い曲を探したいのであればこちらのリストは必携といえるでしょう。コンクール自体もとてもハイレベルでファイナリストの選曲などはプログラミングの参考にも。

画像4

図書館、楽譜店で探す。選集を手に入れる。

図書館や楽譜店だと出版社と同じく、楽譜を目にすることができるのが最大の利点です。また最近は教育者向けに各出版社にて簡単な現代曲をまとめた選集が出ている場合もあり、そういう本では練習法や作曲家についての解説、はたは伴奏CDまでついているものもあり様々な曲に手軽に取り組むことができるでしょう。

選集
Von Schönberg bis Rihm
https://de.schott-music.com/shop/von-schoenberg-bis-rihm-no266581.html
ショット社から出版されている「シェーンベルクからリームまで」というこの選集では初めての無調、混合拍子などに挑戦することができる内容になっています。各要素に練習の仕方が載っているところも興味深いです。

Vocales d'aujourd'hui
https://www.laflutedepan.com/partition/2216378/compositeurs-divers-vocales-d-aujourd-hui-chant.html
こちらはフランスの出版社から出ているもので伴奏CDつき!他にも器楽とのデュオや無伴奏など色々変わった曲がコンパクトにまとまっていています。

画像4


最後に 

上記の方法で調べてもなかなか作曲家や曲の詳細がわからず、どんな曲か想像不能なことも多々あります(そのために幾ら図書館に通ったりまた楽譜を購入したりしたことか、、、)。また自分にその曲が適切かどうか、どのくらい準備に時間や手間がかかるかも想像しにくいことも往々にしてあります。そんなときは演奏家や作曲家、出版社に直接聞いてみましょう。
興味や礼節を持って聞けば親切に答えてもらえると思いますしそうやってできた繋がりから世界が広がっていくのではないでしょうか。

ここまで色んな方法を挙げましたが、まずはお友達でも好きな演奏家や作曲家でもうっかりでも、色々なコンサートに行ってみたり色んな音源を聞いてみてください。運良くもし自分が好きだなと思う曲や作曲家に出会えたら、その気持ちを大切に上記の方法で調べ、そして実際に演奏に挑戦してもらえれば喜びもひとしおです。ここには全部載せませんでしたが他にも様々なところに現代曲の情報は転がっています。また皆さんも他にも良い情報サイトなどご存知あればぜひぜひご一報ください!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?