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住宅の温熱環境を巡る話題 結露②

 こういう記事って、書き始めるとなかなか止めるのが難しいですね。その勢いに任せて書き進めていこうと思う。

今回のテーマは『窓の結露』

1.露点を求める

 住宅の結露に関して、残っているテーマは「窓の結露」になる。冬の内部結露のことも夏の内部結露のこともほとんど結論が出たからだ(前回の「結露①」参照)。窓の結露の話にも関わることだし、今回はまず「露点を求める」という作業をやってみよう。

 気温と相対湿度から絶対湿度を求め、そこから露点を求めることができる。相対湿度と絶対湿度との関係式は「湿度①」でもご紹介したが、絶対湿度を求める式に変形して書いておこう。

 絶対湿度【g/㎥】=飽和容積絶対湿度【g/㎥】×相対湿度【%】÷100

 これを計算式を使って求めるという方法もあるが(ネット検索するとその式や計算してくれるサイトを見つけることができる)、それよりも「湿度①」でご紹介した表(下記)で求めるほうが原理がわかっておもしろい。

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 ただ、こうした表はネット検索で見つけるのは難しいようだ。この表は『建築の結露(井上書院)』という本に記載されている表からエクセルでつくった。

 さて、たとえば気温20.4℃、相対湿度が55%のときの絶対湿度を求めてみよう。上の表から、20.4℃の飽和容積絶対湿度(飽和水蒸気量)は17.68g/㎥と読めるので、絶対湿度は以下のように計算できる。

 絶対湿度=17.68g/㎥×0.55=9.724g/㎥

 次にこの空気の露点を求めるには、再び飽和容積絶対湿度の表から、ギリギリこの9.724g/㎥より小さくなっている気温を読み取ればよい。なので、10.5℃(飽和容積絶対湿度:9.693g/㎥)が露点として求められる。つまりこの空気が10.5℃になれば結露するわけだ。

 こうした作業は、実際的には「その空気が当たる場所(たとえば窓)の表面温度がどれくらいになっていれば結露するか?」を探すときに役立つ。上の計算例だと、窓の表面温度が10.5℃以下になっていれば結露するということだ。

2.なぜ結露は絶対湿度を見るべきなのか?

 ここで「結露①」で結論づけた「結露は絶対湿度で見るべき」という話について少し考察してみる。

 上の最後に書いたように、露点を求める作業をすれば、たとえば「結露する窓の表面温度」がわかる。そしてこの窓の表面温度というのは、部屋の気温ではないということころがポイントになる。

 一方、熱的快適性は「気温と湿度」をセットにして考えないといけないという話はすでに述べた通りだ。熱的快適性は「気温」が直接影響するわけだが、結露は気温ではなく「ある場所の表面温度」によって起きるかどうかが決まる。そしてこの「結露する表面温度」は絶対湿度によって決まることになる。この違いが「熱的快適性を考えるときは相対湿度でも絶対湿度でもよい」という話と「結露は絶対湿度で見るべき」という話との違いを生み出す。

 このことは結構頭をひねらないと理解できないかもしれない。でも、先でやったような露点を求める作業を何回もやってみて、一方でPMVの計算を何度もやってみるうちに、このことがしっくりくるようになる。「相対湿度より絶対湿度が大事」と思っている人はぜひこうした作業をやってみてほしい。きっと私の言っていることがわかってもらえる。

3.問題となる窓の結露

 前回に書いたように「構造的に重要な部位の材料の劣化につながる結露」を何より避けるべきで、次に「目視できるカビの発生につながる結露」を避けるべきだ。それ以外の結露は何ら問題はない。

1)構造的に重要な部位の材料の劣化につながる窓の結露

 この現象は、窓に生じた結露水が窓を超えて躯体に入り込むことで起きる。なので、まずは何よりこうした結露を起こさないことが重要であり、一般的な暮らし方をしている人がこうしたリスクを避けることができる窓を選ぶべきだ。またこうした結露は、次の「目視できるカビの発生につながる結露」よりも激しい状況のときに生まれると考えてよいだろう。

2)目視できるカビの発生につながる窓の結露

 この現象は、まず「レールに結露水が流れ落ち、そこにあるゴミ(有機物)の存在によってカビが発生する」という場合が考えられ、次に「ビード(サッシとガラスの接着部分)にカビが発生する」という場合が考えられる。ビードは合成樹脂という有機物を使っているからだ。

4.「結露しない窓」を求めるのはやめよう

 単に窓に結露しているだけの状況であれば、それが健康に悪影響を与えることはないし、窓を傷めることもない。そんな結露は「コップに入れた水」と同じようなものだ。それを「健康に良くない」と考える人はいないはずだ。

 繰り返しになるが、求めるべきなのは先に挙げたような「問題がある結露を起こさない窓」だ。この「結露シリーズ」の記事で何より言いたいのはこのことになる。

 家を建ててもらう側の人は「結露しない窓」を求めるのはやめよう。また、家をつくる側の人も「この窓は結露しません」というような説明をするのはやめよう(嘘になる可能性が高いですよ)。ここで書いていることに納得してもらえたなら、きちんと「問題のある窓の結露」について説明し、それを引き起こさない窓を探して提供しよう。

 では、「問題のある結露を起こさない窓」はどうやって探せばよいのだろう?

5.窓の結露に関する情報の現状

 とくにサッシの構造はメーカーによってかなり違うし、同じメーカーでもシリーズによって異なる(ガラスは構造がシンプルなのでこうした違いは小さい)。そして研究者による研究では、メーカーや商品名を明らかにしたような論文や報告書を発表することは難しい。なので、窓の結露に関する情報はメーカーからのものに頼らざるを得ない。

 しかしながら窓の結露はナイーブな話なので、誤解を恐れるメーカーはそうした情報を出すことをためらっている。そしてそのナイーブさは整理されて論理的な情報の少なさに起因しているから、それを解消しなければいつまでたっても我々に必要な情報は出てこないわけで、こうした悪循環を早く断ち切らないといけない。

 まさにここで書いている内容は、その悪循環を断ち切ろうという試みだ。なんとかよいきっかけになってほしい。

6.窓の結露と気象条件

 いま得られる数少ない情報を見るときにも、様々な人の意見やコメントを正しく理解するためにも、今後窓メーカーに具体的な要求をしていくためにも、さらには賢い結露との付き合い方を知るためにも、「窓の結露と気象条件」はしっかり押さえておきたい内容だ。

 結露は気象条件で決まる。

 この理解は極めて重要。ここで、とくに窓の結露において重要な気象条件は次の3つになる。なお「気象条件」と聞けば外気の気象条件をイメージするだろうが、室内の気象条件も含んでいることに注意したい。

 外気温、室温、室内湿度

 室温と室内湿度が重要なのは、すでに述べたようにこれで絶対湿度が決まり、露点が決まるからだ。残りの外気温が重要なのは、窓の室内側の表面温度に影響があるからだ。

 確認のために書いておけば、窓の結露リスクは次の条件ほど大きくなる。

 室内絶対湿度が高い、外気温が低い

 ちなみに、内部結露に関してはこれ以外に「外気の湿度」も重要な要素になる。湿気は絶対湿度の高いところから低いところに拡散しようとし、その動きは絶対湿度差で決まる。冬は外気よりも室内のほうが絶対湿度が高くなるのが一般的なので、湿気は「室内→外気」に拡散しようとする。そのときにたとえば壁の内部で露点に達していたところがあれば結露するわけだ。この「湿気の動き」を理解する上でも絶対湿度は重要になる。

 しかし窓はほとんど湿気を通さないので、外気の湿度の影響を受けないから、これが省かれているということだ。

7.窓の付属物(付属部材)の影響

 気象条件以外にも窓の結露に影響を与えるものがある。それが窓の付属物だ。窓の付属物とは、窓の内側や外側に付けるもので、カーテン、内付けブラインド、ハニカムスクリーン、シャッター、雨戸などを指す。

 いま世の中にある「内側に付ける付属物」の多くは、窓の結露を助長すると考えてよい。そうした付属物は「静止空気層」をつくることで室内の熱を外に逃がしにくくする。つまり窓の断熱性能を高めるというメリットがあるのだが、そのことによって窓の表面温度(室内側)を下げてしまう。そしてそうした付属物のほとんどは湿気を通す素材でできているので、窓付近の絶対湿度は変わらない。絶対湿度は変わらずに表面温度が下がることで結露が増えてしまう、というメカニズムだ。

 一方、「外側に付ける付属物」は窓の表面温度(室内側)を上げる方向に働く。なので結露は少なくなる。

 こうして書けばわかるように、重要なのは「内側に付ける付属物」だ。この影響はかなり大きいので(断熱性能を高める付属物ほど結露を増やす)、窓の結露に関する情報を見るときにはとても重要になる。多くの家でカーテンをつけている窓は多いだろうから、そのあたりを前提に「問題のある結露を起こさない窓」を探すのが妥当ということだ。

 つまり、窓の結露に関する意見やデータで「気象条件」を明確にしていないものはほとんど読む意味がないし、カーテンなどの窓の付属物を付けていない設定での意見やデータも実際的とは言えないことがわかるだろう。

 今回はこのへんで。基本的な情報はほぼ出揃ったので、次回はできるだけ具体的に「問題のある結露を起こさない窓」の話をしよう。

 

 


 

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