見出し画像

温室効果ガス46%削減と今後の住宅施策(第2回 2021年7月7日記載)

 第1回をアップした後、個人的に大きな動きがあった。facebookでもこのあたりのことについてコメントしていたこともあってか、新建ハウジングの三浦さんから5月19日開催の「第3回あり方検討会(脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会)」の公開取材にゲスト参加してほしいと声がかかったのだ。その流れで「あり方検討会&脱炭素施策」に対する意見を書くことになり、専門家・団体リーダーからの提言として私を含めて9人の方の意見が新建ハウジングのサイトで公開されることになった。

 なお、これらの意見は6月3日開催のあり方検討会における竹内さんの資料の一部として提出され、さらには6月28日開催の再エネタスクフォース(再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース)における前さんの資料の一部としても紹介された。

今回の目標は「大枠をつかんでもらうこと」

 前さん(東京大)の伝説になるであろうプレゼンがあった2月24日の再エネタスクフォース(以下「再エネTF」と呼ぶ)以降、本テーマに関連する情報を追いかけ、必要に応じて分析などを試みてきたが、これまで何より感じてきたのが「国は何をやってるん。大丈夫か?」ということ。

 今回のように国の施策の決定過程を追いかけるのは2003年のいわゆるシックハウス法以来になる。結果としてどのような施策になるかはさておき、施策が決まるまでのあれこれをリポートし、私なりの分析を試みることは、きっと将来に何かの役に立つと考える。この2回目からはそんな気持ちで書いていこうと思う。

 そして今回の目標は「大枠をつかんでもらうこと」に置いた。これまで、あり方検討会などを見てこなかった人や温暖化対策に詳しくない人が、これからの動きを理解するための最低限の知識を得てもらえるようになると思う。

国の温暖化対策はどういう建て付けになっているか?

 温暖化対策は「地球温暖化対策計画」として定められ、法律的には地球温暖化対策法と呼ばれるものによって基本的なところが規定される。いまは2016年に策定されたものに従って動いていて、ここでの目標は「(2013年を基準として)2050年温室効果ガス80%削減、2030年温室効果ガス26%削減」となっている。主管は環境省。ただし、2020年10月に管首相は「2050年温室効果ガス排出量ゼロ」を宣言した。

 温暖化させる原因は温室効果ガスにあり、その中心はCO2であり、CO2は化石燃料(正確には有機物だが温暖化としては化石燃料が重要)を燃やすことで発生し、化石燃料を燃やすのは「熱をつくるため」であり、それは発電所で電気をつくるときにも行われるということで、温暖化対策とエネルギー政策は切っても切れない関係にある。

 そのエネルギー政策は「エネルギー基本計画」に従って進められていく。主管は資源エネルギー庁。各分野でどれだけ省エネをするかという目標も「エネルギー基本計画」に記載される。実際の施策は「省エネ法」と呼ばれる法律によって運用される。

 いまのエネルギー政策は2018年に策定された第5次エネルギー基本計画に従って動いている。そしてこの第5次エネルギー基本計画には、「このエネルギー基本計画は地球温暖化対策計画と完全に整合性がある」というような記述がある。つまり「(2013年を基準として)2030年温室効果ガス26%削減」という目標に合致しているということだ。

 また、今年(2021年)はエネルギー基本計画の見直しを行う年になっている(3年ごとの見直し)。

住宅に関連した委員会的なもののここ最近の流れ

■再エネTFの開始(2020年12月1日~)                  管首相の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて開催されたもの。河野行政改革相が座長。

■第5回住宅・建築物をテーマにした再エネTF(2021年2月24日)         前述のように伝説となるであろう前先生のプレゼンがあった。

■あり方検討会の開始(2021年4月19日~)                議事録では「赤羽国交相からの強い指示があって開催した」との記載があるが、実際には2月24日の再エネTFで様々な問題があることがわかったので河野行革相から赤羽国交相に向けて「国交省主導で住宅・建築物分野の議論をしてくれ」という指示があったのだろう。

■第4回あり方検討会(2021年6月3日)                 国交省が「素案(それまでに議論された内容を踏まえたまとめのようなもの)」を提出。しかしそれに批判が殺到し、国交省は予定されていた次回の会合を無期限延期とした。

■第11回住宅・建築物をテーマにした再エネTF(2021年6月28日)         おそらく予定されていなかった会合。冒頭で河野大臣は「あり方検討会も開催されているが、第5回の再エネTFの内容が十分に反映されていない」と発言したことからも推測できるように、第4回のあり方検討会への批判を受け、再度こちらで議論すべきと考えて開催したと思われる。

 つまり簡単に言うと、住宅・建築物分野は「再エネTF→あり方検討会」とバトンタッチされたが、あり方検討会が不十分・不適切だったので「あり方検討会→再エネTF」に差し戻しされたというのが6月28日の段階ということだ。

第4回あり方検討会の素案の問題点

 先に批判殺到と書いた「あり方検討会の素案」はどんなものだったのか。この素案(脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方の素案)をものすごく簡単にまとめると「課題を羅列した」というものだ。いろんな課題が書いてあるが、何よりの問題はその実施スケジュールについて一切書かれていないことにある。スケジュールを決めない計画なんて意味がないし、じゃあ誰がどこでそのスケジュールを決めるのかという話になる。

 また非常に大きな論点のひとつだった太陽光発電の義務化についてはその記述を避けた。

【あり方検討会の素案】


これからどうなる?何を見ればよい?

 第11回再エネTFの最後に河野大臣は「今回だけでは時間が足らないので、7月中に再度開催します」と発言した。なので「続き」が行われるはずだ。その続きの内容として注目すべきポイントを挙げる。

■住宅・建築物の太陽光発電の普及の責任省庁がどこになるのか?    これまでの議論における大きな問題点のひとつが「この責任省庁が決まっていない」ところにあった(このあたりは次回以降で解説する)。河野大臣は第11回再エネTFの最後に「次回までに責任者を決めてこい」と指示した。さてどうなる?

■太陽光発電の義務化が議論されるか?                 先にも書いたように、国交省の素案にはこの記述がなく、これも大きな批判の対象になっていた。「義務化を前向きに検討する」というような結論(方向)になるのか?

■実施スケジュールをどこで決めるかが明確になるか?             これも先に書いたように大きな問題。「今後のあり方検討会で決める」とするのか、「再エネTFで決める」とするのか、それともまたまた曖昧なままに進むのか? もし曖昧なままだったら、成り行きの、ユルい実施スケジュールで進む可能性が高いだろう。

■エネルギー基本計画との整合性はどうなる?               おそらく今後は「7月に実施される再エネTF→あり方検討会」という流れで再議論されて内容が決まっていくのだろうが、エネルギー基本計画も今年度中に見直しが予定されている。本来はいまのエネルギー基本計画のように温暖化対策と整合させるべきだが、あり方検討会の進み具合によってはそうならない可能性もある。そのあたりがどうなっていくのか?

 ぜひ今後の再エネTFとあり方検討会の行方に注目してほしい。

【再エネTF】

【あり方検討会】




 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?