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温室効果ガス46%削減と今後の住宅施策(第5回 2021年7月21日記載)

 昨日は再エネTFから差し戻しされた格好のあり方検討会が開催された。このシリーズの第2回でまとめた「今後の注目点」を見ながら、今回のあり方検討会の内容について簡単にコメントしておこう。なお、このあり方検討会は少なくともあと1回は開催される。

■住宅・建築物の太陽光発電の普及の責任省庁がどこになるのか?

 最後に竹内さんがこの件についてどうなっているかを聞いたが、「協議中」という回答だった。本当は決まっているけど、これは追加開催される予定の再エネTFで言うべきと考えての発言か、実際に協議中なのかはわからない。ただ、太陽光発電については改めて経産省の管轄であることを強調する発言があったところを見ると、経産省になる可能性が高いように感じた。

 詳しくは別稿に譲るが、とくに太陽光発電とZEHとの関係が大きな論点(混乱を招く論点)となって再エネTFもあり方検討会も進んできた。結果的に国交省は「ZEHによる省エネ量のカウントには太陽光発電は含まない」と断言した。ZEH分の太陽光発電は経産省管轄の予定省エネ量の中に含まれるということだ。

 それならそれで、最初から明確にその説明をしておくべきだったのではないか。このことがあり方委員会での大きな混乱を招いている原因になっている。

■太陽光発電の義務化が議論されるか?

 今回のあり方検討会では、前回の「素案」を加筆修正したとりまとめ資料が事務局(国)から提出され、そこには次のような文言が追加された。

『本検討会においても、太陽光発電設備の設置については、その早期の設置義務化や設置義務化の方針の明確化を求める指摘があった一方で、次のような課題が指摘されたことも踏まえ、2050 年において設置が合理的な住宅・建築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となることを目指し、太陽光発電設備設置の促進のための取組を進めること。』

 またその後にはこんな文言も追加された。

『民間の住宅・建築物については、太陽光発電設備の設置を促進するため、次に掲げる取組を行うこと。「ZEH・ZEB、LCCM 住宅等の普及拡大に向けた支援を行うこと」「PPAモデルの定着に向け、先進事例の創出、事例の横展開に取り組むとともに、わかりやすい情報提供に取り組むこと」
「太陽光発電設備の後乗せやメンテナンス・交換に対する新築時からの備えのあり方を検討するとともに、その検討結果について周知普及すること」』

 つまり「義務化」という言葉は追加されたが、具体的な促進案の中には義務化や義務化の検討といった文言は含まれておらず、やはり現時点で経産省は太陽光発電の義務化はやりたくないと考えていて、それがこの資料にも反映されたのだろう。

 こうした弱気(後ろ向き)な姿勢に対して、複数の委員から疑問を呈する発言があった。さて、追加開催されるあり方検討会や再エネTFではどうなるのだろう?

■実施スケジュールをどこで決めるかが明確になるか?

 また今回、事務局側から「対策スケジュールと省エネ量の算出について」という資料が提出された。下はその一部。

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 このようにスケジュールが提示されたのは評価できる。ただし、次のような問題が残る。

■太陽光発電の普及についてのスケジュールがない             これは先にも書いたように、この資料が「住宅・建築物分野」に限定されたものであり(国交省管轄のみ)、太陽光発電(経産省管轄)は対象外であることが理由だろう。しかし、このあり方検討会でも再生可能エネルギーの研究者である諸富さん(京都大)を委員に迎え、太陽光発電についての議論がなされてきた。また、先に紹介したとりまとめ案にも太陽光発電に関する記述がある。なのにその普及スケジュールをここで示さないというのは承服できない。経産省から「住宅・建築物分野での太陽光発電の普及スケジュール」が提出されるべきだ。国交省と経産省、再エネTFとあり方検討会、この2つの狭間に太陽光発電がはまっていて、委員も戸惑い、混乱し、怒りをぶつけるところが定まらない。

■これが「結論」なのか?                        住宅・建築物分野(国交省管轄)に限ったスケジュールとして、これが「結論」なのだろうか? 委員からはスケジュール以前の疑問や質問が多く、このスケジュールに対する疑問や意見までに到達できなかった。また国交省の説明も「これが結論ですよ」というようなニュアンスに感じた。さて、次のあり方検討会でこのスケジュールに対する議論がどこまで行われるのだろうか? なお本題に戻れば、今回こうしたスケジュールが出てきたということは、少なくとも国交省は「あり方検討会でスケジュールも明確にしよう」というスタンスなのだろう。

■エネルギー基本計画との整合性はどうなる?

 まず、先の対策スケジュールと省エネ量の算出について」の資料中に、新たなエネルギー基本計画の策定に関連した委員会で想定されている「住宅・建築物の省エネ量」が紹介され、国交省から、これは「対策スケジュールと省エネ量の算出について」の内容と整合性があるとの発言があった。ただし、またまた太陽光発電の話になるが、諸富さんから「再エネ系やエネルギー政策系の委員会ではさらなる太陽光発電の設置の積み上げが必要という議論になっていて、これを住宅・建築物分野としても受け止め、しっかり議論すべきではないか」というような発言もあった。やはりここでも先に書いた「太陽光発電の狭間問題」が露呈しているように感じる。このあたりも今後のあり方委員会や再エネTFでどう議論されるのか注目したい。



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