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2050住宅部門カーボンニュートラル推考⑤戸建てチームのシナリオ

またまた重い仕事が重なって、前回の投稿から大きな間が空いてしまった。いま住宅部門のカーボンニュートラルに関する議論がどうなっているかは不明だが、とりあえず私としての現時点での結論(戸建てチームが向かうべきシナリオ)をご紹介しておきたい。

国交省のシナリオ

まずは国交省のシナリオ(計画)を再度整理しておこう。なお、以下の数値には国交省から公開されているもの(たとえば新築の戸数割合)と私が国交省の資料等から推定しているものとが混在している。これをいちいち注釈すると読むときにややこしいので割愛している。

【2030年まで】                                  1)戸建て住宅

■新築

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■省エネ改修

戸数:約24万戸/年(現状14万戸/年)                       内容:1ランクアップ(無断熱→S55年レベル、S55年レベル→H4年レベル、H4レベル→BEI1.0)

■新築太陽光

目標:2030年までに新築戸建ての60%に設置(設置容量:平均4.75kW/戸)  設置戸数平均:16.4万戸/年(現状12万戸/年)

2)集合住宅

■新築

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■省エネ改修

無視できるほど少ない想定。

■新築太陽光

計画はない。

3)既存住宅への太陽光発電設置

計画はない(現状:3万戸/年)。

【2030年~2050年】

戸建て、集合、既存住宅への太陽光設置のいずれも計画はない。

戸建てチームのシナリオ

では、前回に書いた2050年住宅部門カーボンニュートラルとなる目標値である「住宅全体の一次エネ消費量:23.5億GJ」を実現するようなシナリオを考えたい。このとき、まずは集合住宅については以下のように想定するが、この内容は「レベルの低いもの」としている。その理由は「集合チームがあまり頑張らなかったとしても、戸建てチームの頑張りで目標達成するためのシナリオ」を考えるのが適切だと考えるからだ。

集合住宅の想定

■新築                               2030年まで→国交省の計画通り                    2030年~2050年→平均でBEI0.7                      ■省エネ改修                           2030年まで→ほとんど実施されない                 2030年~2050年→S55レベル以下の住宅をすべてBEI1.0に(11万戸/年)                        ■新築太陽光:ほとんど設置されない                          ■既存太陽光:ほとんど設置されない

戸建てチームの目標到達シナリオ①(既存太陽光設置重視)

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戸建てチームの目標到達シナリオ②(既存改修重視)

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他にも無限に目標到達シナリオは想定できるが、とりあえず妥当性が高そうな設定を考えて計算し、2つのシナリオを提案してみた。既存改修を頑張れば既存の太陽光設置件数は減るし、逆なら増えるという当たり前の関係になっている。

ということで、とりあえず現時点ですぐにでも行動すべきこととして以下の内容を強調しておきたい。

①新築のBEI(太陽光評価抜き)を0.65にする標準化            ②新築の太陽光発電設置(5kWh程度)を当たり前にする標準化                   ③太陽光発電の設置を含む、省エネ改修に本気で向かう仕組みづくりとスキルアップ          

①と②をまとめて言い換えれば、ほぼ「新築住宅におけるZEHの標準化」となる。そして改修は「OBさんに頼まれたときにやる」という消極姿勢の新築型のつくり手が多い中、こうした標準化に到達するだけに満足せず、省エネ改修にも積極的に向かうようなつくり手を目指してほしい。

またもちろん、同じBEI0.65といっても「快適・健康な温熱環境」が実現されている住宅とそうではない住宅がある。パッシブデザイン(とくに断熱・日射遮蔽・日射熱取得)をしっかり組み込み、適切な暖冷房計画を行うBEI0.65の住宅を実現させることが肝だ。

さらには、新築においてリアルZEHを実現させるつくり手が増えていけば、改修目標や既存太陽光設置目標にも余裕が出てくる。BEI0.5程度を実現することによって無理なくリアルZEHを建てることができるだろう。このBEI0.5という数値も荒唐無稽な数値ではない。快適・健康的な暖冷房計画を行いつつ、この数値を実現するには高いレベルのパッシブデザインが不可欠になる。

すでに部分的にはこのあたりの記事も書いてきたが、改めて今回の内容をベースに、「TEAM2050」のメンバーがいますぐに目指すべき住宅のあり方について次回で述べることにしよう。




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