先生、

人生で唯一幸せだった、と言い切れる小学生時代の恩師のような先生から、当時の同級生が忘れてないよ覚えてるよって伝えてほしいって言ってたよ、っていう旨の1年以上ぶりの連絡が来たので。多分言わないし言えないけれど、先生にしか話せない内容の手紙。

10年前の終業式の日に約束した二十歳の同窓会、ここ何年か行くかどうかずっと迷っています。
まだ二十歳で成人すると思っていた頃の同窓会の約束。北海道に居ようと沖縄に居ようと絶対に行くって何年も何年も楽しみにしていた同窓会。
私たちが二十歳になる年が来て、いよいよ今年だなと思ってどうなるのかなと思いながら受け取った年賀状に「いつか集まれたらいいですね」と書いてあったのを見てどこか安心してました。確定の約束じゃなかったから、近くないいつか、大人の世界の社交辞令のいつかで、行くか行かないかとか考えないで棚上げしてもいいのかなって、楽しみにしてたけどそれよりもっと奥深くでどうしようもなく安心してました。

先生、わたし小学生のとき幸せでした。そっちにいたとき、人生で一番幸せでした。
"自分"が揺らぐこともなくて、幼さ故、未熟故、大人の世界に蔓延る他人からの揶揄するようなジャッジもまだ存在しなかった(子供ゆえの子供なりのジャッジは確かにあったけど、なんていうんだろう、大人の世界のものとは確実に性質が違ったから、)ときを過ごせた唯一の場所だったから。

色々。ほんとに色々あったんです、そっちを離れてから。
何をどこまで話してたか忘れてしまったけれど、先生にはほとんど何にも話してないような気がします。
小学生だった私には、なんだって解決してくれる大人、その中でも特に信頼できる大人に見えてた先生は、私たちと何にも変わらない生きるのに苦しんでる人間なんだなって、大人だからって別に何もそんなに変わらないんだなって気づいたいつかから、苦しいです辛いです悩んでますって言わなくなりました。その前から心配かけたくないなって思って言ってなかったけど、まだその時は聞かれたら答えてただろうなと思います。
色んな事があったけど、自分自身そのものが外的要因で揺らいで内的要因でさらにぐしゃぐしゃに崩れて、みんなみたいに上手く再構築できなくて今になってもまだ倒壊したまんま、そんな10年弱はとてもじゃないけど幸せではなかったな、って思ってます。

みんなに会いたい気持ちはちゃんとあって、でもおんなじくらい会うのが怖いなって会いたくないなって思ってるんです。
今年ずっとそっちに帰りたくて仕方なくて、家もなければ会う人も居ないのに。多分それって、懐かしいだとか好きだった人がそこに今存在してるって知ってるからとかそれもきっとあるけど、たぶん当たり前のように大人になってく周りから逃げ出して子供だった頃に、モラトリアムだったあの頃に戻りたいからなんだと思います。
だから会いたくないなぁって。思っちゃうんですよね。
私たちもう小学生じゃないから、みんな変わってるし話が合わないことだってあるし、クラス全員が幸せな一年だったって疑いもなく信じてたけどほんとに全員そう思ってたのかな、そうじゃない子も居たんじゃないかな、って疑ってしまうそんな目線も持ってる。多分それが大人になるってことでもあるんだと思います。
そうやってみんな大人になってるから、だから多分きっと再会したら大学生らしい、というかその年代らしい話題で盛り上がることにきっとなるんだろうなって。会話の万能デッキだから、恋愛って。
もう共通するコミュニティに属してるわけじゃないからきっとそうなるんだろうなって。

私もうしばらくずっと友達いないんですよね。友達って呼んでもいいであろう人は、友達って思ってくれてるであろう人はそれなりに居るんですけど。
友達って呼んでいいのかな、って思ってるんです、
会えば話すけど遊びに行こうなんて話にはならないみんなのこと。
話すときに頑張って笑わなきゃいけない、
一生嘘をつき続けたままで話さなきゃいけないそんなみんな。
自分の根本的なところで誰のことも信用できない。信じたら生きていけなくなるのはこっちだから。
でも信じられない相手のことって友達って言うのかな、って。言わないよな、って。
そうやって相手は何も悪くないのに勝手に嘘をついて、周りと違う自分が悪いのに大人になっていく周りに失望して苛ついて、そんな自分に一番苛々して自分勝手にある日突然離れていく生活を続けてるから。
でも他にどうしようもなくて。信じられないから本当を話す選択肢なんてないし、信じられたとしたって多数派に話すなって言うのは少数派に話せって言うのと変わらないから。

幼かったあの頃は自分が揺らぐことなんてなかったから、自己開示なんて概念もなくて。
もっと言えば恋愛も男女も全部身近じゃなくてただひとりとひとりだったあの頃って、私にとってはこの上なく幸せだったんですよね、
だから、上書きしたくないなって
唯一の幸せだった思い出くらい。

大人になったみんなには会ってみたいし、成長したみんなと考えてるより上手くやれるかもしれないけど、たぶん無理じゃないかなって、同年代に囲まれた小さな社会で息をしててどこか確信してます。
だからたぶんどこかで一回ひとりで帰って誰にも会わずに懐かしんで、きっともう二度と帰らない気がします。
愛した人のこれからの人生にほとんどない確率でも近づくわけにもいかないし、たぶん楽しかったなって思えない日になっちゃうしとか色々それと、
きっと上書きしたら自分勝手なぐちゃぐちゃな感情で幸せが濁って消えてしまうから。

大丈夫だよそんなことない!で強制的に引き連れていってほしいのかそうしないでほしいのか、って感じですけどわかんないです
わかんないです、何にも。ごめんなさい。
そんなことないって言ってもきっとまた誰も知らないところで誰にも知られず生きたいからの説明を長々としてだから行くわけにはいかない、だけど大人になったみんな見てみたかったな、でもそんなでもないってそうやって永遠に言います。

なにが言いたかったのかな。たぶん、同窓会行かないかもしれないですごめんなさい、でも嫌な思い出とかじゃなくてこの上なく幸せでした、幸せな記憶だから行けません…かな。
ほんとに、ごめんなさい

2024.8.21

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