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baton


 「働き始めた頃は、仕事が嫌で嫌で仕方がなかった。」休みの度に実家に帰って、仕事に行きたくないと言っていたなんて信じられないくらい、今その人は責任ある立場にいて、堂々と仕事をしている。私と同じような気持ちの時があったなんて、考えたこともなかった。
 優しく励ましてくれるような人ではないし、私は正直少し苦手な人だった。私のような性格をあまり好まないと思うし、嫌われているのだとすら思っていた。辛かった時期の自分が、私と重なって思い出されたのかは分からないけれど、他の人には滅多に話さないような過去の苦労話をしてくれたその人は、私に未来の可能性を見せてくれているようだった。私の苦い経験も、同じようにいつか誰かの救いになれたら、その時にはもう少し貴方と気さくに話せるだろうか。

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