【秋ピリカ応募作品】お父さんお母さん、私はゴミなの?
私は紙。
今、チラシと一緒にゴミ箱へ運ばれている。
私はゴミなの?
まだ何も書かれていないのに。
言葉だって、可愛い絵だって、いっぱいいっぱい書けるんだよ?
図形だって、計算だって、たくさんたくさん書けるんだよ?
……それでも私はゴミなの?
私ね、みんなの役に立とうと思って生まれてきたの。
真っ白い私にね、みんなが好きなことを書いて、楽しくなることをたくさん書いて、メッチャ嬉しくなってくれて。
そんで、ずーっと大事にとっておいてくれて。
もしかしたら黄色くなったり、茶色になったりするかもしれないけど……。
それだけみんなに大切にしてもらえて。
それだけみんなの役に立てて……。
そうなりたくて生まれてきたの。
ねぇ、教えて。
私はどしたらゴミじゃなくなるの?
どしたらもっとみんなの役に立てるの?
どしたら、私は……生きていていいの?
ゴミ箱に入る直前、女の子が私を捨てようとしてる人に声をかけた。
「ママ〜、この紙、麻衣にちょうだい」
「いいけど、何に使うの?」
「なーいしょ!」
助けてくれた麻衣ちゃんは、私に笑顔のお母さんを描いてくれた。大きな太陽と一緒に。
お母さんの写真をじっくり見て、たくさん考えながら、すごく時間をかけて、ゆっくり丁寧に描いてくれた。
私の体いっぱいに。
はみ出そうなくらいいっぱいに。
そんで私に可愛いピンクのリボンをしてくれた。
「ママ、いつもありがとう」
今日は母の日なんだね。
麻衣ちゃんは私をお母さんにプレゼントした。
「あら、ありがとう!何が描いてあるのかな?」
ニコニコしている麻衣ちゃん。
「わぁ……」
麻衣ちゃんの絵、すごいでしょ?
いっぱい頑張ったんだよ。
すごく一生懸命描いたんだよ。
「ママを描いてくれたの?こんなに上手に……」
お母さんは潤んだ目をして、麻衣ちゃんをギュッと抱きしめた。
嬉しそうな麻衣ちゃんの顔。
喜んでもらえて良かったね。
「大切にするね。ありがとう」
私からもありがとう。
麻衣ちゃんのおかげで夢が叶ったよ。
私、知ってるよ。
人間が私たちを生んでくれたこと。
人間は私たちのお父さんとお母さんだって。
今、デジタル化が進んでいる。
子供の数も減っている。
どんどん私たちがいらなくなってきていることも知っている。
でもね。
私たちにみんなの未来を書いてみて。
みんなの願いを書いてみて。
思い描く未来の自分を書いてみて。
素敵な文を書いてみて。
嬉しくなる絵を描いてみて。
役立つ言葉を書いてみて。
それをそばに置いてみて。
誰かにそれを贈ってみて。
それがみんなを励ます力になるんだよ。
明日の光になるんだよ。
これからの道標になるんだよ。
私はそう信じてる。
ずっと昔から一緒にいた、お父さんとお母さん。
そばにいるよ。これからも。
一緒に未来が見たいから。
あなたの歴史を刻みたいから。
(1182文字)
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