【毎週ショートショートnote】黒幕甲子園
我が校伝統の『会長甲子園』が始まる。
生徒会長をトーナメントで決めるもので、1回戦はクラス代表選だ。
だが会長候補は傀儡に過ぎない。必ず裏にドンがいる。
だから陰では『黒幕甲子園』と呼ばれている。
候補者が会長になることで誰が甘い蜜を吸えるのか。
黒幕達の熱い夏が始まる。
俺が立てた候補者は、成績も運動も中の下。特別取り柄もない奴。
ここまで来るのに長い月日を費やした。
ボランティア、細かな心遣い、鋭い発言。
『優しくて頼りになるヤツ』を作り上げた。
シナリオは完璧だ。
1回戦の相手はクラス1の秀才。
安易な人選だ。黒幕のレベルが知れる。
俺が施した事前の根回しを考えれば楽勝だ。
担任が教壇に登る。
開幕戦の始球式といったところか。
ニヤリ。
俺の右口角が上がる。
みんなに紙が配られた。
俺達の夏は終わった……。
(409文字)
終
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