【500字小説】鬼灯がはじけるとき
8月13日のことだった。
盆棚飾りに鬼灯を忘れたことに気付いた母は、夜になってから俺に鬼灯を取って来るように言った。
別に構わない。
しかし鬼灯は先祖を迎える際の目印のはず。迎え火も終わった今になって、飾り始めるのも滑稽な話だ。
そんなことを考えながら、庭先にある鬼灯を枝からプチンと離した。
辺りが橙色に包まれる。
誰かが立っていた。
藍染の浴衣を着た細身の若い女性だった。黒髪が襟元で束ね編まれている。
俺を見て儚げに微笑む。
時が止まった気がした。
あれから5年。
お盆の初日に鬼灯を摘むと現れる彼女。
この世の人ではないかもしれない。
でもそんなことは関係ない。
ただ純粋に会いたかった。
今年も庭先の鬼灯を枝からプチン。
辺りを橙色が支配する。
年追うごとに薄れゆく君。
住む世界が違うことは知っている。
叶わぬ思いということも。
でもこの気持ちを伝えたい。
5年抱えたこの気持ち。
君の残り火が消える前に。
「俺、君のことが……」
鬼灯がはじけた。
君の微笑みと共に。
俺の心と共に。
この素敵な短歌をモチーフに書かせて頂きました。拙い文章ですが💦
お盆ということもあって、こんなストーリーが思いついたのかな?と思います。
ちょっと違ったラブストーリーですいません💧
どんな結末になったのかは皆様のご想像にお任せ!ということで😊
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