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知らない間にすり込まれていた人種の固定概念について。

ブロードウェイ付近を歩いていると、ミュージカルの宣伝広告が次から次へと目に飛び込んでくる。ニューヨークへ来たばかりの頃、そのうちのひとつに目が留まった。

広告はオペラ座の怪人。今年で34周年を迎えたブロードウェイで一番のロングラン作品だ。ミュージカルのワンシーンを切り取ったであろう写真にはメインキャラクターの怪人とクリスティーヌの姿が写っている。

怪人とクリスティーヌ

ここでわたしの頭に一番最初に浮かんだ言葉は、
「クリスティーヌ、ダークスキンの女優さんが演じるのか、素敵だな!」だった。

そして次の瞬間、「あれ、今、無意識にクリスティーヌがライトスキンという前提で考えていた…?」と少し心がモヤっとした。

はたまたそれから何週間か経ち、同じようなことを再び考えさせられる時があった。

ハリーポッターと呪いの子をブロードウェイで観たときに、ハーマイオニーと彼女の子どもをダークスキンの女優さんたちが演じていた。事前に下調べしていたらあらかじめ知っている状態で見ることになっていたかもしれないが、簡単なあらすじしか予習していなかったわたしにとっては、劇を見ていく中で知ることとなる。

左からロン、ハーマイオニー、彼らの子どものローズ

まただ、どこかハーマイオニーはライトスキンという前提で考えている自分がいる。

なぜクリスティーヌやハーマイオニーがライトスキンと思っていたのだろう…と考えた結果、映画の影響を受けていることに気づいた。
映画オペラ座の怪人(2004年)ではEmmy Rossumがクリスティーヌを、
ハリーポッターシリーズではEmma Watsonがハーマイオニーを演じている。
どちらも女優さんも明るい肌だ。

今回の場合は映画だったが、自分が以前に見たものから受けたイメージというのは無意識にすり込まれているのかもしれない。

人種差別なんてしたくないのに、無意識にそんなことがふと頭をよぎった自分に少しがっかりしたし、恥ずかしくなった。知らず知らずのうちに自分の中で人種に対して勝手なイメージが出来上がっているのかもしれない。


この2つのミュージカルの配役についてはアメリカ国内でも大きな話題だったらしい。

オペラ座の怪人でダークスキンの女優さん(Emilie Kouatchou)がクリスティーヌを演じたのは去年が初めてであり、フルタイムのクリスティーヌ役として演じるのは今年が初だそうだ。
近年ブロードウェイでは様々な人種を配役する傾向が見られるそうだが、やはり主役級となるとまだまだ固定概念が拭えていない部分がある様子。


ハリーポッターと呪いの子において、ハーマイオニーと彼女の子どもの配役に関しても、ネットやSNSに書き込みが殺到したようで、ハリーポッターシリーズの作者、JK Rowlingはこれに対し"人種差別主義者ばかり"とコメントしている。


アメリカに住んでいると人種というのは本当にデリケートな話題で、だからこそそれについて話し合ったり意見を言ったりする時にはかなり神経を使うし言葉も慎重に選ぶ。わたしの語彙力が足りず誤解を招くのは嫌なのでできる限り避けているのも事実だ。(よほどのことがない限り話題に上がらないということもあるが。)

自分の考え方や固定概念に疑問を投げかけ、日頃から意識的に多方面から考えるようにしていたつもりだったが、まだまだ足りなかったらしい。
この気づきを大事に、これからも人種という問題について自分なりに向き合っていきたい。

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