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農産物卸売市場調査データ分析②~市場規模その2~

 市場規模のデータの分析を続けます。ここでは,月間の市場規模データを用いて最大の月の値に対する最小の月の値の比(最小月/最大月)を指標とします。需要に対して供給が少なくなれば,単価は上昇し多くなれば下降します。この関係を図に表すと下図のようになり,数式で書くと,y=D/x(y=供給量 x=単価 D=一定の数)なります。Dは市場規模(需要)を表していて,もしも図のような関係にピタリと当てはまるのであればDは常に一定なので,最小の月と最大の月はイコールとなり,(最小の月/最大の月)の指標は1となります。

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 ざっくりと言ってしまえば,指標が1に近ければ,上図のような形となり市場への供給量がきちんと反映されて価格が上下します。指標が1から離れている場合は需要と供給のバランスが崩れ,非常な高値となったり安値となったりしています。
 
① 指標の比較 
 各品目の(最小の月/最大の月)の指標は下図です。多くの品目は0.7~0.4程度です。値の小さい品目は季節性がとても強いです。「たけのこ」,「スイートコーン」,「そらまめ」,「えだまめ」,「ふき」,「実エンドウ」は供給が特定の季節にほぼ限られています。「しゅんぎく」は冬に鍋物として使われることが多いなど需要との関係性もありますが,この値が小さい品目は,供給量の少ない季節があるということなので市場規模拡大の余地があると言えるでしょう。

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② 10年前との比較
 10年間でこの指標はどのように変化したでしょうか。2008~2010年の3年間の平均値に対する2019年の比率が下図になります。この数値が1.0以上ならば,最大の月と最小の月の差が小さくなっていて,季節性が改善されていることを示しています。半数以の品目で1.0を超えています。これは,栽培技術の向上や流通・保存技術の向上による産地リレーの改善などにより供給量の変動が小さくなっていることが影響していると考えられます。

 一方で①で取り上げたこの指標が小さい品目(「スイートコーン」,「たけのこ」など季節性が強い品目)は10年前よりもさらに季節性が強くなっています。ブランド化し特定の時期に集中して生産することで,希少性を高める戦略を取った場合このような傾向になります。

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③ 考察
 グラフの横軸に(最小の月/最大の月)の指標,縦軸に10年前に対する比率をとったものが下図で,点の大きさは市場規模です。右上に位置する品目(グループA)は,最大月と最小月の差が小さく,しかもここ10年間で季節性の改善が進んでいて市場は安定してきていると言えるでしょう。市場規模の大きい品目が(グループA)に多いです。

一方(グループB)は,最大月と最小月の差が大きくはない(0.5以上)ですが、10年間で季節性は強くなっていて何か特殊な要因があるかも知れません。

 グループCは最大月と最小月の差が大きく,10年前とその値の変化が小さいため,出遅れている品目とも言えると思います。
 グループDはもともと季節性が強いですが,10年前から季節性がより強くなっています。

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