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気象条件と農産物市場はどのようにつながっているか③~夏が旬の野菜~

夏が旬の野菜について,平均気象データとの相関関係を見ていきます。


 下表は夏が旬の品目です。春に比べるとかなり数は少なくなっていますが,「えだまめ」,「スイートコーン」をはじめとして夏のイメージが強い品目が並んでいます。「レタス」については,植物体としては夏が生育に適した時期とは言いにくいですが,夏季に高地の冷涼な気候を利用した栽培が主となっています。ということから,各品目ごとに詳細な分析をするときには生産地がどこかということも見ていく必要があります。

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① 気温


 気温の偏差については下図です。平年よりも低い月は少なく,特に近年は平年よりもかなり高くなる傾向が続いていて,最近の夏は暑いという印象は間違いではありません。

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 市場データとの相関分析結果が下表です。「スイートコーン」,「えだまめ」は気温が高くなると流通量が増えます。通常は流通量が増えると販売単価は下落しますが,「スイートコーン」「えだまめ」は下落していません。この2品目は特に夏のイメージが強く,流通量のほとんどもこの時期に限られています。夏らしい気候であるほど,需要が高まる側面があるのではないでしょうか。

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② 雨量


 雨量の平年比については下図です。年,月によって変動が大きくなっていて,平年の約半分から1.5倍以上の間で変動しています。

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 市場データとの相関分析結果は気温と全く逆になっていて,雨量が多いほど流通量が減少する品目ではすべて販売単価は上昇しています。販売単価が上昇するということは需要が多くあるということを表しています。夏季が旬の品目には根強い需要があり,販売単価も下落しにくいということです。「しょうが」については,気温,雨量とは関係ないとの結果になりました。これは他の品目と比べて地中で生育することや,栽培期間の長さが影響していると考えられます。

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③ 日照


 日照の平年比については下図です。気温と同様に近年は増加傾向にあります。一方で雨量は顕著な上昇傾向ではないことから,晴れの日は多くなり平均気温も上昇しているが,集中的豪雨的な雨の回数が増えており,降水量自体はあまり変わっていないということだと考えられます。

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 市場データとの相関分析結果は下表です。流通量減少する品目のほとんどで販売単価が下落しています。雨量の分析でも記したように流通量の減少は販売単価の上昇につながりやすいのですが,逆の結果になっています。これは,日照が長くなることが品質低下に影響している可能性があります。

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④ まとめ


 夏が旬の品目はこの時期の生育に適しています。他の品目が少なくなる夏はライバルが少なく,販売単価の下落は比較的抑えられています。ただし,日照は販売単価に与える影響が大きいため,長期予報や週間天気などをチェックしていくことが重要です。
 夏が旬の品目の中では「スイートコーン」,「えだまめ」が気象条件による販売単価の下落が少なくおすすめです。


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