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リーフレタス栽培気象条件の分析

 畑で計測した温度データを使って,野菜の生産状況を分析してみたいと思います。今回の対象野菜はリーフレタスです。レッド系、グリーン系,ロメインレタスの3品種を作ってみています。リーフレタスは栽培周期が短く,栽培適温もある程度広いことから年に複数回作付け可能で,幅広い気象条件のデータが取れるのでこのような分析をするのに適した品目です。いずれもセルトレイに播種し,育苗したものを畑に定植しています。
 

 野菜の生育状況と関係のある気象指指標として,積算気温があります。これは,1日の平均気温を栽培期間の間足し合わせたものです。平均気温10℃の日が30日間続けば,積算気温は10℃×30日で300℃になります。積算気温は畑に定植した日から収穫日前日までの値を用いました。1株あたりの重さは,同一の日に収穫した株の重さの平均です。
 積算気温を横軸,縦軸には1株あたりの重さを取ってグラフにプロットしてどのような関係があるか見ていきます。赤い直線は回帰式と呼ばれるもので,積算気温と株重に直線的な関係があるとした場合の数式を表しています。

 ロメインレタスの積算気温と株重の関係は下図です。積算気温が増加するほど株重も増加する関係となっています。

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 グリーン系リーフレタスの積算気温と株重の関係は下図です。ロメインレタスと比べてばらつきが大きくなっていますが,おおむね積算気温が増加で株重が増加する関係があることが分かります。

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 レッド系リーフレタスの積算気温と株重との関係は下図です。他の2つと異なり積算気温増加で株重増加となっていなく,回帰式はむしろ積算気温増で,株重は減少する関係となってしまっています。

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 レタスは冷涼な気候を好むので,気温が高いと生育に悪影響を及ぼすと考えられます。そこで,基準温度以上の気温は株重の増加に寄与しないとして考えます。つまり基準温度以上の場合は気温をゼロとして日平均気温を計算しました。したがって基準温度以上の気温が観測された日は平均気温が実際よりも低くなります。

 基準温度を24℃とした場合のレッド系の積算気温と株重の関係が下図です。このようにすると他の品種と同様に増加と増加の関係になりました。高温域をカットすることでようやく他の種類のリーフレタスと同様の関係性となることから,レッド系リーフレタスは高温の影響を受けやすいことが分かります。ちなみに回帰式が増加-増加の関係になる(相関係数がプラス)のは基準温度が28℃以下の場合で,24℃とすると目視でも関係性がなんとなく分かるようになりました。

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 ロメインでレッド系と同様に基準温度を設定(28℃)した関係図が下図です。関係の形状はほとんど変わっていません。ただし,関係の強さを表す相関係数は0.73→0.77と少し増加しました。

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 グリーン系の基準温度を28℃とした関係図が下図です。こちらも関係の形状はあまり変わりませんでした。こちらはロメインと比べてばらつきが大きいです。図中色別して示したところは同一の栽培期間です。気象条件以外にも定植時の苗の状況や肥料の条件等に差があるのかも知れません。この時の栽培条件を比較することによって,どのような栽培条件が良かったのか(逆に悪かったのか)を検討することができます。

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