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春は少しせっかちになっている

近年春の訪れが早く感じます。僕はスキーを趣味としているので大変困っています。よく行く広島県のスキー場は3月上旬くらいでクローズしてしまいます。10年くらい前は3月に入っても大雪が降って,3月下旬まで出かけた記憶もあるのですが・・。

とは言え我々人間はご都合主義ですから,地球が温暖化しているという情報を耳にして,勝手に印象を変えているだけかもしれません。
そこで植物に聞いてみましょう。植物は動くことができませんし,嘘はつきません。

春の訪れる植物といえばなんといっても梅と桜でしょう。この2つは気象庁が現在でも開花日の観測を続けています。梅と桜の生物気象観測については,以前も記事にしました。

気象庁が開花日を観測している地点において,過去最も早く開花した年(観測史上最早というやつです)の分布を見てみましょう。

下図が梅です。

梅開花最早日

最近やや増えていますが,30年以上前の記録も結構残っていてものすごく早くなっているという感じではありません。

一方,下図は桜です。

桜開花最早日

圧倒的に近年です。というか去年です。年々更新されています。30年以上前の記録が残るのは石垣島のみです。

梅と桜とでは開花時期が違います。梅の開花前線は1月からスタートしますが桜は3月です。ここに差がありそうなので,この時期の気温の平年値を比べてみたいと思います。

平年値は過去30年の平均値ですが,2021年に更新されたことは,以前の記事でも触れました。

更新前(1981年~2010年)の平年値と現在(1991年~2020年)の各月のアメダス観測点における平均値を比較するといずれも上昇しており,1月は+0.3℃,2月は+0.3℃,3月は+0.4℃でした。ちなみに年間平均は+0.3℃です。

梅と桜の開花メカニズムにも差はあるとは思いますが,1月,2月に比べて3月の気温上昇幅が大きくなっていることが,梅と桜の開花時期の前進差の一因になっていると言えるでしょう。

34年前,桜の花が散る中で緊張と期待を抱きながら小学校の入学式に出たことを覚えています。それが今では桜は卒業式のイメージの方が強くなりました。桜をモチーフにした歌もそんな感じで,「お別れ。今までありがとう」的な印象が強いです。

平均気温0.1℃の差は人間は直接感じないかも知れませんが,植物は確実に感じてその振る舞いを変えます。そして人間は植物の変化を通じて知り,生活のサイクルをそれに合わせていきます。

春は少しせっかちになってきています。大丈夫,みんなあなたを待っているからもう少し遅く来てもいいんだよ。

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