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ミニトマト栽培気象条件の分析

 前回にブロッコリーと気温の関係を分析してから,だいぶ日が経ってしまいましたが,今回はミニトマトについて分析してみました。


 果菜類は葉菜類と違い,一つの株から多数の果実を収穫します。ですから,リーフレタスやブロッコリーのように「製造日数=株の一生」とはなりません。その日収穫した物がどのような気象条件のもと生育してきたかを見たいのですが,明確な区切りはできませんから,ある一定の条件を持って決めるしかありません。
 また収穫量が気象条件によってどのように変化しているかを知りたいのですが,複数年にわたるデータで,作付け面積(株数)が違うことから単純に重量だけでは比較ができませんでした。そこで,「収量率」という指標を導入しました。これはその日の収穫量を1作期あたりの収穫量合計で割った値(×100で%化)で,収量合計に対してその日の収穫量が何%を占めるかを示します。

「収量率(%)」=「その日の収穫量(㎏)」÷「1作期収穫量合計(㎏)」 ×100 

 ある年(2019.年)の,日最高気温,日最低気温,平均気温と収量率を下図に示します。

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 上のグラフの赤が最高気温,青が最低気温,下のグラフの黒が平均気温,赤い点が収量率です。収量率はだんだん増えて行き,ピークを迎えたあと急激に低下しています。温度との関係は気温が高くなれば収量も増えていきそうなことは何となくは分かりますが,明確な温度条件は分かりません。


 気象条件との関係をさらに調べるために,その日取れた果実が成長してきた期間を決めてあげます。ミニトマトの開花から収穫できる間の積算温度(日平均気温)の合計は800℃とされているので,収穫日からさかのぼって積算気温が800℃となった日を開花日と設定します。この条件によって決めた開花日~収穫日を栽培期間として,その間の気象条件と比べてみます。

 栽培期間の平均温度と収量率のグラフが下図です。

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 23℃くらいから収穫が始まり,気温が上がれば収穫量も増えていきます。しかし,気温が上がりすぎると収穫量が低下します。これは過度な高温には弱いトマトの特性と合致しています。

 最低・最高気温で見ていくと,さらに明確になってきます。下図は最低気温と収量率の関係です。

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 最低気温の上昇とともに収穫量が増えて行く様子が平均気温よりも明確に分かります。収穫できるのは17℃を超えたくらいから,20℃を超えてくると安定した収穫量になります。


下図は最高気温と収量率の関係です。32.5℃を超えるとガクッと収穫量が下がることが分かります。

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 各品目特有の積算気温を用いることで,1株からたくさん収穫する果菜類でも栽培期間を特定できます。当日の温度ではなく,生育期間中の温度なので算定が少し面倒ですが,収穫開始時期や終了時期の推定にも使えそうです。

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