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農産物卸売市場調査データ分析⑦~野菜パワーランキング~

 ここまでいくつかの視点で農産物市場のデータを見てきましたが,結局どの品目がいいの?悪いの?をまとめて勢いのある農産物をランキングにしてみました。

 10年前と比較(2008年~2010年平均に対する2019年の比率)して各指標「市場規模」「市場規模の最小月と最大月の比率」,「流通量」,「単価」が良い数値(値が大きい)順に並べて1位から順に高得点を付けます(43品目あるので,1位は43点です)。その得点のランキングが下の表です(その他の菜類除く)。「ブロッコリー」,「ピーマン」がその下をかなり離してトップ2となっています。作付けする品目を検討する際はまずはこの2品目を取り上げてみてはいかかでしょうか。

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 上位の品目に共通しているのは市場規模の分析でも触れましたが,調理が簡単で食べやすいということです。農産物市場のトレンドは確実に手軽さに向いています。そして,「かんしょ」,「スイートコーン」に代表されるようなブランド化ももう一つの方向性です。
 中位クラスで気になるのは,「かぼちゃ」と「こまつな」です。「かぼちゃ」は重たく,調理も面倒な中で思ったよりも上位に位置しているという印象です。「こまつな」は市場規模,流通量が大きく伸びているのにその他の項目が下位で,他の品目には見られない特徴です。
 下位では,「ほうれんそう」,「ねぎ」です。どちらも食卓や飲食店でよく見るメジャーな品目だと思いますが下位に沈んでしまっています。その原因は何でしょうか。

 各品目の特徴をもっとわかりやすくするために,主成分分析をしてみました。主成分分析は,多数の変数(指標)がある時に,次元を縮減した新しい軸を作ってデータの傾向を見ることができます。次元を2次元まで縮減すれば,平面グラフで簡単に見ることができるので視覚的に解釈するときに便利な手法です。
 主成分分析に使用したデータは,順位付けと同様に10年前比で,「市場規模」「市場規模の最小月と最大月の比率」,「単価」,「反収」です。
 結果は下図です。解釈が難しい面もありますが,縦軸は経済面の伸び,横軸は栽培(流通)技術の向上として各領域を以下のように分けてみたいと思います。

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① 市場規模が拡大,技術も向上していて単価も上昇傾向 「好調品目群」
② 市場規模・単価は上昇。特定季節に生産が集中 「ブランド化指向群」
③ 市場規模は減少しているが,単価減少が限定的 「ニッチ市場狙い群」
④ 技術は向上しいつでも手に入るようになったが市場規模・単価とも減少 「差別化必要群」

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①は安定した収益が見込める品目だと言えるでしょう。②はブランド化して大きな収益を狙うことが可能だと言えます。③は少ない需要を取り上げることができれば独占的に供給することも可能です。④は現状では苦しいので,6次化を図るなどして高付加価値化して収益を上げる工夫が必要になってきます。

 ここまで7回にわたり,農産物市場のデータの分析を行ってきました。各分析で行っているように,データの順番を大きい順などで並べ替えてみるだけでも何かしらの発見ができるかもしれません。データの取り扱いが不慣れという方もまずは並べ替えからはじめてみてはいかがでしょうか。
 今回は日本全国のデータを用いたので平均的な結果となっていると思います。各地方のデータを用いることで地域の特色がより出てくるのではないかと興味を持っています。時間ができたらやってみようかな、、とも思っています。

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