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気象条件と農産物市場はどのようにつながっているか④~秋が旬の野菜~

秋が旬の野菜について,平均気象データとの相関関係を見ていきます。


 下表は秋が旬の品目です。季節ごとでは最も旬となる品目数が少ないです。「だいこん」,「にんじん」根菜類や「かぼちゃ」,「はくさい」と重量が大きい品目が中心です。これらの品目は比較的栽培しやすいと見られており,軽量で葉物ですが「こまつな」も栽培は容易と見られる品目の一つです。

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① 気温


 気温偏差は下図です。各年ごとの変動は大きくなっていますが,同一年内では同じ傾向になっている(高い時には8,9,10月ともに高い)ように見て取れます。

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 市場データとの相関分析結果は下表で,気温が上昇すると流通量が上昇する品目はなく,ほとんどの品目で流通量が下がり,販売単価は上昇します。基本的には気温が下がっていく時期ですが残暑が厳しい場合は,生育に悪影響を及ぼします。

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② 雨量


 雨量の平年比は下図です。変動が非常に大きく,平年の半分以下から2倍以上まで変動しています。秋は基本的には安定した気候となる時期ですが,台風や秋雨前線による集中豪雨も発生するため,その回数によって雨量には大きな差が出てきます。

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 市場データとの相関分析結果は下表です。雨量と流通量に関係のある品目はほとんどありません。そして全ての品目で雨量が増えると,販売単価も上昇します。秋が旬の品目は,この時期の苛酷な気象条件に順応しており雨量の増減はものともしていないということでしょうか。一方野菜市場全体としては,雨量が増えると流通量が減り販売単価の相場が上がりやすい状況になり,秋が旬の品目の販売単価も上昇していきます。

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③ 日照


 日照の平年比は下図です。雨量よりも変動幅は小さいですが,同一年内でも変動が大きく(今月日照が長くても翌月は少なくなったりする)なっています。

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 市場データとの相関分析結果は下表です。日照については,影響が分かれました。日照が長くなることで販売単価が上昇する品目はありません。夏季と同様に日照が長いことは品質低下に悪影響となると考えられます。

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④ まとめ


 気温はまだ高く,雨量も豪雨の可能性もあり,日照時間も安定しない時期で,野菜の栽培には苛酷な気象条件です。その中で「旬」を迎えるということは,「強さ」を持った品目だと言えるでしょう。苛酷な気象条件の中でも予報をチェックして被害を最小限に抑えることができれば,品質も落とすことなく市場でより有利な価格で販売することが可能となります。
 ちなみに「かんしょ」は,流通量はどの気象条件に対しても関係がないとの分析結果となりました。さすがです。さつまいもは飢饉のときでも栽培できたということがデータでも証明されました。



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