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シラフの状態で『ホスト万葉集』を読みました

『ホスト万葉集』を読みました。

歌舞伎町のホストが詠んだ短歌がまとめられた歌集です。
ホストの経営者の方が、ホストの方々との歌会を定期的に開いて、そこで詠まれた短歌を集めたものです。もちろん普段から短歌を詠む人はほとんどいなかったと思いますが、選者には、あの俵万智さんもいます。

もともと歌は、どの時代も、色恋のために詠まれてきたことがあるので、ホストと歌の相性はいいんではないかという目論見もあったそうですが、私は、色恋より、夜の街で体験したこと、感じたことあること、それをホストが詠むから、違う説得力が出ている歌が気になりました。店の仕組みや金銭感覚といったホストの世界のことはわからないので、おもしろさがわからない歌もちょいちょいありますが、ちょっとした用語の解説もついてるので、ざっくり理解はできます。

やっぱり歌人じゃないので、もっと響く言葉もあるだろうとか、言葉が寝られてないんじゃないの、と感じることもありますが、例えば、

内勤のなにが一番大変か酔ったホストの吐くゲロと愚痴   朋夜

(「泣かないで ――3年目」)

歌を詠む人の言葉ではなく、夜の街で働く人のバックヤードで出てきたそのままの言葉ですよね。歌人が「大変か」なんて直接的に言わないでしょう。でも売れないホストが言うから、大変なんだと思える。

うまい表現を狙った歌より、やはりストレートなものが残りました。

気になった歌

■「歌舞伎」に来た

眠らない街と言われる歌舞伎町 なのに寝ている 道路に人が   ゆきや

■初指名 ――1年目

テーブルのグラスなみなみ注がれる
   飲むは地獄だ飲まぬも地獄か   亜樹

秋かおる夜風にふかれゲロまみれタクシー乗れず朝日をあびる

今日もまた売れない僕は酔いつぶれ
   思い出すのは母の泣き顔   亜樹

■姫と一緒に ――2年目

酔った君面倒臭くて嫌いでも会うと口から出る「可愛いね」

面接で酒が強いと言ってしまい手放せなくなるしじみのサプリ

■泣かないで ――3年目

誕生月 嬉しいことも悲しみも
    やってくるのがバースデー月   BaRoN

友人がウチのホストにハマってる大金つかうと少し複雑   MUSASHI

君の来ない夜にトイレで聞いている
   あいつの席のシャンパンコール   手塚マキ

一気飲み飲むも飲まれて飲みきれずそっと傾け流す口の端   霖太郎

■シーソーゲーム ――5年目

飛んでったあの大好きな先輩と
   すれ違うのがここ歌舞伎町   三継大貴

感想

歌の形におさめることを繰り返していけば、色恋についても、酒についても、この場から、いい歌がもっともっと生まれてくるんじゃないかと思いました。自分だったら、こんなところ切り取るかなぁ…と感じる歌もあったので、次は酒を飲みながら、何かにひっかかった歌を眺めてみたいと思います。


いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。