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『つけびの村』事件取材の現場から(ほぼ日の學校)

「ほぼ日の學校」の授業に参加しました。一昨日の参加に続き、二度目です。

本日の授業はこちら。

講座名
ネットのうわさ、現場の“真実” ー 事件取材で見えたもの

講座日時
2021年2月27日(土)10:30〜11:30

イベント概要
『つけびの村 ー噂が5人を殺したのか?』。2013年に、山口県のとある集落で起きた連続殺人事件をたんねんに取材、新聞など大手メディアが追えなかった人間関係の深部にまで迫り、話題を呼んだ作品です。
 
この本の中で大きなテーマとなっているのが、村にはびこっていた「うわさ」。高橋さんが実際に幾度も現場を訪れ、聞き込みをおこなう中で、大小さまざまなうわさが、この事件を取り巻いていることが明らかになっていきます。
 
うわさは、もちろん、事件の起きたこの集落だけではなく、われわれのまわりにも飛び交っています。ご近所で、職場で、学校で、そして、ひとたびスマホを開けば、そこは真偽不明のうわさに満ちあふれたネットの世界……。確かめもしない話題がうわさとなり、フェイクニュースとなり、“真実”として語られる時代。
 
実際に足を使って書いた記事よりも、事実かわからない情報が拡散される今、現場に足を運んで取材するということは、どんな意味を持つのでしょうか? 『つけびの村』著者の高橋ユキさんが、この作品の現地取材をする中で見えてきた「うわさ」と「真実」について、そして、ふだんなかなか聞けない、事件取材の裏側について、じっくり語ってくれます。

講師
高橋ユキさん(傍聴ライター)
1974年生まれ、福岡県出身。2005年、女性4人による裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。以降、殺人事件などの刑事事件を中心に、傍聴ライターとして様々な雑誌、Webメディアに寄稿。著書に『暴走老人 犯罪劇場』(洋泉社)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)など。2019年、note発のルポ『つけびの村』(晶文社)が3万部を超える異例のヒットとなり、「Yahoo!ニュース本屋大賞 ノンフィクション本大賞」にもノミネートされた。

私は仕事で文章を書くことが多いですが、ゼロから調べて書くという機会は多くありません。記事の作成にどれだけ準備や手間がかかっているかという点に興味を持って授業に参加しました。授業の詳細は、今後、「ほぼ日の學校」アプリを通じて視聴できるようになると思うので、そちらに譲ります。

もともと高橋ユキさんは、学生の時にCGの研究をされた後、ゲーム会社に就職されたそうです。その後仕事のつまづきで休職をして、ようやく文字が追えるようになった頃、いろいろ本を読む中で、ノンフィクション、特に未解決事件にはまっていったそうです。

未解決事件の中には、裁判が続いているものがあり、そこから裁判を聞き始めたと言います。やはり最初は、裁判の内容がわからなかったそうですが、たくさんの裁判を傍聴して、裁判の流れを把握していったそうです。裁判では、レコーダーを持ち込むことができないので、現在の「傍聴ライター」の仕事として裁判を傍聴する際には、ひたすらメモを取るそうです。

裁判に関わる人は、メモを取る人に気を遣ってゆっくりしゃべってくれるわけではありません。何度も登場する用語は、略語にして書くスピードを落とさないように工夫されたり、文具にもこだわっているとのことでした。筆圧をかけるとそれだけ書くスピードが遅くなるので、軽く、長く、書けるものを選ぶそうです。本人は、たんたんと話されていましたが、書くのもメモを見返すのも大変ですよね、きっと。高橋ユキさんのプロフィールを見ると、裁判傍聴グループを結成されているとのこと。このグループも、書いたメモの内容などを確認し合うための工夫かもしれません。

取ったメモのほとんどは、記事にする際には捨ててしまうものでしょう。記事を書くことに限りませんが、好きなこと(未解決事件)と、準備(裁判の傍聴、取材)それ自体も好きでないと続けていけないと感じました。本日の授業の参加者から、「取材で嫌な思いをすることで気分が沈んだりしませんか?」という質問に、「気分が沈むと取材ができないので、おいしいものを食べて乗り切る」と回答されていました。ライターになる前の仕事ではできなかったことが、今の好きな仕事ではできるようになっているんですね。

『つけびの村』の取材中、村人の噂の情報集積地であるコープ共済の寄り合いの存在を知った時、「この構図を伝えたい!」と考えたそうです。好きというだけでなく、こうした使命感のような思いも、未解決事件を追う力になっているんですね。

今、私も仕事の中で、すべてではありませんが、これを伝えたいという思いが湧くことがあります。こうした感情は大事にしていきたいと思いました。

授業の参加者から取材対象との接し方などの質問もありましたが、取材の方法は、取材者、記者さんによりまちまちで、高橋ユキさんの場合はこうする、この場ではこうするといった回答でした。高橋ユキさんの本では、そういった普段のノンフィクションには書かれない取材の裏側の細部についても書かれているそうです。『つけびの村』は普段ノンフィクションを読まない読者も多く、そうした読者に足を使った取材、取材の苦労なども楽しんでいただけたようです。

そんな話を聞くと、高橋ユキさんの書かれたものを読みたくなってしまいますよね。とりあえず高橋ユキさんのnoteはフォローしましたよ。

今回は、一時間という短い時間でしたが、もう少し詳しく仕事への取り組み方など伺ってみたいと思いました。今回、授業の中で集められた質問は、Twitterで回答いただけるそうなので、そちらも楽しみです。準備いただいたほぼ日の學校の皆さま、高橋ユキさん、ありがとうございました。


『つけびの村』は、以下でも読めますので、興味ある方はご覧ください。


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