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今月もひとり歌会(2022年2月)

月が終わると、毎日詠んだ歌を整理する「ひとり歌会」
誰のフィードバックも得ず、詠んだ歌を見ながら一人、仕事や生活をふりかえる。

近況

女性と付き合うことになった。世の中が明るく見える。
お互いにもう大人だ。将来どうする? みたいな話も付き合い出してすぐに始めた。息子とのこと、パートナーのこと、それぞれの一番は、それぞれにとって一番ではないことが多い。何を大事にするのか、毎日考えてしまう。それでも、やはり世界が明るく見える。

毎食ではないが、ほぼ毎日、自炊している。もう一カ月以上は続いたか。
将来は、彼女のために、料理を毎日作れるといいな、なんて、これまでの人生で1mmも考えたことがないことを考えたりしている。

歌について

去年、気になる短歌を声に出して10回読む、ということを習慣づけようと考えた。歌を体に入れる作業。去年やめてしまった後、1月に再開したはずだが、2月に入ってまた中断。一日一首でいいことにしていたのに、欲張って二首読んでみたりしてたせいだ。一首でいい。今は何となくでいい。歌を体に入れていこう。3年後、5年後、いいなと思う短歌が詠めるように。

今月の歌(35首)

2/1火
コミックの中の巨人に会いに行く 酩酊し世界の境界ぼやけ
2/2水
想い人のプロフィールに触れ舞い上がる 恋する気持ちをずっとさかのぼる
2/3木
恵方巻が三角に積まれる棚の横 今晩炒める野菜を睨む
2/4金
レシピ通り作ったはずが鍋に池 手順を見ても分からず、池のまま
2/5土
新品のホットカーペットをおろす だから息子は食べこぼす すぐ
片付けは息子を迎え入れるからでなく、好きな女性を待っているから

2/6日
意中の君と温泉施設で過ごす午後、帰りに気づく今日は風呂の日
三年も閉館をするから隙間時間、二人駆け込む江戸東京博物館

2/7月
お付き合いすると決まったから今日の指は甘い言葉だけしか打たぬ
お付き合いすると決まった今日からは指は甘い言葉だけ打つ
(「塔」短歌会3/20締切投稿③)
2/8火
ワクチンの接種のあとは腕重く 炒める鍋ときんぴらが重い
2/9水
昔住んだ家を横目に橋渡る 満腹なれど胸に冷たい風
しいたけを全部味わいたくなって「石突 しいたけ レシピ」で検索

2/10木
食材がまだまだあるから家にいる テレビで眺める近所に積もる雪
2/11金
道端の凍った雪を蹴転がす四十年前の少年がいる
(「塔」短歌会3/20締切投稿①)
スーパーに立派なアスパラ並びおる ピーラーはない 買うか逡巡
「塔」着の知らせをSNSで見る 郵便受けを四度見に行く
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑩)
2/12土
土地の神様に挨拶しようとする息子 賽銭箱にはエロ本刺さる
休日に仕事をやっつけようという魂胆 企みは今日も企みのまま

2/13日
寒き日も行列店に人並ぶ 常連は並ぶホクホク顔で
→寒き日も行列店に人は来る 常連は並ぶホクホク顔で
(「塔」短歌会3/20締切投稿②)
2/14月
将来の伴侶がくれた立派なチョコを一段高く置いて手を合わせ
2/15火
自炊をはじめ一カ月ほど経ったころ 料理番組という楽しみを得る
自炊をはじめ一カ月ほど経ったころ 料理番組が楽しみになる
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑤)
2/16水
会えなくて通話だけでもいいからと、つなげば話すことなどなくて
会えなくて通話だけでもいいからとつないで無言の時間が流る
(「塔」短歌会3/20締切投稿④)
2/17木
20年ぶりに会う友だちはあと何分すれば金の無心をするか
二十年ぶりに会う友だちはいつ金の無心の話をするか
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑥)
2/18金
何もしたくない…そう思ってもスーパーで何かを買えば、煮る、焼く、炒める
2/19土
「仕事しよう」と声に出した後リモコンを持って、コーヒー啜る休日
2/20日
寒さのせいにして 何度でも唇を奪う ずっとぬるくやらかい
2/21月
息子のこと、パートナーのこと、将来のこと 倒せぬ正解ばかりがつらい
2/22火
掻きむしる二の腕太もも首背中 滑らかな肌は帰ってこない
追悼の投稿をみて、反応をする人、我は見るだけの人
追悼の投稿をみて、反応をする人、我は泣くだけの人
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑦)
2/23水
天井の監視カメラがまじまじと私の頭皮を見つめておりぬ
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑧)
2/24木
数年間、リアルに会わぬ友人の死の報せをただ嘘だと思う
2/25金
結婚も引っ越しも全部金銭に行き着く 金って最強じゃんか
2/26土
父の部屋も「我が家」と呼んでくれるのは嬉しいけれど、引っ越そうと思う
2/27日
戦争に向かう世相を棚に上げ 力いっぱい「大好き」を言う
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑨)
2/28月
キッチンに立てば心の状態がわかる 作ると思うか否か


いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。