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人類学的アプローチで開くアイデアの生み方・育て方 #ほぼ日の學校

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダー13日目です。

ほぼ日の學校 アドベントカレンダーの期間中、どんな動画を視聴しようかと日々、授業の一覧を眺めています。

そんな中、とても魅力的なタイトルを見つけました。

「アイデアは“観察すること”から 生み出せる!」

アイデアがほしい、でも、特殊な能力もなければ、これという手法も持っていません。

授業紹介

アイデアは“観察すること”から 生み出せる!
大川内直子 (文化人類学者/株式会社アイデアファンド代表取締役)

今回の講師である大川内直子さんは、文化人類学者。そして、人類学の手法を使って、企業が必要とする情報を調査する会社を経営しています。そんな大川内さんは、これからの時代には「アイデア」が大切だと考え『アイデア資本主義』という本を上梓しました。この講義では、なぜアイデアが必要になるのか? また、誰でもアイデアが生み出せる方法について教えていただきます。

アイデアは“観察すること”から 生み出せる! | 大川内直子 | ほぼ日の學校 (1101.com)

大川内さんの本はこちら(↓)

文化人類学のアプローチ

大川内
具体的に何やってるかというと
文化人類学の考え方や調査方法を
ビジネスの世界に応用する
ということに尽きるんですが
具体的には 文化人類学って
フィールドワークをやって
現地の人たちを観察させてもらって
学びを得ていく学問なんですが

日本のたとえばあるメーカーが
新規事業をやるのであれば
潜在ユーザーの人たちの家に行って
調査をさせてもらう

彼らの生活とか考え方
潜在的に考えてるか考えてないか
考えてないようなことだけど
行動に表れてることって何だろう
ということを調査していって
この人たちが喜ぶものって何ですか?
欲しがり得るサービスって何ですか?
企業の人と一緒に考えていくという
ようなことを日々やっています

さらに具体的には?

大川内
人類学をやってた人が想像する
エスノグラフィーとは違うというか
ちょっとライトというんですかね

行動の背景に何があるかまで
深掘りするよりは
何時何分にこの製品を使いました
という記録だったり
もう少し表面的な どういう行動が
なされたかという記録的なものとして
エスノグラフィーが使われる例は
あったかなと思います

より深く人類学的な考え方に基づいた
エスノグラフィーがなされた例は
まだ少なかったんじゃないかな

司会
文化人類学的なエスノグラフィーとは
どういうものですか?

大川内
その場に行って観察させてもらうと
いうことなんですけど
表面的にこの製品の調査をするとき
何時何分に使って合計1日15回使用
みたいなことではなく
「なんで使わなかったんだろう」
「使うときにこういう姿勢だったのは
どうしてなんだろう」
裏側まで考えていくことが
大きく言うと特徴かなと思います

やったことだけ見るのではなく
やらなかったことを見たり
言ったことを鵜呑みにせず
言ったことと行動との差異を見に行く
「なんで言ったのと違うことをやっているんだろう」とかを見に行って
その背景には認知的 心理的要因が
あるんじゃないかと考えて
そこを深掘りしていくというのが
基本的なスタンスですかね

アイデアが必要なわけ

モノがない時代のあと、大量生産、大量消費になりました。現在では、今では、何でも低価格で手に入るようになっていて、無から有のようなアイデアがどんどん生まれる時代ではなくなっています。じゃ、なんでアイデアが必要なんでしょう? どういうアイデアが必要なんでしょうか?

大川内
「テレビがちょっと薄くなりました」
それで買い替えるかって買い替えない
こんまりさんみたいな物の捨て方や
断捨離みたいなものが重要になって
物を買うよりはむしろ捨てて
スッキリしたい さっぱりしたい
オシャレな暮らしをしたい
物にとらわれない心でいたい
そういう方へ意識が向いている

そんな中でも会社は物をつくって
売っていかないといけない すごい難しい時代
買わずにシェアで済ませたい
むしろ捨てたいという人が多い中で
何をつくればいいかというのは
すごい難しい問題

車がないからつくりましょう
色鉛筆がないからつくりましょう
というふうに
物をつくるとこに直結するのでなく
もっと複雑で
時間的にも広がりのあるアイデアが
必要になってきている
すごくアイデアが重要な時代が
21世紀に入ったぐらいから訪れて
いるのかなと思います

アイデアを生み出すコツ

で、アイデアを生み出すコツのお話です。

司会
アイデアを生み出すコツは
何かありますか?

大川内
アイデアは作ろうと思えば
無限にたぶん作れて
いろんな要素を掛け合わせればいい
だけなんですけど
無限にできちゃったら
無限に評価しないといけないし
めちゃ大変ですよね
ほとんどが「はずれアイデア」
みたいになっちゃう
いいアイデアを生み出す方法が
重要かなと思ってます

大川内
まず人々を観察します
観察するといろんなことが見えてきて
それを頭の中でつなぎ合わせて
こういう現象を説明できる一つの
理論とまでは言わないけど
考え方 ルール
この人たちの行動の裏にあるルールや
思想は何かということに関する
インサイトを得ます
そのインサイトをもとに
スッと何か形にしてあげると
新しいアイデアになるし
それがいいアイデアである確率が
非常に高いと思っています

観察を自分ごとにする、自分の母なら購入するか? 自分の姉なら買うか?でも、自分の身の回りを考えると先入観があって、観察から、洞察を生み出せるか疑問です。人類学では、そもそも他国、他の文化圏に行くから違いに気づけます。ではどうすればいいんでしょうか?

身近なことからインサイトを見つける方法

大川内
自分の社会や身近な人を知るとか
必要なものを考えるのって
けっこう難しいと思います

そのときの私なりの方法
普通 人類学って
他の社会に先入観なしで行くから
新しいことを気づける

自分の社会を見るときは
先入観ありまくりになっちゃうので
まず自分にどういう先入観があるか
全部書き記します

調査に行く前に
今日行く人ってこういう人だよなって
プロフィールとかいただいているので
そこからめちゃくちゃ妄想して
多分こういう喋り方だなとか
こういう仕事してて
こういうことやってるなとか
こういう食事が好きだとか
すごい細かいところまで
ほぼ妄想ですね

いろいろ仮定していって
仮説を作りまくる
それを持った状態で
“同じ日本に住む私の感覚からすると
この人はこういう人に違いない”
という感覚で家にお邪魔する

そうすると けっこう合ってる
でも 違うとこもある
そこがすごい重要で
違うところはなぜ生じたんだろうとか
私の想定が甘かったのかもしれないが
実はこういう考え方の人なんだとか
自分とのズレがすごく分かる
自分とか 自分が想定している
このプロフィールならこういう人
というところのズレを
すごい細かく取っていくと
分かるようになります

観察して見つけたものをどう扱うか気になります。

アイデアの検証方法

私がよくやるのは
いろんな知識を持った人たちを
集めてきて

(略)

社外からもある分野の専門家に
大学とかから来てもらうとかで
ワークショップを何度も行うという
ことをうちではやっています

調査結果自体をみんな まず知ってもらう
それで見方がまずガラッと変わって
「あ そうだったんだ」とかなるけど
そこからアイデアまで
おっしゃるようにちょっと遠い
そこを生み出すためには
こういうことやったらどうだろうと
皆で知識を持ち寄って
いろいろ考えるのがまず一つ

もう一つは当ててみるということ
どういうことかというと
実際に仮にモックアップを作って
使ってみてもらう
自分ももちろん使う
そうすると ちょっとしたズレが見えてくる

「いい感じなんだけどここは使いにくいな」とか
最初から全然違うやつももちろんあります
「これは私は要らないな」とか
サッと言われておしまいになったり

最初から100点満点のアイデアを
目指すんじゃなくて
50点ぐらいのやつができたら
どんどん当ててみて
100点に漸近させるというのが
私たちがやってることですかね

100点を目指すことなく、試して、育てるんですね。

アイデアを出すための環境

そして、大事なお話です。どんな環境でアイデアを出して、育てるか。

私 前にツイートしたやつが
バズったことがあるんですけど
「アイデアを生み出すための環境には4Bというのがあって」
みたいなツイートで

アイデアって 机に座って
「100個出すぞ」とやってると
全然いいの出てこないけど
トイレに行ってふとした瞬間に
いいアイデアが浮かんだり
お風呂入ってるときに
「あれって」と思い出したりする

その4Bは確か
「バスルーム」と「ベッド」と「バー」と
あと何だったっけな
「バス」かな 移動中みたいな
机に向かってない日常のふとした
瞬間に降ってくる何かみたいな
その余地を残しておくことが
非常に重要なので
カリカリしないというのが
実はすごい重要

いいアイデアを生み出したいなって
私も思うし
見てる人も面白いアイデアが
浮かんだらいいなって思うんですけど
そこにむしろ向かい過ぎない
逆説的なんですけど
それを目指さないことのほうが
重要かなと思っています
失敗したら失敗したでいいやっていう
気楽さを持っておくとか
もっと社会も全体的に
寛容になればいいなとは思う

そうですよね。これはネタを考える時もそうですけど、今、頭に目の前の事象をパンパンにしたイメージで、どこに新しい考えを入れ込むのか。余裕をもった生活こそが必要というのはわかる気がします。

まとめ

だいたい以下の流れでしたね。

・勝手に観察対象にしたい人を想像して、妄想して、こういう行動をするんじゃないか? をしっかり考える
・観察をする
・自分の想像と違うこと、違和感をおぼえたことの背景や理由を考える
・見つけたルールと事象、あるいは生まれたアイデアを複数の専門家にぶつける
・アイデアをちょっと試す。アイデアを育てる

何より、アイデアを出すことを楽しむ環境を大事にするんでしたね。

いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。