見出し画像

衣装デザイナー中原幸子さんの衣装の作りこみ、立ち上げ方がすごい #セブンルール

大好きな番組、「セブンルール」の2/7(火)放送回は、衣装デザイナー兼スタイリストの中原幸子さん。

去年話題になった舞台『千と千尋の神隠し』の衣装デザインもこの人だ。

観た時は、うわー、アニメと一緒だ!

と思ったのだけれど、役者さんの体形も違えば、肌の色、髪の色、瞳の色が違うので、役者さんに合わせて、色味や生地の素材を変えるという。

千尋役は、上白石萌音さん、橋本環奈さんのダブルキャストだったが、細かい点を変えている。

上白石萌音さんのほうは、おてんばな印象を受けたので、配膳の時に失敗してそう、という理由から、衣装に染みをつけたという。また上白石萌音さんは稽古の時にズボンの股のあたりをギュッと握る癖が見られたので、少しそこに垢をつけたという。

衣装から、物語が見えるようにする。衣装で物語に厚みをつけるとは…!

「衣装を現実のものにする」「コスプレにしたくない」という。
実際に、アニメの再限度が異常に高いと思っていたが、決してコスプレではなかった。

「そんな(細かい)ところやっても見えないからやらなくていいよー」
と言われることもあるそうだ。

「私はその考えが嫌いだから…うるせーって感じです」
オンラインながら舞台を見てしまったので、彼女の発言の説得力にぐうの音も出ない。

現在上演中の舞台『キングダム』の衣装も、役者さんに合わせて作る。

「お客さんも扮装している人を観に来ているわけじゃない」
「絵だけの情報でそのまま描いてしまうとコスプレっぽくなる」

デザインには、原作漫画だけでなく、中国の歴史資料にもあたる。
出演俳優の写真を横に置いてデザインをする。キャラクターが現実に現れた場合のリアリティを感じさせるために。

例えば、王騎将軍の場合、原作と同じバランスで衣装を作ると、肩のボリュームに目がいってしまう。だから、肩の大きさはほどほどにして、俳優の山口祐一郎さんの表情をしっかり見せるように作る。実際に漫画のキャラような筋肉は存在しないので、腕の筋肉が見える部分を減らす。

リアリティは、原作の再現ではなく、役者さんの体を通じて、どうすれば、作品の印象を伝えるのかを考えたデザインだった。

同じ『キングダム』の河了貂の衣装もすごかった。仕上がったあとにも手が入る。ほつれた数本の糸の色を変える。ずっと河了貂が着ている服だから、もし自分でほつれを直すとすれば、毎回、同じ糸があるとは限らない。だから違う糸を使う。ミシンの糸も手縫いで隠す。観客から見えるわけもないのに、作品の現実感にそぐわないと思ったら、修正する。衣装を着て、撮影に挑む役者さんは、河了貂そのものだった。

衣装ごとに職人さんを変える。同じ職人さんに発注したほうが楽なのに、衣装が全部同じになってしまうという理由でそれをしない。どうやって、衣装が作品の上に、立ち上がるかを考えてのことだ。『キングダム』では、35人の職人さんに依頼したそうだ。

スタイリストになってわずか5年。どうやってそんなキャリアとスタッフからの信頼を得たのか。もともと、陸上でオリンピックを狙えるほどの実力だったが、18歳で腰を骨折、2年ほど、引きこもり生活を送る。たまたま観に行った大沢たかおさんの朗読劇で、「感激し」「衝撃を受け」、一念発起。ミシンも扱えなかったのに、20歳代後半で単身渡米し、世界的なブランドのスタッフの元でデザイン修行。相手にされない時期もあったが、ゴミ箱に捨ててあったデザイン画から学んでいたという。5年後に帰国して、独り立ち。度胸や根性は、真似のしようもない。

普段の生活では、どんなに仕事が忙しく、帰宅が遅くなっても、1日最低1本は映画かドラマを見るという。また、仕事の空き時間は、公園などにいる人たちを観察し、背景を想像する。子どもたちは冬なのに半袖を着ているが、見守る大人はすごい着こんでる。周りよりちょっとおしゃれなあの人は、公園デビューなのかな、その想像が、作品を豊かにするという。

「衣装と呼んではいるが、衣装ではない、キャラクターの普段着にしたい」

実際にここまで舞台の現実感の立ち上がりに寄与している衣装というものを初めて見たかもしれない。

番組は、仕事への厚みの持たせ方も参考になった。

すごい人を知ってしまった。

今回の「セブンルール」よかったなぁ。すごかった。


いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。