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「マンガ編集者、林士平の即答。」(後編) #ほぼ日の學校

「ほぼ日の學校」アドベントカレンダー14日目です。

マンガ編集者の林士平(りんしへい)さんの授業です。

3日前のアドベントカレンダーでも取り上げました。その際に途中まで視聴したんですが、勉強になることが多すぎて、noteを二回に分けることにしました。

授業紹介

マンガ編集者、林士平の即答。
林士平 (マンガ編集者)

『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』など、数々の大ヒットマンガを担当する編集者、林士平さんに、日本が世界に誇るマンガの最前線を語っていただきます。具体的な質問にも、漠然とした質問にも、切れ味鋭くどんどん答える林さんの即答ぶりがすばらしい。自身もマンガ家志望だった糸井重里と、ほぼ日の永田がどんどん質問します。

マンガ編集者、林士平の即答。 | 林士平 | ほぼ日の學校 (1101.com)

編集者の役割

編集者の役割ってコンテンツによっても違うし、おそらく出版社でも役割が異なるんだと思います。そして、相対する作家さんによっても。でも、作家さんを通じて、よい作品を作るために「何でもする」という姿勢は正しい気がします。


マンガの編集ってディレクターと
プロデューサーとマネージャーの
職務が全部混ざってるんですよ

とある作家さんの場合稼がれて
売れたんですけど
欲しい物はないと言ってて
困ったな、欲がないなこの人と
初めて引っ越したいと
おっしゃったので
打ち合わせの度に街を変えて
この街は住めるかどうか
一緒に散歩してジャッジしながら
ここネームができるカフェですよ
どうですかみたいな
やっぱり一人で
知らない喫茶店入るのって
勇気いるじゃないですか
一緒に入って
不動産屋さんみたい
全部のその後 街を決めたら
一緒に不動産屋巡りもしたんですよ
この街に住もうと思うって言うから
僕が不動産に連絡して
条件をお伝えして
何日打ち合わせだから
2時間空いてる 内覧行けるなと
内覧を一緒に全部行って
だから僕ほんとに
ある種不幸だなと思ったのが
ありとあらゆる東京の豪邸を
見て回ったんですよ
稼いでる先生なんで
契約の現場まで一緒にいて
緊急連絡先ぼくですからね
不動産屋さんも
「こいつ…何だ?」って
思ったと思うんですけど
楽しかったですけど

悩み、怒りのコントロール


忘れた方が楽じゃないですか
ずっと心配事って嫌じゃないですか
怒りとかも僕ノートに書いたら
「はい、おしまい」
って感じなんですけど
死ねと思う人
いっぱいいるじゃないですか

糸井・永田
(笑)


なぜ死ねと思ったのかを書いて
吐き出してその人に対する
今後の対応策を決めて
決めたらそのルールに則って
生きていくだけなんで

永田
そのノートはあるんですね


それ僕、一時期
全部Evernoteに書いてて
今は普通にNotionに書いてます
怒り抱えていくと
パフォーマンス絶対落ちるんですよ
不思議なもんで

悩み、怒りを切り替える… ドライだなぁ

効率的だと思うけど、私にはこうもハッキリした態度で生活はできなそうです。真似できない部分ですが、見習えれば、毎日、立ち止まらなくて済みそう。

おもしろいコンテンツを作る作家の特徴…なんてない

まず、おもしろいと思えなかった作品が売れたことはないって話でした。でも、何で売れたのか、はっきりとは言えない。まずおもしろい、そして、作品のダメな部分を減らす作業ですね。マンガだけじゃなく、売れない材料を削っていくことは重要なんでしょう。ここは、今の自分に、足りない姿勢だと思っています。書く時に「これくらいでいいや」がまだたくさんある気がする。

売れるコンテンツを作りたいです。

山下
個人的にこんなにこの時期に
一人の漫画家さんのファンになるか
っていう方がいらっしゃいまして
藤本タツキ先生なんですけれども
最初から林さんがご担当で

(略)
タツキ先生を例に
最初から他の方と違う
何かがあったのかとか
現在作っていく段階で具体的に…
『バクマン』でしか知らないので
担当者と漫画家のやり取りや
アイデアの任せ方とか
どう一緒に作っているのか


最初から天才だと見抜けたことはほぼないので
彼もたぶんほかの先生と一緒で
新しい若い面白い人だぐらいの感覚なので
あとから歴史修正主義みたいに
「僕は見抜いてた」みたいなこと
言いたくないので
わからなかったというか
普通に創作意欲の高い若者として向き合っていました

今は彼とはもう13年ぐらい
一緒にやってるんですかね
13年ご一緒してて
何だろうなぁ…
難しいですね
普通にネームの打ち合わせ
ネームを見てお返事して
ネームの前も打ち合わせして
翌週何やりますか
こんなの考えてます
ここは気になります そうしますか
ネームが来て
ここが気になります
ここはわからないと思います
みたいな話をしながら修正して
原稿にします 原稿来て
入稿してというのを
すごい愚直に毎週やってる感じで
なんか彼だから特別というわけでは
なくという感じですかね

コンテンツへの編集者のアプローチ

編集者の役割にも通じますけど、メンターや共同制作者でもありますよね。そして、作家さんに合わせた壁打ち相手。

永田
『チェーンソーマン』って
とんでもない展開をする
あれどう判断するんだろう
って思うんですよ


判断…

永田
こういう展開がいいとか悪いとか
そういうものを超えた展開を
していくものを
作家さんの表現は自由があるけれど
それを監視する側でもある
編集者さんは
あの自由で奔放なものに
どう意見をしていくんだろう
っていう難しさは


すごくフラットに面白ければ面白い
見たことないものであれば
見たことないですね だし

糸井
読者が「どうやってやるんですか」
っていうくらいに面白がってるということは
すでにもうここで
面白かったわけだから
この方のフラットな目からしたら
いいんじゃないかと思った


そうですね
「いいんじゃないですか」の
瞬間は多いですよね

永田
「まいったな」みたいなことはない


「まいったな」というのは?

永田
どう言っていいかわかんないな
判断に困るなみたいなことは


判断に困ったら
「判断に困る」って言います

困ったならば
「困った」と伝えることも
また正解というか
わからないと即座に伝えるとか
わからないのも
とても大事なセンサーなので
なぜわからないと思ったのか
可能な限り言葉にしてお伝えして
読み手も同じくらい混乱するなら
狙い通りなのか そうじゃないのか
をジャッジして整えていく

まとめ

強烈な作り手、個性のある作家と、やり手の編集者のお話ですけど、普通の部下、上司、会社、利害関係者の誰かと接する場合も役立つ話だったと思います。林さんと同じように振る舞うことはできないかもしれないけど、効率よくやるためにどうするか? 力を発揮するために、どう考えるか? は、ちゃんと考え、愚直に創作活動は続けたいと思います。

今は、ただ毎日書いて、仕事でもちょっと他の人より多めに書く、というだけですけど、自分が関わるものから、ヒットを出したいな、と常々思ってます。試行錯誤の回数を増やしていこう。ダメな部分をなくして、自分と廻りが力を発揮できる状態を作ろう。

はぁ…、勉強になりました。
糸井さんはいつも通りですけど、永田さんが、視聴者が考えてるであろう質問をそのまま言葉にしてくれていて理解の助けになりました。

いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。