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面影は消えても

裏山の中腹には、20軒ぐらいの開拓村があった。
同じ中腹の少し離れた所に石の採掘場があり、
僕らは 『ダルマの石山』 と呼んでいた。
麓から眺めると、ダルマの顔の上半分のような形をしているのだ。
時おりサイレンが響きわたり、続いて発破の轟音が山中に木霊する。
祖母は『あそこにゃー、おっかねーオッちゃん達がいるから、
近づいちゃあ いけんよ!』
と、言っていた。

小学生の時、この開拓村にひとりの仲の良い友達がいた。
時々 学校帰りに家に遊びに行くのだが、とにかく登りがきつい!
運良く、この石山に行き来するトラックが下から登ってくると、
ほれ!乗ってけ!』と、荷台に乗せてもらえる。
今思えば『おっかねーオッちゃん達』は、真っ黒けに日焼けして
少しホコリっぽかったが、とても陽気で屈強な男達だった。
デコボコ道をトラックの荷台で振り落とされまいとしがみつきながらも、
楽しくて たまらなかった事を覚えている。

ある時、荷台に一緒に乗っていたオッちゃんが 『ほれ! 二人で食え!』 と、マーブルチョコレートをひとつ、ポイッとくれた。

美味かった…。 
焼けつくような陽射しの中、もうもうと砂埃を巻き上げながら
ガタガタと走るトラックの荷台で 頬張るマーブルチョコは、
とても美味くて とても嬉しくて…。

あの屈強な男たちは、今でも元気に生きているのだろうか…。
石山は、僕らが中学生になる頃には閉鎖されてしまった。

誰もいなくなり ひっそりと長い月日が流れていた故郷の石山。
久しぶりに遠くから眺めた石山は そのほとんどを木々に覆いつくされ
もう、ダルマの面影はなかった。



※ ショートノートの頃に投稿した物の下書きがいくつか残っていたので、再掲してみようかと思います。
「またかい…(-"-;)」などとおっしゃらず、よろしくです♪(^^)
時系列はぐちゃぐちゃ~(笑)っす♪

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