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そんなことで泣いていてはダメですよ 前編

このフレーズ↑

これ、私、人生で2回、言われたことがある。

しかも初対面の人に。

2回もな。。

まぁなかなか、初対面で言われる言葉じゃないよね。

これから書くのは、その1回目のお話。


母の調子がなかなか良くならないのもあり、私はあることを考えていた。

というのは、ある著名人の方が鬱病持ちの方で、その方の主治医の先生が名出ししていたのを見て、私は、この先生なら、母の病気を治してくれるんじゃないかと思い、母を連れて出向くことになる。 

今思えば、それはとても浅はかな思いだったが、その時の私は必死で、藁をも掴む思いだった。 

ある日、他府県の大きな病院に、母を連れて出かけた。

母には病院とは言わず(言うと怒るので)、気晴らしに出かけようと言っていた。

電車を乗り継いで2時間ほど。決して近くはない。 

何の紹介状などもなく(そういうのはよくわかっていなかった)初診で診てもらったのだと思う。

病院に入るや否や、母は怒り出した。

「こんなとこ連れてくるつもりやったんか!」

でも、とにかく説得して、なんとか診てもらった。

しかしその日は、そのお目当ての先生の担当日ではなかったのか、違う先生に診てもらうことになってしまった。

しかしその時に、その先生に事情を話して、お目当ての先生の診察の日に予約を入れてもらった。

そして2週間後、そのお目当ての先生に診てもらうことができた。

母もまた怒っていたかは忘れたけれど、なんとかついて来てくれた。

その先生は、病気のことを一通りわかりやすく説明してくれた。
しかし、こんな遠方に来なくても、お薬はどこでも同じだし、基本的に薬物療法になるので、近くの病院の方に通う方がいいと思うと言われた。

そして、なぜ私たちが、遠方からここへ診てもらいに来たのかを話した。  

「先生なら、母の病気を治してくれると思って来ました。」

すると、先生は、私が思いもよらないことを話し始めた。

「それは心外だな。」

え?と思った。

「僕がその著名な方を治せたのは、その方との信頼関係が築かれていたからで、僕があなたのお母さんの病気を治せるかはわからない。」

と、はっきりと言われた。    

私は、その時、何も言えなかった。

その通りだとも思ったし、しかし、医者からこんな冷たいような、切り捨てられたようなことを、言われたことがなかったので、それに驚いていたのかと思う。

そして、この時に泣いてしまったのだと思う。

藁をも縋る思いで来た病院で、否定されてしまって悲しくなってしまったのだろう。

そして、先生が聞いてきた。

先生 「あなたは今、どうしているの?」

私 「親元を離れて就職して、一人暮らしをしています。」

先生 「僕は、本当は研究室にいたかったのだけど、親が病気だったので経済的なこともあって医者になった。」

「あなたね、親のために自分の夢を捨てるのも大事なことですよ。」    

なんだか、こんなことまで言われてしまって、私はもう、涙が止まらなかった。 

そしてトドメのように、

「あなたね、そんなことで泣いていてはダメですよ。」

と言われて、22才の私は、ただただ泣くしかなかった。 

この間、母はずっとうつむいたままで、何も言わず、じっとしていた。

そして、ここまでキツイこと言っておいて、なぜか、次の診察の予約をしてくれた。 

しかし、もう、この病院に行くことはなかった。  

私は、とても疲弊してしまっていた。

今、思えば、なんで初診で医者にここまで言われなきゃならならなかったんだろう、まあまあイカれた医者だよなぁとか思うけれど(ちなみにもう25年程前の話なので、これくらい荒い話はよくあったのかもしれない。私だけかな💦今ならコンプライアンスとかあるのかとは思うけれど、、)

でも、ごもっともな話でもあった。

当時の私も、ただただ泣いているだけで、結局、何も反論できなかった。

その医者が言っていることも、間違いではなかったから。

確かに、医者と患者の信頼関係があって、病気が和らぐこともあるし、精神病が完治するのは難しいだろうし、必ず治せるとは言い切れないと言いたかったのだと思う。


そのあとの夢のこととかは、、確かに筋の通った話で、その時の私は、厳しく諭されたのだと思っていた。 

しかし、今の私なら、そこまで言われる筋合いもなかったんじゃないか、あれは先生の持論であって、別にそれが正しいとも思わない。

親のために夢を捨てるとか、そのくらいで泣くなとか、別に親のために夢を切り捨てなくてもいいし、泣きたきゃ泣けばいいと思う。

今の私なら、こうやって反論しに行けるのになぁ。(でもやっぱり怖くなって泣くかもしれん、でも泣いてもいいし、泣きながら反論したいと思う)


そしてその夜、帰宅してからも大変だった。


※後書き
今読み返して、この先生も親御さんへの思いがあって、自分の夢を捨てて違う職に就かれたことは、本当に大変な決断をされたのだと思います。
その親御さんを思うお気持ちは、素晴らしいと思います。
ただ、それがどの方にも当てはまるわけではないと私は思ったので、その思いを書いたという所存です。






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