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あにの ばあさんの話

 凹んだ車は簡単にもとに戻せるけど、凹んだおとおとはなかなか元には戻らないらしいですよ。どうも、あにです。
 ダイエットのかいもなく、お腹はなかなか凹まないそうですが。

 さて、兄弟の家系は女が強く、93歳の「お雑煮ばばあ」の他に、当年とって88歳の母方のばあさんも健在です。
 健在というかもう、建材?というくらい丈夫な人で、早くに夫に先立たれてからというもの、毎年のようにあちこち海外旅行に飛び回り、70歳になってからは流石にもう大義じゃ(大変だ)と言って、国内をあちこち飛び回るようになるという、土日は家から出たくないどころかこたつの自分の席からも動きたくないあにとは真逆の大変にアクティブな人です。

 そんなばあさんが11月に東京にやってきました。
 おそらく5月に生まれたおとおとの次女をはじめ、若さあふれる曾孫連中から精気のようなものを吸い取って、まだ長生きするつもりなのでしょう。
 親族一同が市内の有名レストランに集められることになりました。

 コロナ以来何年も岡山に帰っておらず、数年ぶりにばあさんが襲来。しかも今年で88歳、米寿を迎えるわけですから、これは孫としては何かプレゼントの一つも用意しないわけにはいきません。
 おとおとと相談をしてちょっとシャレオツなひざ掛けと、曾孫の写真をまとめたフォトフレームを用意しました。


 そして当日。

 会は大変に和やかに進みます。兄弟が結婚式を挙げるのにも使った老舗レストランです。落ち着いた雰囲気で、もちろん料理も大変に美味しい。
 離乳食しか食べられない生後半年の姪っ子以外はみんなご満悦です。

 メインの料理が終わりましたら、部屋を移動してデザートです。
 そこで母が急に

「ここで、私からおばあちゃんに誕生日プレゼントです!」

 といって出てきたのが大きなデコレーションケーキ。
 パティシエさんにお願いしてコースとは別に作ってもらったようで、上に「おばあちゃん 88歳 お誕生日おめでとう」と書かれ、ばあちゃんの前のテーブルに置かれ、ろうそくに火が灯されます。

 チャンスです!

「今だ、おとおと!」

「おっけーにいちゃん!」

「「これは孫と曾孫一同からお誕生日プレゼントです!」」

3歳の姪っ子が用意したプレゼントをばあちゃんにもっていきます。

 思いがけないサプライズに、ばあちゃんびっくりしております。

「まーどうしたん? うれしいわー!」

「せっかくばあちゃんが誕生日にこっちに来てくれるということだったので、兄弟夫婦で用意しました! 曾孫たちからはお歌のプレゼントです!」

 3年生の長男を中心に、1年生の次男、3歳の姪っ子も頑張ってハッピーバースデーの歌を歌い始めます。
 自然と大人たちもそれに合わせるように歌い始め、気がついたら店員さんや、近くの席に座っている他のお客さんも一緒に歌ってくれています。

「「「ハッピーバースデー トゥー ユー!」」」

 歌が終わりお店の中が拍手で満たされます。

 みんなの視線はばあちゃんに集まります。

「みなさん、どうもありがとうございます! まああたしの誕生日、6月なんですけどね!」

 ふーっ とろうそくが吹き消されましたとさ。

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