お雑煮を作るのは難しい
母の作るお雑煮はおいしい。
幼少の頃からずっと食べ続けてきて、具体的に作り方を教わったわけではないけど、記憶と舌で覚えているお雑煮。
今年も記憶を頼りに再現を目指してみた。
母のお雑煮
母の作るお雑煮は具たくさんだ。
人参、大根、ごぼう、里芋に小松菜、出汁取りをかねた鶏もも肉。
そして近所の米農家から買うのし餅を四角く切ったお餅。
まず大晦日にはたっぷりと鰹出汁を用意する。
この出汁はお雑煮用と煮物用に使う。
お正月の朝、まずは鰹出汁で根菜と鶏肉を煮る。
根菜が柔らかくなったら小松菜を入れて、ひと煮立ちさせる。
醤油、みりん、酒で味を整えたら、あらかじめ網で焼いたお餅を入れて、軽く煮て馴染ませる。
椀によそったら青のりをかけて、切ったナルト。
刻んだ柚子の皮をちょっと乗せて完成。
たしかこんな感じだった。
野菜がゴロゴロ入っていて、焼いた餅も分厚くて、お雑煮だけでお腹がいっぱいになるような。
それが母のお雑煮だ。
イメージはしっかりある。
舌も覚えている。
あとは作るだけだ。
私のお雑煮
さてさっそくだが鶏もも肉を買い忘れた。
冷凍庫にあると思ったらなかった。
仕方ないから冷凍庫にあった鶏のささみで出汁をとった。
青物は小松菜だってわかってるのに、買わなかった。
餅は、賞味期限が切れた切り餅があったのでそれにした。
餅を焼くのに魚焼きグリルやオーブントースターを使うのも面倒だなと思い「餅 レンジ 簡単」で見つけた方法を使った。
言うまでもないが鰹出汁はとってない。顆粒だ。
柚子はたくさんあるから問題なし。練り物大好きなのでナルトは忘れないぞ。
完成したお雑煮を盛り付けると、見た目は母のお雑煮にそっくりになった。
汁の味も似ている。
まずいわけではない。
しかしおいしいかというとちょっと微妙だ。
まず、さっぱりした鶏のささみでは出汁が取れないことがわかった。
鶏もも肉はクニュクニュなところがあって苦手だなと思っていたが、あれが必要だったのか。
小松菜と見た目が似てるからとほうれん草で代用したら、いらぬ噛みごたえが出た。
レンジでチンした餅が固い。
5点満点中の★3つくらい。見た目似ているのに。
出汁が。餅が。小松菜が。
この差はなんだ・・・と思ってこの記事を書いてみたが、改めて書き出すと、随所で違うのだから仕方ない。
醤油や味付けの問題ではない、至る所での差が積み重なって、「なんか違う」が作り上げられていた。
なんか「魔女の宅急便」を思い出した。
キキのお母さんは空を飛ぶ以外に薬を作る魔法が使えたけど、キキは飛ぶことしかできなかった。
私はキキだ、いや、危機だ・・・なんてこと。
「お雑煮がイマイチだったよ」
新年の挨拶がてら母に電話で報告した。
母は笑って
「お雑煮にはこだわりがあるからね、誰にでもこだわりたいことってあるでしょ、それがお雑煮とか料理なのよ」
といった。
そうか、私にはお雑煮にはこだわりがないな。
だから違う具材でどうにかなると思ったのだ。納得した。
結局、次に実家に帰省した時にお雑煮を作ってもらうことになった。
母は、いついかなる時も、手順通りにきっちりお雑煮を作れる。
私はいろいろ教わっても手順通りにやれない。
母親の作るお雑煮とは違うが、来年も、試行錯誤をしながらマイお雑煮を作るのだ。