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どうしてそんなに「4番目の光」が好きなのか、理由をちゃんと考えてみた

 特に理由はないが、月に1本くらいのペースで何らかのnoteを出すことを目標にしよう、と思ってキーボードを叩いている。そんなことより早くブログを書きたいという思いもあるものの、筆が滞っているからといって完全に止めてしまったらなまってしまう、という思いもあったりなかったりである。

何度目のリピートか?

 筆者には数か月に一度くらい、特に理由もなく「4番目の光」をずっとリピートで聴く時期がくるのだが、それがいまである。
 好きな楽曲であることは確かだ。作曲は杉山勝彦で、ピアノで始まるイントロがいかにも印象的であり、その点においては「王道の乃木坂曲」であるといってよいと思う。

 どのくらい好きかというと、オフボーカルのバージョンでもたまに聴いているくらいだ。自分の話になるが、普段は音楽をサブスクでしか聴かないから、オフボーカルで聴くためにはわざわざCDを取り出してきてインポートの作業をすることになる(坂道のサブスク配信は全タイプの収録曲[オフボーカル以外]を集めた「Special Edition」が基本で、次シングルが出たあとに通常盤が配信される、というという形が原則となっている)。確認してみたら、これをやっているのは乃木坂46だと「4番目の光」と「アンダー」だけで、坂道全体に広げても欅坂46の「サイレントマジョリティー」と、日向坂46の「ってか」だけだった。

(話が逸れるが、アルバム曲はいかなる形でもオフボーカルが世に出ていないことになるはずだ。「ありがちな恋愛」をオフボーカルで聴くまでは死ねない、という思いがあるのだが[やはり杉山勝彦作曲の楽曲に弱いのだ]、どうにかならないだろうか。)

4期生の“第一歩”として

 曲調やメロディを「王道」と称することにするならば、タイトルや歌詞には「秋元康がよく書く、“わかりやすい”当て書き」のような評価があるのではないだろうか。
 23rdシングルに収録された「4番目の光」は、4期生楽曲としては4thアルバムに収録された「キスの手裏剣」に続く2曲目ということになるが、4期生11人の初めての参加シングルの楽曲、かつ初めてのMV制作でもあり、リリースの時期もそこまで間が空いているわけではなかったから、歌詞のテーマともあいまって、「4番目の光」は「4期生の“第一歩”の作品」のような印象を強く与えるものであった。

 そこにきて、誰もが「三番目の風」とも重ねるような、ストレートなタイトル。漢数字と算用数字の使い分けは何なのかと引っかかるような部分もあった。ナイーブなファンからするとちょっと雑にも見えるような感じで、当て書きの歌詞を“下ろしてくる”。秋元康のパブリックイメージもあいまって、そんな第一印象から始まったファンも多かったように見える。
 歌詞の中身に目を向ければ、「坂道のあの高校と同じ制服を着たい その夢が叶った」「卒業生がやさしく頑張れと微笑む」とわかりやすい表現で描かれていたり、「いつの日か次の世代に繋ぐために暗闇を切り拓け」「光たちよ/この坂道 登れ!」と、メンバーに対するメッセージをメンバーが歌う構造がとられていたりと、世間ではなくグループやファンに対するメッセージが強く感じられる部分も散見された。やや訓示的な印象を受ける、というような声もどことなくくすぶっていただろうか。

 ただ、そうした色も多少は感じられる一方、言い方として適当かはわからないが、“さらっと聴ける”な、と思う部分も個人的にはある。
 美麗なメロディはもちろんだが、加入したてのメンバーたちがいくぶんまだ細い声をあわせて歌うユニゾンも、楽曲の雰囲気を爽やかにしているように思う。懸命さは感じ取れるが、力強い歌声ではなかった。いかにも新メンバーの“一歩目”として演出されていた、ということかもしれない。

センター・遠藤さくらのたたずまい

 ご存知のように、「4番目の光」のセンターは遠藤さくら。同期が口を揃えて「オーディションのときから輝きが違った」という遠藤であったが、細身すぎるほどに細身で、謙虚すぎるほどに謙虚なそのたたずまいには、「グループの未来を託す」というよりは、「傷つかないで歩いていってくれることを祈る」ように思わせるオーラがあった。
 両脇を固めるのは掛橋沙耶香と筒井あやめで、「キスの手裏剣」でセンターの両隣であった清宮レイと柴田柚菜とともに、この時期は特に年少組が前面に出されていたような印象を受ける(ざっくりいうと、遠藤らの“2001年組”が4期生では真ん中くらいの世代になり、またボリュームゾーンでもある)。「かわいい妹たちが入ってきた」ような、そんなイメージが際立っていたような感じだろうか。

 そのなかで、この時期の遠藤は多くのものを背負わされすぎていたような、そんなふうにも見えていた。遠藤は次のシングルで表題曲のセンターに抜擢されることになるのだが、その時期以降よりもこの頃のほうが、有り体にいえば、(ファンから見ても)わかりやすい負荷をかけられていたような、そんなふうにも感じる。
 お見立て会でセンターに立った「インフルエンサー」はグループ最高難度のダンスと評され、加入半年の11人が横浜アリーナのステージに立った「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ〜4期生ライブ〜」では、全員センターブロック以外のフォーメーションダンスでは一貫して遠藤がセンターポジションに立つことになった。
 1曲目は「4番目の光」で、本編最後は「キスの手裏剣」で締めたセットリスト。そのなかで、「トキトキメキメキ」や「あらかじめ語られるロマンス」から、「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」や「世界で一番 孤独なLover」までセンターで演じた曲は幅広く、「ロマンスのスタート」や「ハウス!」などのライブの定番曲、グループの代表曲となっていく「きっかけ」などもそこには含まれ、全員センターブロックでは前年にレコード大賞を受賞した「シンクロニシティ」を選曲した。

「続いての曲でセンターを務めさせていただきます、遠藤さくらです。
 今回、全員センター企画で、自分がやってみたい曲に挑戦させていただけるということで、私は真っ先にこの曲を選びました。
 でもこの曲は、乃木坂の楽曲のなかでもとても難しいパフォーマンスが要求される曲だと思っていたので、正直『自分にできるのか』と、不安にもなりました。
 少し前の自分なら、勇気も自信もなく、やる前から諦めていたかもしれません。
 でもこの春、私はプリンシパルという舞台を経験して、いろいろな感情を表現する楽しさと同時に、悔しさも知りました。
 この曲は、表情や感情がとても大切な曲だと思うので、今回、自分の感情を出して表現することに挑戦してみたいと思います。
 少しだけ……少しだけ、成長した私を見てください。」

(2019年5月25日「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ〜4期生ライブ〜」
遠藤さくら「シンクロニシティ」披露前のMC)

 筆者は当時、このライブの客席にいたわけではなかったが、直後にセットリストを見て、「遠藤が折れたらこのライブは終わり」とでもいうような、そんな鬼気迫る勢いを、グループから感じたことを覚えている(いま映像で見てみると、もちろんステージ上にそんな雰囲気は漂っていないのだが)。

 そんな遠藤だが、この時期にサンヨー食品「和ラー」のYouTube企画「あすさんぽ」で共演した齋藤飛鳥は、彼女のことを「肝が据わった人」と称している。その後の遠藤のキャリアを見てみても、その評価は一貫して間違っていなかったのだと思う。ルックスやキャラクター、パフォーマンス力だけでなく、そんな面も加味して、遠藤にそのポジションが与えられていたのかもしれない。
 しかし一方で、それをすべて差し引いてもやはり、いつ折れてしまってもおかしくないような儚さがこのときの遠藤には強かったのも事実だ。どれだけ光り輝いていたって、上京してきたばかりの高校生である。そんな彼女にぴったりくっついて支えたのが、まだ「3期生とはあまり喋らなくて……」の印象が強かった飛鳥だった。「あすさんぽ」では「えんぴー」と呼び、「あすぴーさん」と呼ばせる様子が印象的でもあった。
 次のシングルで表題曲のセンターとなった遠藤は、飛鳥とともに乃木坂46のフロントラインを走り続けていくことになる。しばらく飛鳥がずっと寄り添って支えていたイメージだったが、飛鳥のグループ卒業が視野に入ってきた頃からだろうか、いつからか遠藤が自分からくっついて甘えているような、そんな印象を受けるようになった。そんな経緯も含めて、たぶんずっと「あすかの子」だったのだと思う。

当て書きであって、当て書きでない

 話が遠回りしてしまっているが、「4番目の光」に立ち戻り、この楽曲が好きな理由を言語化することを試みてみようと思う。

 歌詞について「“わかりやすい”当て書き」のような評価がある、と先に書いた。「坂道」「制服」「エンブレム」「卒業生」と、確かに新メンバーである4期生の置かれている場所を思わせるワードが散りばめられている。それは「当て書き」と受け取られて自然だと思う。

遠くから憧れていた
その清楚で凛々しい先輩の姿
坂道のあの高校と
同じ制服を着たい その夢が叶った

鏡に自分を映して
くるりと一周回った
エムブレムにふさわしい未来
汚さぬように頑張るしかない

(乃木坂46「4番目の光」1番Aメロ・Bメロ)

 ただ、それを「高校」という仕立てにしていることで、歌詞全体がフィクションとして成立している。メンバーが歌う歌詞は表現であり、日記や決意表明ではない。「当て書き」の先入観を排して歌詞を改めて読んでいくと、それをフィクションとしてとらえたとき、明らかに不自然なのは「4番目」というワードくらいで、「坂道」「制服」「エンブレム」「卒業生」などは、すべて「高校」の側に回収しうる。あくまで「憧れの高校に入学する新入生の歌」と言い切ることも可能なくらいだ。

 話がややそれるが、「鏡に自分を映してくるりと一周回った」という歌詞は極めて映像的で、メンバーの姿で想像しやすくもある。ここのオリジナルの歌割りは清宮レイと柴田柚菜だが、このふたりはいかにも、真新しい高校の制服に袖を通して、春休みのうちから姿見の前でくるくる回っていそうだった。当時のそんなイメージが自分のなかでしっくりきていることも、この曲が好きなポイントのひとつでもある。

制服に袖を通して
胸に込み上げてくる万感の想い
坂道を今 すれ違う
卒業生がやさしく頑張れと微笑む

自分に何ができるのか
不安と期待が膨らんで
夜明け前に目が覚めてしまう
私らしく全力で走ろう

(乃木坂46「4番目の光」2番Aメロ・Bメロ)

 サビを飛ばして2番に行くが、ここも1番のAメロ・Bメロにほぼ重なる情景や心情が描かれている。角度が変えられているのは、「卒業生」という点だろう。グループとしては、前シングルの参加メンバーで若月佑美・能條愛未・川後陽菜・西野七瀬・衛藤美彩が卒業、伊藤かりんと斉藤優里も23rdシングルには参加しない形で卒業を控えていたという状態であった(かりんの卒業はシングルの発売直前)。卒業ラッシュのアクセルが踏まれたような印象があった時期で、「すれ違う卒業生」の顔も具体的によぎってくるような歌詞であった。

 ここまでメンバーやグループの時代感というか、そのときの姿をすくい取りながら、やはり歌詞世界がフィクションとしてほぼ完結している点は、歌詞という表現形式がもつ絶妙さであるように思える。

歌詞でしか表現できないもの

 これら以上に、「歌詞でしか表現できないもの」が込められているように思うのが、「(4番目の)」の扱い方である。サビでタイトルがそのまま使われるのは秋元康の歌詞のよくあるパターンだが、1サビはこのようになっている(ラスサビも同じ)。

4番目の光を探しに行こう
どこかにきっとあるだろう
私たちの世代だけのその輝き
新しい色になる

(乃木坂46「4番目の光」1サビ)

 これに対して、2サビはこうだ。

4番目の光になれますように
まっすぐ道を進むだけ
いつの日か次の世代に繋ぐために
暗闇を切り拓け

(乃木坂46「4番目の光」2サビ)

 1サビでは「4番目の光」は「探しに行く」ものであったのに対し、2サビでは「なる」ものとして歌われている。ニュアンスとしては歌詞全体の調和とともにやや重なってはいるものの、「4番目の光」は、「探して手に入れるもの」(1サビ)→「自らがそれとなって暗闇を切り拓くもの」(2サビ)と、いくぶん踏み込んでいくように歌われている。

 これに近い構造が、Cメロでもとられているように感じる。
(2サビの後にくるこのCメロは終盤に向けて楽曲をぐっと盛り上げていくが、歌割りでいうとここで初めて遠藤のソロパートが登場する点も非常に印象深い。)

もし雨が降ってぬかるんでも
しっかり歩いて行く
やがては 地面も乾く
雨雲の隙間 ほら差し込む
光たちよ
この坂道 登れ!

(乃木坂46「4番目の光」Cメロ)

 冒頭の「もし雨が降ってぬかるんでもしっかり歩いて行く」は、これから辛いことや苦しいことがあっても頑張る、というようなニュアンスであり、続く「やがては 地面も乾く雨雲の隙間 ほら差し込む」で、そんな彼女たちに光が差してくる、というような流れである。ここで「光」は、頑張りに応じて手に入れることができるような、彼女たちの外にあるものであるように読める。

 しかし、最後の「光たちよこの坂道 登れ!」でそれは一変し、彼女たちこそが「光」なのだ、というニュアンスにひっくり返る。厳密な文章として読んでしまうと意味が通っていないことになるが、詩(歌詞)という形式だからこそ表現として成立している。これを疾走感のあるメロディに乗せて放り込んでくるのだからたまらないのだ。

 続くDメロ(落ちサビというのだろうか)も、そうしたふたつの意味での「光」が、やや重なりあったような歌詞となっている。

こんなに素敵な場所にいられたことを
誇りに思えるように
輝こう

(乃木坂46「4番目の光」Dメロ)

 「すてきな場所にいられたこと」というのは、「光が差し込んできた」というようなニュアンスがあるが、それをふまえて、それを誇りに思えるように、自らが「輝こう」というのは、「光」になる、と言い換えることもできよう。
 歌詞はメロディに乗せて短く流れていくので厳密に語られるわけではないが、このDメロによって、ふたつの意味での「光」が、彼女たちの現在のたたずまいと行く先の未来として、メンバーが歌うことによってひとつのものとして調和しているように思う。

 そして1サビと同じ歌詞がもう一度繰り返され、その「光」は、これから「探しに行く」ものに戻る。もう一度、“一歩目”である現在地に戻ってくるようなイメージだ。しかしそこにとどまらず、最後にもう一節、「光は愛」と全員が歌い上げて曲が終わる。

4番目の光を探しに行こう
どこかにきっとあるだろう
私たちの世代だけのその輝き
新しい色になる

光は愛

(乃木坂46「4番目の光」最終部分)

 「光は愛」。シンプルで耳なじみがよく、感覚的にいえば「歌詞っぽい」歌詞である。あまり具体的な意味を読み取れるものではないが、いま改めて(これを歌うメンバーが「光」になっていったのだ、と思いながら)聴くと、4期生の柔らかい雰囲気に重なっているようにも思える。

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 歌詞の逐条解説みたいなことをしたかったわけではなかったのだが、結果として全体を追いかけるような形になった。とにかく「4番目の光」の歌詞には、歌詞にしか表現し得ないものが表現されているように感じられ、それも筆者がこの曲を好きなポイントのひとつだ。

”ストーリーを負う”曲として

 そして、これだけわかりやすく象徴的な“一歩目”の曲であるからして、「4番目の光」は、乃木坂46・4期生のストーリーとともにずっとあるような、そんな曲になっていくことになる。
 ライブで披露された回数は、少なくもないが多いともいえない。だからこそ、披露のたびに思い出が積もっていくような、そんな感覚がある。

 4期生ライブでの初披露からまもなく、グループは「真夏の全国ツアー2019」を挙行する。ツアー初参加となった4期生は、各公演前半に設けられた3・4期生のブロックにおいて「4番目の光」を披露していくことになる。このときのツアーは、ドーム3会場と明治神宮野球場を回ったものであり、4期生ライブでの横浜アリーナ以上に大きな会場での披露を経験することになった。

 2019年11月の「3・4期生ライブ」では、「4期生制服」に身を包み、フルコーラスで披露。翌年の「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」では、DAY2において序盤の期別ブロックで披露されている。
 このあたりの時期(おおむね2021年くらいまでだろうか)の乃木坂46は期ごとの人数のバランスがよく、期ごとの4チームでライブやバラエティで行動することも多かった。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2019」「@JAM EXPO 2019」「AGESTOCK2019」など、4期生の単独稼働も(3期生と比べてもよりっそう)多かった印象であり(各イベントで「4番目の光」が披露されてもいる)、「4期生」がひとつのチームとしてわかりやすく取り扱われながら、徐々にではあるがスムーズにグループに組み込まれていった、という印象がある。

“16人”での「4番目の光」

 「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY4でお披露目されたのが、坂道研修生を経て加入した、いわゆる「新4期生」であった。
 前年の「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」にはDAY1-3に4期生ブロックが設けられ、自己紹介と楽曲披露があったほか、卒業生のソロ曲を4期生が担うという場面がみられたが、このとき配属直後であった「新4期生」は、挨拶と自己紹介のみでの参加となっている。

 ここからコロナ禍があり、その初期では11人体制の4期生で制作された最後の楽曲である「I see…」が“バズった”という出来事もあった。
 坂道研修生組の配属・合流というのは坂道シリーズ3グループ共通の事象であったが、乃木坂46・4期生は11人での単独稼働が飛び抜けて多かったぶん、独特の難しさもあったかもしれない。
 変に演出したり説明を加えたりしなくても、活動を重ねていけばメンバーもファンもなじんでくるものだが、そうした意味でいえばコロナ禍初期の“ステイホーム”は完全なる空白期間になってしまった。

 いわゆる「新4期生」は、配信シングル「世界中の隣人よ」への参加や、「ノギザカスキッツ」への合流などの形で徐々にグループ活動に加わっていくが、この年は全国ツアーも開催できておらず、CDシングルの発売も25thシングル「しあわせの保護色」のみにとどまったため、ステージでのパフォーマンスという意味ではまだ距離があったような状況であった。
 そのようななかで、グループとしてのライブへの初参加は、2020年10月28日の「NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert 〜Always beside you〜」。そして12月6日に無観客・配信ライブとして開催されたのが、「4期生ライブ2020」である。
 「4期生」と「新4期生」の区別を行わずに行われたこのライブ。このときが、16人での「4番目の光」の初披露となった。

 16人での「4番目の光」は、オリジナルの歌割りとフォーメーションをベースとして、いわゆる「新4期生」の5人をフォーメーションでは3列目、歌割りでは2列目に加える形で披露されている。
 特にこのときの「4番目の光」について、早川聖来はライブのアフター配信で「特別な気持ちになった」とした。「(「4番目の光」は11人で披露してきたが)もともと4期生は16人で、5人があとから合流した」「もともと16人の曲だったみたいに感じた」という説明は、いかにも情に厚くて繊細な早川らしい、出色の言葉選びだったと思う。

そして4期生のみんなにとって大切な
『4番目の光』を今回16人で披露させて頂きました。

有難い気持ちと自分達がいてもいいのかという不安とが混ざっていました。

でも、せいらちゃんが元々16人だったと言ってくれて、本当に嬉しくて

不安で縮こまっていた心が膨らんで弾けて温かさが広がりました。

歌割りにも入れてもらい、
ゆりちゃんとせいらちゃんが
"おいでおいで〜"と毎回してくれて、
目を合わせて安心させてくれて、
背中をぽんぽんとしてくれて、

本当に優しくて嬉しくてしょうがなくて。

この期間、本当にみんなから優しさを沢山貰って心の温かさから生まれた幸せに溢れた空気が宝物になりました。

(乃木坂46 新4期生公式ブログ 2020年12月11日「勇気を出すんだ 松尾美佑」)

 実際のところ、16人でのパフォーマンスはこのときが初めてというわけではなく、「NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert 〜Always beside you〜」では16人に白石麻衣を加えた形で「夜明けまで強がらなくてもいい」を披露していたし、それに先立つ「TOKYO IDOL FESTIVALオンライン2020」(10月4日)には「乃木坂46 4期生」として16人で出演している。
 しかしこのときの「TIF」では、後半の「制服のマネキン」「ガールズルール」「キスの手裏剣」「I see…」は16人で披露されたものの、前半の「4番目の光」と「図書室の君へ」は11人での披露であり、それだけにやはり「4期生ライブ2020」での「4番目の光」は、本稿でも述べてきたような楽曲の性質もあいまって、メンバーにとってもかなり特別なものとなったということだろう。

 また、やや野暮ったいながらももう少し付け加えると、松尾美佑は当初「4期生」として2018年12月の配属が予定されていたものの取りやめられ、坂道研修生を経て「新4期生」として加入したという経緯がある。またあるいは、坂道研修生として活動したものの、グループへの配属を待たずに活動を辞退した松岡愛美は、乃木坂46へ配属予定であったともいわれる。
 「乃木坂46・4期生」がもつ“16人”へのまなざしは、他グループにはみられないこのような経緯も含めて、形づくられているようにも見える。彼女らが16人でステージに立っていること(あるいは11人でステージに立っていたこと)はある種の偶然であり、しかし全員でたぐり寄せた運命でもあるのだ。

「4番目の光」のそれから

 16人での披露をもって楽曲のストーリーとしてはひと区切りになりそうなものだが、グループと彼女らの歩みを振り返ってみると、そこからも「4番目の光」にまつわるハイライトシーンがいくつも続いていくことになる。

 「4期生ライブ2020」に続く次の披露機会は、これも無観客・配信形式で行われた「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」であった。ライブ本編で演じられた「4期生曲」は「キスの手裏剣」と「Out of the blue」であったが、「4番目の光」はアフター配信のイントロクイズ企画で4期生チームが勝利したご褒美として演じられた。
 得点が1万ポイントに設定された最終問題で「ありがちな恋愛」を正解して逆転勝利をもたらしたのは林瑠奈。反射的にボタンを押して正解を出したあと、「やってしまった……」とでもいうような表情を見せたのが印象的であった。
 少し遠慮がちにステージに進み出てパフォーマンスを開始した4期生を、抜けに映る先輩たちがノリノリで踊って盛り上げていた。グループの雰囲気と未来が感じられる、良いシーンだったと思う。

 これに続くのは、5月に無観客・配信形式で行われた「9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜4期生ライブ〜」であった。全曲披露された「4期生曲」はすべて本編の終わりに繰り出され(この日初解禁・初披露の「猫舌カモミールティー」はアンコール1曲目)、その最後の1曲が「4番目の光」であった。
 直前のMCで、遠藤さくらはこの曲を「宝物みたいな、そのぐらい大事で、大切で、強い思いがつまっている曲」と称し、「今日も歌詞の意味を噛みしめながら、しっかり披露できたらいいなって思っています」と語ってパフォーマンスが始められた。
 フル尺での歌唱が進んでいくうち、笑顔が弾けるメンバーもいれば、涙がこらえられなくなるメンバーもいた。佐藤璃果に背中をさすられながら、泣き崩れるようにして配信を終えた早川聖来の姿が、特に印象的だっただろうか。

 2年ぶりのツアーとなった「真夏の全国ツアー2021」では披露機会がなかったが、地方公演を終えたタイミングの8月27日に「乃木坂46 4期生」として参加した「@JAM EXPO 2020-2021」において、他の「4期生曲」とともに披露されている。
 当時は新型コロナウイルス緊急事態宣言下であり、フェスなどのイベントが次々に中止に追い込まれるなか、形式を変更しながら開催にこぎ着けたイベントであった。5期生のオーディションもすでに進行中で、4期生として外部のフェスイベントに参加したのはこのときが現状最後と、貴重な機会となった。

 翌年、日産スタジアムで挙行された「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」では、2日間で10年間の歴史を振り返っていくセットリストのなかにあって、2日目に「Sing Out!」の直後で披露されている。
 この頃には「新4期生」の区別はまったくなくなっていたと言ってよい状態であり、参加メンバーは当然“16人”。早川のいう「もともと4期生は16人」を、3年越しに体現したようなパフォーマンスであった。

 6月には「乃木坂スター誕生!LIVE」が開催され、「4番目の光」は終盤のスペシャルライブの1曲目として披露された。メンバーの新型コロナウイルス感染による延期でこの時期の挙行となったもので、番組はすでに5期生に引き継いでいたが、約1年間の「乃木坂スター誕生!」の総決算のような場となった。
 強く記憶に残っているのは、このライブを早川聖来が休演しており、15人での披露であったということである。舞台出演と並行して活動を続けるなか、もともと昼公演は休演の予定であったが、体調不良により夜公演も休演、舞台出演などもすべて含めて活動をストップ。夏の間は正式に活動を休止、休養にあてられることになった。

 4期生にとって、メンバーの活動休止は初めて経験する事態であった。11人であった2019年には、北川悠理が学業の都合で「真夏の全国ツアー2019」の一部公演や「3・4期生ライブ」を休演するなどの出来事もあったが、正式にメンバーが活動を休止したのはこのときが初めてであり、15人での「4番目の光」というのもこのときが初めてだったことになる。
 その後、清宮レイも一時グループ活動休止の期間があり、掛橋沙耶香はライブでの事故以降長らく公に姿を見せていない状態が続いている。それでも4期生はグループの最大勢力として独自のチーム感をもって引き続き走り続けているが、ファンとしては“16人”への思いがどうしても強まってしまう部分もある。
 掛橋は「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」にも出演しないことがすでに発表されている。何より大切なのは本人の心身だからファンの身から言うべきことは何もないが、いつかまた“16人の「4番目の光」”を見られることがあればいいな、と思う。

——4期生は約4年間突っ走ってきた分、立ち止まるメンバーもいますが、先輩として「守ってあげたい」と思うことはありますか?
梅澤 もちろんあって。私たちも通ってきた道だから、4期生を見ていると「いまが踏ん張り時だな」と感じます。私にできるのは声をかけてあげることくらいで、どの道に進むかは自分しだい。だからこそ、間違った言葉を投げることはできないな、とも思います。

(『BRODY』2023年2月号 p.28 梅澤美波インタビュー)

 続く披露機会は、前稿(「アンダーライブで見た“乃木坂46のすべて”(乃木坂46・31stSGアンダーライブによせて)」)にも書いた「31stSGアンダーライブ」であった。31stシングルアンダーメンバーは3・4期生のみの10人の編成で、「4番目の光」はそれを印象づけるがごとく、「三番目の風」とセットで演じられた。
 参加した4期生メンバーは、北川悠理、黒見明香、佐藤璃果、松尾美佑、矢久保美緒(北川は一部公演をけがのため休演)。3期生のメンバーも後列で参加したことは新規性のある演出であった。

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 「4番目の光」について、ライブでの披露を振り返ってきた。いっぱんに、乃木坂46・4期生の代表曲を挙げるとなれば、ファン以外にも話題となり、「ミュージックステーション」をはじめ多くの音楽番組でも演じられた「I see…」だと思う。
 しかし「4番目の光」は、4期生の“一歩目”を印象づけた曲であると同時に、ある意味でグループの内側に閉じた曲であるからこそ、4期生の、そしてグループの歩みや息づかいのようなものが込められていった曲となっているように思う。

 それはライブでの披露に限ったものではなく、賀喜遥香が「内輪ウケものまね大賞」で披露した矢久保美緒の「ヒカリ太刀魚〜」もそうだし(どの映像を確認しても矢久保は正しく発音しているのだが)、金川紗耶が自らのレギュラーラジオで涙ながらに流したあの日のことなど、4期生にとっての象徴的な曲だからこそ、ライブの外でも記憶や思い出が塗り固められていったような印象もある。
 11人で撮影されたMVのロケ地、茨城県・旧上岡小学校には、2021年3月29日の「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」で、いわゆる「新4期生」の5人も訪れ、パフォーマンスをしている(披露楽曲は「サヨナラの意味」で、遠藤さくらは欠席で15人で披露)。やや迂遠な形であるが、MVの記憶も“16人”共通のものになったといえるのではないだろうか。

「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」に向けて

 例によって長いだけの文章を書いてしまった。記事のタイトルについてのアンサーをまとめるならば、歌詞についてもパフォーマンスされてきた経緯についても、グループの息づかいが感じられるからこそ好き、とまとめることができるだろうか。

 気がつけばもう2月も半ば。間もなく「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」が挙行される。今年のバースデーライブは、全体ライブと期別ライブ、そして“最後の1期生”秋元真夏の卒業コンサートという5DAYS構成。
 「4期生ライブ」としてライブが開催されるのは、「9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜4期生ライブ〜」以来2年ぶりということにもなるが、今回は声出しありの有観客開催で、会場は最初の4期生ライブ(「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ〜4期生ライブ〜」)と同じ横浜アリーナである。

 セットリストはもちろんまだわからないが、「4番目の光」が披露されることはおそらく間違いないであろう。どのような演出、そしてどのような表情で披露されるのか、楽しみに待ちたいと思う。
 「卒業生がやさしく頑張れと微笑む」なか、「私たちの世代だけのその輝き/新しい色になる」、「まっすぐ道を進むだけ」と坂道を走ってきた4期生。何百回めかの「4番目の光」を聴きながら、改めて思う。
 「光たちよ/この坂道 登れ!」。

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 ここのところやや滞っていますが、坂道シリーズについてやたら長いブログを書いています。いま書き進めているものもありますし、公開しているだけでもまあまあ分量があるので、お暇がありましたら読んでいただけたら嬉しいです。
 また、noteについても、これを書きたいな、という題材があったりします。冒頭にも書きましたが、月イチくらいで何か書けたらいいな、と思っています。

 全日程を全力で臨んだのに「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」のチケットは1枚も手に入りませんでしたが、おおかたの予想通り配信も発表され、ひとまず安心というところです。
 気づけばいつも過渡期にあるような印象のある乃木坂46ですが、いまのグループの姿をしっかり見届けたいな、と思います。

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