未来2017年6月号 題「階段」ほか
題「階段」ほか
美術科の校舎に入れば踊り場に啓示のごとく薄日はさしぬ
林立せるビルにも非常階段は潜めり塔の遺伝子ならむ
うなだれて亡者の輪舞エッシャーの階段上に五十七年
アカウントひとつ増やしてなお拡ぐ段差みづから転げ落ちたり
恥づかしき記憶のあまた突き落とせど這ひ上がり来て足首つかむ
錆の浮く手摺に指を沿はせたりかの日かの時人と別れき
送られしキウイひと箱わやわやと不揃ひの実に毛羽は擦れあふ
あるんだらうおまへも轢いたことくらゐ 朝のラッシュに無言の軋み
大いなる洞なりし夜は丼持ちて担担麺の汁飲み干せり
今年度のNHK短歌、わが師・黒瀬珂瀾さんが第3週目の選者を担当することになりました。
NHK短歌にはあまり投稿したことがなく、前のnoteに書いた経緯もあり、番組への投稿は控えたい気持ちがありました(「胸キュン」以外はしてもいいのですが)。選をしていただくのではなく、いつかは自分で自分の歌を見極められるようにならなければ、と。(総合誌の投稿欄も昨年でやめています)
でも、出された題についてとことん考えて歌を作ってみたい気持ちもあって、今後1年間、月詠にして送ることにしました。
NHK短歌で「題」というと基本的に詠み込み必須ということのようなのですが、ここではゆるめに「テーマ詠」ということにしています。
しかし、本当に私は1年間これを続けることができるのでしょうか・・・?
↓はTwitterの「#短歌めいきんぐ」でも紹介したメモ。「階段」で「落ちる」とか「突き落とす」とか物騒ですみません。
※ヘッダー写真は大谷石地下採掘場跡にて撮影しました。