新宿高層ビル

未来2017年8月号 街と町

   

   街と町


下谷から釜無村へのみちゆきに談志は三度(みたび)「まつつぐ」と言ふ

眺むるは良し電波塔 在りし日の業平橋の駅舎思ほゆ

落合は川のおちあふところとぞ 男神女神のすがた仄見ゆ

星団と思ふ 淀橋角筈に聳ゆるもののいくつかの青

芝浜はゆかしき名なり新しき駅とし生(あ)るるを夢と思はず

みづからの骸を抱く粗忽者 然てとうきやうはいづくにかあらむ

   二〇××年×月×日 第一回文学フリマ○○
九十センチ幅に二脚のパイプ椅子 となりにきみの鎖骨がうごく


NHK短歌・第3週の題が今回は「地名」だったのですが、まず考えたのが今は住所に使われなくなった地名や駅名でした(番組の中で入選作になった中では玉ノ井の歌が印象に残っています)。

そこで連想したのが地名がたくさん出てくる落語の「黄金餅」だったわけです。私が落語に興味を持ったのは数年前くらいからのことで、立川談志のDVDを借りて観たりしておりました。Youtubeあたりでも観ることができるようですが(改めて観てたら「まっつぐ(=まっすぐ)」は実は4回でした)。そういえば最近、初めて新宿の末廣亭に行って生の落語を楽しんできました。

1首目、選歌後記にコメントをいただいたのですが、私自身が談志師匠(といいますか落語全般に関しても)を詠んだ歌に無知なのでその難しさがどういうものなのかよくわかっていません(巧く詠めたという自覚もない)。

あとは古い地名の呼び名が比較的残る新宿にスポットをあてつつ落語をからめつつという歌になっています。うまく行っているかどうかは微妙です。

芝浜について。山手線の品川と田町の間に新駅建設中(周辺の開発含む)だそうです。この駅の名の候補はいろいろあるようですが「芝浜」になるといいなぁ、と落語ファンは思っているようです。私もその一人です。少なくとも、スカイツリーが出来たからって「業平橋」という由緒ある駅名を変えてしまったような無粋ことはしないでいただきたいものだと切に思います。