未来2017年9月号 昌平黌の跡問へば
昌平黌の跡問へば
そのかみの生徒の書きし学園歌 項羽の絶句が本歌とぞ知る
おぼつかぬ小筆の先にて名を書けばゆの字ゆらゆら琉金となる
四限目のプールのあとの濡れ髪のけだるくとほく音読のこゑ
地理学の教官不在のひと月に「ホロコースト」を見てゐしわれら
みそ汁の煮干しのわたを取るときの無心なつかし調理実習
ツユクサも硫酸銅も美しく青沁みてゆく中二のわれに
教室のひとりひとりの抱へたるサインカーブの重なりがたし
属性のすべてを棄てて直立せよ一人称 beyond the NEW HORIZON
NHK短歌のお題「学校の科目」にて詠める。※タイトルは母校の学園歌の歌詞から取りました。
「未来」の「工房月旦」の欄に、6月号掲載の歌から担当のお二人に1首ずつ引いていただいています。歌評をありがとうございました。
大いなる洞なりし夜は丼持ちて担担麺の汁飲み干せり
あるんだらうおまへも轢いたことくらゐ 朝のラッシュに無言の軋み