未来2017年3月号 あを
あを
浅漬けを三つ頼んだ二次会にからあげ好きなあの子の不在
やきとりが串を抜かれてだれてをり誰がはじめた不作法だらう
安酒にしづめた梅はなじむとふやさしい浸みに侵されてゐる
やくそくの誤断活用やけくそにちぎりては知る夜の深さを
焼き尽くすことは浄化と覚えたりはるか東に震ふ天狼
丑三つの祈祷 トムヤムヌードルの緋色の粉にそそぐ熱湯
乾ききる風からからとわたくしの喉に枯れ葉の吹き溜まりあり
こじらせる予兆は熱き右がはの内耳の奥にうごめく羽蟻
恋だつて悟つた あなたの両肩を包むかたちのすぐにくづれて
地下鉄の駅を抜ければ全天のあを 中枢を再起動せよ
初めて10首掲載されました(意外すぎる)。
なんとなく宙に浮いたかっこうになっていた連作があったのですが、大幅に改稿して未来に投稿することにしました。
ちなみに1首目の「からあげ好きなあの子」にはモデルがいますが連作の内容はほぼフィクションです。
またひとり酔ひつぶれゆく宴席の唐揚げすべてをわがものにせむ/杉本なお