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宇宙が膨張を止めるとき

COBRAの2023年5月21日の記事「Situation Update and Cobra Conference in Japan」で紹介された記事「The universe could stop expanding 'remarkably soon', study suggests」を翻訳しました。

※翻訳がお気に召しましたら、記事下部からサポートをお願い致します。

”私たちは宇宙周期の終わりにあるとの認識も出ています。”

元記事

米国科学アカデミー紀要に掲載された新しい研究によると、宇宙はこれまで約138億年もの間、絶え間なく膨張を続けてきましたが、それをまもなく停止し、その後ゆっくりと収縮を始める可能性があることが分かりました。

3名の科学者が、過去の宇宙膨張の観測結果に基づいて暗黒エネルギーの性質の解明に取り組んだ結果、この謎の力の正体は宇宙定数や、一定方向にのみ進む力ではないことが分かりました。それ自体がダイナミック存在であり、時間とともに減衰する「クインテッセンス」なのです。

研究の始まりは、「宇宙は何十億年も膨張し続けているのだから、いつかその加速も終わるのでは?」という疑問からでした。研究によると、今後一億年以内に宇宙の膨張は完全に止まり、代わりに収縮する時代に入るのだと言います。そうすると、そのまた数十年後には、時空間が消滅するのかもしれません。

しかも、その大変化は意外とはやく起きる可能性があるかもしれません。共同研究者であるニュージャージー州プリンストン大学のプリンストン理論科学センター所長ポール・スタインハルトは、次のように述べました。

「今から6500万年前、地球にチクシュルーブ隕石が落ちてきて、恐竜が絶滅しました。宇宙的に見れば、6500万年などは、“すぐ”ですね」

ブリティッシュ・コロンビア大学の物理学・天文学の教授であるゲイリー・ヒンショウ氏も、この理論は「あり得る」と断定しています。もちろん、過去の観測結果に基づく結果であることから、あくまで「予想」の域を出ない理論であり、宇宙年齢と地球上の我々の寿命の観点からも、検証は不可能です。

目に見えない謎の力

宇宙の膨張が加速しているのが発見されたのは、1990年代以降のことです。銀河間の空洞が、数十億年前よりも速く広がっていることが解ったのです。この膨張の力の源を、正体がわからないので
「闇(未知の)エネルギー」と名づけました。

暗黒エネルギーは、重力に逆らいます。そして、巨大天体同士が引き合わないように、遠くへ押しやっています。

宇宙のエネルギーの約70%が、この暗黒エネルギーであると言われています。その正体は未だに解っていません。アインシュタインはこれを、宇宙定数としました。つまり、時空間にすでに備わっている不変の力、宇宙の「仕様」であるとしたのです。しかし、これが永劫不変だとすれば、宇宙は永遠に加速しながら膨張するはずです。

ここで、観測結果と矛盾しないで、暗黒エネルギー一定説と融和する説が出てきました。それが、暗黒エネルギーがクインテッセンスであり、時間とともに変化する力学的な「場」であるという説です。

それなら運動エネルギーや位置エネルギーに左右され、斥力にも引力にもなり得るということです。過去140億年の間、クインテッセンスは斥力的であったとしましょう。しかしなぜか、物質やエネルギーと比べ、膨張にほとんど寄与していなかったように見えます。それがどういうわけか、約50億年前にクインテッセンスは宇宙膨張力の主役に躍り出たのです。問題は、加速が永遠に続かないのだとしたら、いつどのように変化し、結果として宇宙はどうなっていくのか?という点です。

暗黒エネルギーが終わるとき

スタインハルト氏らは、今後数十年間にクインテッセンスがどう変化するかを予測しました。時間とともに斥力と引力の切り替えが、どのように起きるのかを解明しようとしたのです。宇宙の膨張の歴史を再現できるようになれば、未来を予測できると考えたのです。

その結果、暗黒エネルギーは時間の経過とともに、弱まっていく可能性が示唆されたのです。もし切り替えが始まれば、反重力のエネルギーが宇宙から消えて、物質はもっと「普通」の状態に戻るのだと言います。

研究チームの推論では、暗黒エネルギーは数十年前から急激な減少を始めているそうです。

つまり、加速度的に膨張していると思ったら、すでに減速が始まっていたということです。想定されているのは、今後6500万年以内に、加速は完全に止ま理、その後1億年以内に暗黒エネルギーは引力に転化して、宇宙が収縮を始めるかもしれないのです。140億年かけて膨らんだ宇宙が、もうすぐ縮小するかもしれません。

スタインハルト氏はこの収縮を、「非常にゆっくりと空間は縮小していく」としています。

人類ははじめ、その変化に気づかないでしょう。何しろ、宇宙が現在の半分の大きさに戻るまでに、また数十億年という長い時間が必要になるからです。

その後、二つのシナリオが考えられます。
宇宙が完全に閉じて「ビッグクランチ」を迎えるか。
途中で再びビッグバンが起きて、旧宇宙の灰の中から新宇宙が蘇るか。

後者の場合、宇宙はこれまでも、そしてこれからもずっと、膨張と収縮の循環をたどり、崩壊しては再生していくということになります。つまり宇宙には始まりも終わりもなく、前回も前々回も、宇宙はずっとここにあって、今の我々はその最新版に生きているというだけなのかもしれません。それも、暗黒エネルギーの気分次第なのです。

もちろん、確証はないということは付け加えておきましょう。暗黒エネルギーの正体を過去のデータから合理的に説明している優れた仮説ではあるものの、やはり未来についてまでは知ることはできないのです。やっぱり宇宙は崩壊していくために加速している可能性は、まだ十分に残っています。それに、仮に収縮が始まっていても、それを知る術が今の我々にはありません。

今のところの焦点となっているのは、この新理論に過去の観測結果がどれだけ当てはまるかということです。その点、確かにこの論文は見事なまでに成功を収めていると言えます。宇宙が今後も膨張し続けるのか、それとも加速は無くなるのか、いつかわかる日が来るのだろうか。


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